第3話 少女

御見内、エレナvsイカれた男2人組



ウィィィィィ



血が固まりこびりつく刈刃のブレードとチェーンソーの様に回るヘッジトリマーの刃



「ひぃ」



エレナの後ろからそれを目にした少女の小さき悲鳴があげられる。



御見内「止まれ 射殺されたくないだろ」



人である以上無用な殺生は避けたい…



だが… 言う事を聞かず、ゆっくり歩を進めて来る2人組に御見内とエレナもゆっくり後退しながら説得を続けた。



ウィィィィィ ウィィィィィ



御見内「エレナ 避けられそうもない そのままその子を連れて車まで逃げろ」



エレナ「道はどうする気よ? 2対1は無理よ」



御見内「いいから早く行け 車に戻るんだ こいつらは俺が何とかする」



少女を目にしたエレナ



エレナ「……分かった すぐ戻ってよ」



御見内「あぁ」



ハンドガンが仕舞われ、少女の手を握ったエレナ



エレナ「さぁ 一緒に行きましょう」



そして少女の手を引き、ゆっくり後退りで姿を消した途端



それを見るなり2人の男が武器を振り上げ襲いかかってきた。



直後



パァン パン



御見内から2発発砲



1発は手の甲を撃ち抜き、ヘッジトリマーが手からこぼれた。



またもう1発はもう1人の男の肩を直撃、貫通させた。



男はよろめき草刈り機のハンドルから手を離すや、ブレードの回転が落ち、惰性で回り続ける



そんな双方よろけた その隙に…



パァン パン



もう2発が発射



今度は2人組の太股に弾丸が撃ち込まれた。



2人組は不気味な笑い声を止め、数歩退きながらぐらつく



弓からハンドガンへと武器を変えた御見内



エレナから射撃のいろはを学び、手ほどきを受け、短期間でみるみると腕を上げた。



そんな御見内の射撃を受けた2人組は上体をうつむかせ、怯んだ



その隙に…



2人組が顔を上げた時



御見内は既にその場から逃走を図っていた。



車へとダッシュ



ドアの開けっぱなしな運転席へと飛び乗り、2本のバールを助手席に放るや、開けっぱなしなまま車を走らせた。



2人組の男達が足を引きずらせながら路地から現れるが



走り去るバンを見送るかたちとなった。



バックミラーに映る道路に飛び出す謎の2人組をチラ見した御見内



エレナも車内からその2人組に視線を向けた。



エレナ「何なのあいつら つーか何で素っ裸なのよ」



エレナの隣りでは伝わってくる程にブルブルと身体が震え、脅える少女



エレナ「もう大丈夫よ 安心して」



エレナは震える肩に腕を回し、少女の髪をそっと撫でた。



御見内はバックミラー越しから今度はその少女へと目を向けた。



あいつ等なんだ…



この町… 何かある…



訪ねたい事 聞きたい事は山ほどある…が…



今は聞ける状態でもなさそうだ…



それはエレナも同感なのだろう



エレナは無言のまま出会ったばかりのまだ名も知らぬ少女を抱き寄せ、震える腕をさすっていた。



そんな光景をバックミラー越しで2人は目を合わせ



エレナがコクりと頷いた。



とりあえずどこでもいい



安全な場所を求め、車を走らせていると



前方に名産品直売所と書かれた立て看板を目にした。



そして小さな直売所の建物が見えて来た。



御見内「エレナ どう思う?」



エレナ「どこでもいいよ 安全なら」



御見内「分かった 一旦ここで車を止める 俺が中を確認してくる」



そして2人はすぐさま周囲を確認した。



見た所奴等はいない



周囲の安全が確認されるやバンが直売所の敷地内へと進入、正面玄関付近に車が停められた。



御見内「ちょっと待ってろ 中の様子を調べてくるから」



エレナ「はい 気をつけてね」



バールを手に急ぎ足で建物内へと入って行く御見内



車内には残された2人



少女はまだ震えがおさまっていなかった…



よっぽど怖い目にあってるのか…



さっきのあいつらを恐れているのか…



まぁ あんな武器を手にした大人に追い掛け回されればそれも無理ないか…



それよりさっきのあいつらって…



何者なの…



今 私達が聞きたい事全ては…



この子が知っている…



御見内と同じ思いを抱くエレナが震える少女を優しくさすりながら見詰めているや



窓がコンコンとノックされた。



御見内からオーケーサインが出た。



エレナ「ねえ ここは安全みたいなの 少しここで休みましょ 立てる?」



少女はエレナを見上げ、頷くと一緒に建物の中に入って行った。



3人が建物の中に入るや名産物と書かれた札やダンボールに書かれた値札が散乱、リンゴや長芋の絵が描かれた看板なども倒され室内はゴチャゴチャに荒らされていた。



またとうに腐ったりんごなどの果物や生物も散乱、腐敗臭がいまだ残る室内を少女の手を引きながら見渡すエレナ



そんな物がゴチャゴチャと散らばる販売所を見渡しながら3人は正面の階段へと向かった。



先導するクリスが小走りで階段を駆け上がって行く



2階に上がると このフロアーはお食事処やら郷土料理などと書かれた旗が置かれ、おすすめ料理の食品サンプルが透明なゲージに展示されていた。



2階はどうやら観光の団体さんなどが食事を行えるスペースの様だ



2階は1階と比べ、荒らされた形跡が少ない



椅子やテーブルなども整頓されており、無人と化してから変わらずキレイな状態を保っていた。



3人はこのフロアーの奥、窓際にある座敷タイプのスペースへと足を運ばせ、そこに少女を座らせた。



エレナ「さぁ 座って 道 何か飲み物とかないかな?」



御見内「どうだろう ちょっと探して来る」



そう告げ、パントリーへと向かった。



クリスがエレナと少女の前に座り、少女はクリスを見るなり頭を撫ではじめた。



エレナ「フフ そう 触ってあげて この子の名前はクリスってのよ」



「クリス…」



少女はボソッと名を呼び、少しだが笑顔をこぼした。



さっきよりは全然落ち着いたようだけどまだ少し震えてる…



少女を心配そうに見詰めるエレナは手の甲をさすり続けた。



御見内「これでいいかな? ギリ賞味期限セーフなのがあった」



グラスと瓶に入ったりんごジュースを手に戻って来た御見内がグラスに注ぎ、それをエレナに手渡した。



エレナ「はい じゃあこれでも飲んで気分を落ち着かせて」



少女は喉が渇いていたのか?一気にそれを飲み干した。



エレナ「フフフ 喉渇いてたんだね もう一杯?」



頷く少女



御見内は直でグラスへと注いだ



御見内「冷たくて美味しいだろ はい どうぞ」



また床に皿が置かれりんごジュースが注がれるとクリスもそれを飲み始めた。



グビグビと一気飲みした少女はプハーと一息つかせる。



御見内「ふっ じゃあ後はおかわりはご自由にどうぞ」



りんごジュースがテーブルに置かれた。



ようやく緊張の顔が和らぎ、震えもおさまった様子の少女



御見内はその辺の椅子を取り出し、座席前で椅子へと腰掛けた。



2人は笑み浮かべ、やっと元気を取り戻しただろう少女に視線を向けた。



エレナ「ねえ 聞いてもいいかしら?」



「はい」



エレナ「お名前は?」



「早織(さおり)です 真鍋早織です」



エレナ「そう 早織ちゃんって言うんだ 宜しくね」

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