九話『巨乳美少女ハイエロフ(推定700歳)』

 ソフィーが落ち着いた後、リア達と馬車に戻り、獣人達の居た村へと向かうことになった。

 なんでも、お礼をしたいのだとか。


 ちなみに、爆弾発言をしたソフィーは……


「ソフィー、何歳?」


「確かー、700歳くらいだったようなぁ〜?」


「あんまり、気にされないんですか……?」


「200を超えたあたりからぁ、どうでもよくなってくるのですよぉ〜」


 ……何故か、僕達と同じ馬車に乗っている。

 推定年齢700歳の、ハイエルフらしいです。


 里唯一のハイエルフで、普通のエルフを装って暮らしていたんだってさ。


「で、着いてきた理由って?」


「マスターに恩返しさせてもらうのですよぉ〜」


「……いや、里に帰らないとあれじゃない?」


「あんな連中滅べばいいのですよッ――ではなくてですね〜、マスターが死ぬまで傍に居るだけですしぃ、大丈夫だと思いませんかぁ〜?」


 最初のは本気で言ってた。間違いない。目がヤバかったし、リアがビクッとするくらい殺気を放ってた。


 なんでこんな反応をするのかと言うと、


 1、女性エルフ達がソフィーの美貌に嫉妬。

 2、殺人が起こって、女性エルフによりソフィーが犯人である証拠を偽造される。

 3、里全体が敵になって信じてくれない。

 4、罰として一生男になる呪いをかけられた。


 ソフィーが必死に訴えたにも関わらず、誰も信じてくれなかったらしい。女性が、ソフィー以外バレない程度に洗脳してたんだって。


 全身綺麗に(リアとシルクが)したんだけど、確かに嫉妬されるのも分かる。手入れされていなかったにも関わらず、薄ら黄緑のような金髪はサラサラ。


 顔はリアやシルクに負けず劣らずの美少女。


 肌は白くて、一切日焼けしていない。


 トドメに、男を魅了する体つき。


「歳は気にしませんけどぉ、じーっと見られるのは恥ずかしいのですよぉ〜?」


「あ、ごめん、そうだよね……」


「いえいえ〜、エッチなのがお望みでしたらぁ、もう少し仲良くなってからお願いするのですよぉ〜」


「いやいや、違うから!」


「冗談なのですよー? ……一厘だけはぁ〜」


 聞こえない。九割九分九厘本気だったとか、聞こえてないし。大きい胸もいいと思うけど、リアは親の仇みたいに睨むのやめたげて。


「というわけで〜、はい! なのですよー」


「首輪がどうかした――って、それ!?」


「問題ないのですよぉ? どちらかが死んだらぁ、勝手に外れるのでぇ〜」


 いつの間にか、愛妻奴隷になってたらしい。

 というか、どの辺が問題ないんだろう。


「いやいや、命令に逆らえないんだよ? 乱暴されたり、下手したら殺されるかもしれないって分かってる?」


「普通はそうなのですよぅ……」


 リア、シルク、僕、の順に見て、ふわふわ〜っと笑みを浮かべる。


「でも〜、こんなに幸せそうなのに乱暴されてるなんてぇ、どう考えてもありえないのですよぉ〜」


 普通の永久奴隷でいいはず、とか言っちゃいけない。ハイエルフなりの考え方があるのだ、きっと。


 嫁が増えていくとか王道……いや、必要ないのに奴隷になるような王道はないと思う。

 というか、ハイエルフを奴隷にしていいの?


「後先考えず助けた僕が悪いか……」


「そ、そんなに嫌でしたかぁ〜……?」


「そんなこと――」


「いえ、時雨さま嬉しそうですよ?」


「ちょっ……」


 ここは、「そんなことないよ」で誤魔化すつもりだったのに、リアがバラしに行くとは。


「……おっと。ソフィー、大丈夫?」


 立ち上がろうとしたソフィーが倒れた。僕が支えてるけど、全然動けないみたい。

 とりあえず、また椅子に座らせる。


「力が入らないのですよぉ……お腹空いてるので〜、そのせいだとは思うのですけどぉ……」


「あー、男にされてたし、奴隷だったからまともな食事が貰えなかったのかぁ……村まではまだかかるみたいだし、これでも食べる?」


 僕の『無限収納』から取り出したそれは、お昼に作った炒飯。シルクがまた食べたいと言うので、大量に予備を作って置いたのだ。


「美味しそうなのですけどぉ……スプーンを持つ力すら残っていないようなのですよぉ……出来れば〜食べさせていただけるとー……」


「えっと、僕が……?」


「はいなのですよー……もしくは〜……」


「若しくは?」


 ん? どうしてそこで赤くなるのかな……嫌な予感しかしないんだけど?


 その予感が見事に的中し、


「口移しなんていいと思うのですけどぉ〜」


「あーんッッ!」


 一片の躊躇もなく、スプーンを突き出した。

 それをゆっくりと噛み、もぐもぐ。


「……美味しいの、ですよぉ…………ひっぐ……」


「泣くほど!?」


「美味しいのと……凄くほっとしてぇ……」


「ですよねっ! わたしもそう思います」


「ご主人様は料理スキル無いのにね」


 そこまで凄い物じゃないと思うんだけど……もしそうなんだとしたら、料理を教えてくれた鈴香さんに感謝しないと。


「マスター、食べさせて欲しいのですよぉ」


「……おば――病人みたい」


 ついおばあちゃんとか言いそうになったけど、地雷臭がするからやめておいた。

 それにしても、エルフ耳がピクピクするのを見てしまう。リアの耳は尖ってるけど、長くもなければ動きもしない。


「ん〜? 耳が気になるのでしたらぁ、やさーしく触ってもらえると嬉しいのですよぉ〜?」


「いいの? ……じゃあ、遠慮なく」


 優しく触るという意味では遠慮するけど、触りたいのは隠さない。そーっと、感触を確かめる程度に触る。


「……ん……あぁ……はぅ――」


 はいストップ。


「……エルフの耳について詳しく聞こうか」


「な、なんでもないのですよぉ〜……」


「……そっかー」


「そ、そう……なのですよぉ〜?」


 なんでもないのかぁ……


「――なら、強くしても平気だよね?」


「はいなので――え!? だ、だめ、だめなのですよぉ! あっ、あぁっ……! そんな……ぁ……まってぇ、へんにっ、なっちゃうのですよぉ……」


 二分ほど楽しんでから、エルフ耳を弄り回していた手を止める。


「正直に言う?」


「その〜、私の方が歳上なのですけどぉ……」


「ん? なに? 続けて欲しいって?」


「ち、ちがうのですよぅ――あっ、あぁぁぁ♡」


「……なんか嬉しそう」


「ああなるのは分かっていたはずですけど……」


 そう、こうなるのは分かっていたはず。それと、抵抗されればすぐやめるつもりだったのに、抵抗されないからやめ時を失った。


「早く話してくれればやめるけど?」


「……は、話すのですよぉ……ひゃぁ……」


「まあ、ふざけるのはこの辺にしてっと……」


「……ぁ」


「続けた方が良かった?」


「……そんなことぉ……ないのですよぅ……」


 と言いつつ僕の手は離さない。


 ……なるほど、これがエロフか。


 エルフ耳が弱いのはなんとなく予想してたけど、そんなに? 風が当たるだけでもヤバそうなんだけど。


「耳を触られるのは〜……胸を直に触られるくらい〜恥ずかしいことなのですよぉ……」


「……それで?」


「……絶対服従を誓ってる相手に触られるとぉ〜気持ちよくなっちゃったり〜?」


「ずっとセクハラしてたってこと!? いや、同意を得てるからいいのかな……?」


「絶対服従なのでぇ問題ないのですよぉ♪」


 最後のが冗談なのは分かってるけど、真に受けたらどうする気なんだろうか。絶対服従っていうのも、首輪の方なのか、精神的なものなのか……これは聞かない方向で。


「えっと……リアが聞きたいことなんだけどさ、ハイエルフってどのくらい生き残ってる?」


 話をぶった切って、さっきからリアが気になっていたことを聞いた。実際、この世界に来てからハイエルフどころか、エルフすら偶に見かける程度。


「それはぁ〜ちょっと分からないのですよぅ……ハイエルフって引きこもりばっかりですしぃ、私も似たようなものですからぁ〜」


「あー、外に出てこないし、外の事がそもそも分からないってこと?」


「500年くらい前ならぁ分かるのですけどぉ〜……」


 ふわふわ系お姉さんの見た目なのに、自然な感じで500年前の事を語る。違和感だらけだ。


「……見た目じゃ全然分からないけど、ソフィーって僕よりずっと歳上なんだよね」


「はい〜、マスターの知らないことー、いっぱい知ってるのですよ〜。……あ、でもぉ、エッチなことは知識だけなのでー安心して欲しいのですよ〜?」


「ねぇ、それどう返して欲しいの? ……というか、もう元気になってない? ちょっと早すぎる気がするんだけど」


「ハイエルフはぁ半分くらい精霊なのでぇ、消化して吸収するのが早いのですよぉ〜。……ついでに言うならぁ、無駄なくエネルギーに変換するのですよぉ〜?」


「無駄なくって……全部?」


「はいなのですよー」


 衝撃の事実、ハイエルフはトイレ行かなくていいらしい。凄いね、最強だね。


「水分はぁその限りじゃないのですけどぉ……」


 あ、トイレは行くらしい。でもさ、下剤とか効かないし、いくらでも食べられるんだよね?


「そういえばぁ……」


 と言って、僕とリアを交互に見るソフィー。


「? わたしと時雨さまがどうかしましたか?」


「マスターからぁ精霊王みたいな気配がするのとぉー、リアちゃんにも似たような感じがしてるのですよぉ〜」


「……似たような感じなのは理由な分かるんだけど、精霊王みたいな気配って?」


「正確に言うならぁ、精霊王級が沢山集まったみたいなぁ……凄いことになってるのですよねぇ……」


 うーん、勇者の刻印が全身に広がってるのと関係あるかも。 聞いてみたい気もするけど、話して大丈夫かな?

 いや、自分から奴隷になるくらいだし、その辺は問題ないよね。最悪、命令すれば何とかなる。


 隠すようにしている勇者の刻印を、見えるようにする。

 ……なんか、前よりびっしり張り巡らされてるような?


「僕は勇者で、『魂の譲渡』っていう文字通りの効果があるスキルを使ったんだ。で、その後からこんな感じなんだけど……何か分かる?」


 そう言ってシャツを捲ると、


「……触ってみても〜いいですかぁ?」


「うん、いいよ」


 触ることで何か分かるのだろうと触らせるが――しかし、その手は腹筋や胸板を撫で、整った顔は緩み、何かを考えているようには見えない。


「あのさ……なんで触ってるのか聞いていい?」


「触りたかっただけなのですよ〜?」


「あ、そう……」


「呆れた顔しないで欲しいのですよぉ……ちゃんと、確かめたりもしたのですからぁ〜」


 でも、触りたかったっていうのが一番なんだろうな。……駄目とは言わないけども。


「……マスターの体はぁ、無数の微精霊を取り込んでいるのですよぉ〜。それもぉ、体の9割は精霊になっていると思うのですよねぇ〜♪」


「随分嬉しそうだね?」


「いえー、私の旦那様が〜すごーく素敵な方だぁって分かっただけなのですよー♪」


「あ、ありがとう……」


 ソフィーに離れてもらい、刻印を再度消す。

 あんまりくっつかれていると、何も言わずにこっちを見ている二人が怖い。


「そういえば、リアを見ていたのはなんで?」


「リアちゃんも〜半分くらい精霊なのですよぉ?」


「ふぇ!?」


「シルクだけ仲間はずれ……?」


「いや、シルクも勇者だから似たようなものだと思うけど……」


 リアとは魂で繋がってるからかな……

 つまり、全員が精霊要素ありという事に。


「とんとん拍子に仲間が増えていくよね」


「時雨さまがお一人だった方がおかしいんです」


 そう言われてみれば、勇者なのに一人で旅をしてたのはおかしい……え? そういう事じゃない?

 ……まあ、いいんじゃないかな。




 村に着いた後は、皆でまったりと過ごした。

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