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「……めでたし、めでたし。じゃあ、次のお話をしてあげるね。次は……」
南美は、ふと視線を上げ、少し前の方を見た。
「あ!」
気づけば、南美たちの目の前には砂漠が広がっていた。
地平線までひっそりと続く砂漠。満月の光を受け、冷たく輝く砂漠。南美は、しばらく見とれていた。
「これが、砂漠。南美ちゃんがお話をしてくれた、砂漠なんだね」
ラクダが言った。ライオンは、
「やっと、来れた。僕たちの憧れの場所。ずっと来てみたかったんだ、君のお話を聞いてから……」
と言った。
「そう、これが砂漠……! 私も、本の写真でしか見たことがなかったけど、やっぱり広いね」
南美も、初めて見る景色に心を奪われている。
「さあ、降りよう。君がお話をしてくれた、あの砂漠に!」
南美を乗せたライオンは地上へ向かい始めた。
「待って!」
突然、南美が叫んだ。
「降りる……の……? ほんとに、降りるの……?」
南美の声は、だんだん小さくなっていった。
「もちろん、降りるに決まっているじゃないか。だって、この下には南美ちゃんがお話してくれた砂漠があるんだよ?」
ライオンが言った。
「どうしたの? ここまで来て。この下には、砂の上を走る船や、砂でできた花が咲く丘があるのに」
ラクダも続けた。
「……そんなもの、無いよ」
南美が、言った。
「砂の上を走る船なんて、無い。砂でできたお花なんて無い! あれもこれも、全部嘘! 今までのお話も、全部、ぜーんぶ嘘! 私は、私は……、嘘、つき、なのよ……」
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