番外編その一『復讐を誓う時雨、その先にあったのは……?』

 ――初めて会った時の印象は、苦労もせずに育っていそう、なんて、見当違いのものでした。





 わたしが、街ゆく人に、魔王の娘であることを隠したまま、助けを求めていた時。


「だれか、お父さんをたすけてください!」


 何度も断られて、心が折れかけていたんです。

 きっと、この人はダメだろうな――って、あまり期待していなかったんですよ?


 でも、


「――泣いてる女の子なんて、ほっとけないよなぁ」


 そんな言葉と共に、頭を撫でられて。

 身長を見て子供扱いされていた事も分かってたんですけど、『魔王の娘』じゃなくて、『ただの女の子』として優しくされたことがうれしかったんです。


 魔族は身内に優しいですけど、他人には驚く程冷たい人が多いので、こんな人は珍しいなって。


 道中も、わたしを守ってくれました。見た目とは裏腹に、魔物を全て一撃で倒して……お父さんよりも強いかもしれないです。


 お父さんの所に着いたら、「え? ここなの?」って、なんだか汗をかいているその人。


 お父さんと会ったら、その人は勇者で、本当はお父さんを倒すはずだった、なんて話を聞かされて。


 それでも、必死にしがみついて、たすけてくださいってお願いしたんです。


 元々、お父さんが悪い人だなんて思っていなかったらしく、助けてくれることになりました。


 けど、命を賭けるなんて……


 お父さんに理由を聞かれた勇者の人は――


「……この子が僕の好みだったから。あんたの娘めっちゃ可愛いぞちくしょう!」


 ストレートな言葉にどう反応すればいいか分からず、その人の体に顔を押し付けて、終わるのを待つつもりだったんです。


「あ――」


 でも、プツンと意識が途切れてしまって。



 暗い、とっても暗くて、でも温かい場所へ――








「おとうさん、おかあさん! 大好き!」


 ここは、『水崎 時雨』さんの記憶? ふしぎな感覚ですけど、なんとなくわかりました。


 時雨さんは、わたしとは違う世界で、平和に暮らす一般人のようでした。何不自由無く、親とも暮らせる。


 時雨さんが可愛いな……と思いつつ、記憶を遡っていきます。こんな平和なところにお父さんと行ってみたいです。


 なんてうらやましいんでしょうか……





 ……なんて思えたのは、その時まで。


 季節は春。特に何もおかしくない、旅行から帰って来たみなさんが家に入っただけ。そして、四歳くらいの時雨さんが靴を脱ぎ終わった直後。


 ――え? 血……? この男の人は一体……? 時雨さんのお父さんが、刺されて……?


 時雨さんの記憶をずっと見ていたのもあり、わたしはその光景に呆然としてしまいます。平和な世界だったんじゃないんですか……?


 お母さんは、時雨さんを逃がすために犠牲になって、時雨さん自身も追いつかれて。


 ――いや、来ないでください! 時雨さん! あ、ああ……腕を折られて……そんな……誰か……!


 記憶だけとはいえ、産まれた頃から知っている時雨さんが、そんな目に遭っているのを直視したくありませんでした。

 でも、この記憶は時雨さんのものだから、目を瞑る事も出来ないんです。


 夜ではありましたが、外でそんなことをすれば人も集まりますし、なんとか時雨さん『だけ』は助かりました。


 でも、両親を目の前で殺した犯人は、そのまま捕まることなく逃げてしまったのです。


 時雨さんが絶望するのも当然ですよね……



「……どうして、ぼくもおとうさんも、おかあさんも、わるいことなんてしてないのに……」


 ポタリ、ポタリと病院のベッドが濡れる。

 両腕の骨を折られたせいで、涙を拭う事すら出来ないようです。わたしが抱きしめてあげられたら……


「わるいのは、だれ?」


 最初はただ、そう思っただけ。


「――あのおじさん」


 でも、明確な『敵』を理解したその時から、時雨さんは復讐心に囚われていく。


「ぼくのかぞくをうばった」


 ――やめてください……


「………そうだ、『俺』の、大事な家族を奪ったんだ」


 子供らしくない口調でそう言いました。時雨さんは親のために子供らしく振舞っていたのですが、中身はすごく成長していたんです。


「許さない……俺がこの手で、絶対に殺してやる……」


 本当なら、時雨さんは何も出来ずに腐っていたはずです。ですが、それを助ける人がいました。


 復讐心に囚われているという事に気づき、時雨さんを引き取った、お父さんのお兄さん。


「――時雨、そのためには、地獄のような訓練が必要だ。お前の両親はそんな事を望んではいないだろう。それでも、殺したいのか?」


「父さんも、母さんも、俺にそんな事を望んでいないのは分かってる。だけど、俺があいつを許せないんだ。殺さないと、前に進めない」


 新しいお父さんは、そんな時雨さんに悲しそうな顔をしましたが、その日から毎日、稽古をつけ始めます。


 かなり特殊なお家だったようで、他にも大勢の門下生達がいるようです。時雨さんのように鬼気迫る様子の人はいませんが……


 やがて、刀という武器の扱いだけでなく、暗殺のようなことまで教えられていきました。それは、時雨さんが確実に殺すためであり、時雨さんに死んで欲しくないという、新しいお父さんの優しさです。


 傷付き、痛みに涙し、それでも憎しみで動き続ける。


 ――時雨さんがそんなことをする必要なんてないんです……もっと笑って欲しいのに。




 ……時は過ぎ、中学一年生の春。


 一人称が『俺』から『僕』へと戻りましたね。お父さんが言うには、必要な時以外、人畜無害な人間でいる必要があるそうです。

 警戒させては、体格的に時雨さんが不利だからでしょう。


「……次の場所は分かってるんだ、終わりにしてやる」


 狙う基準に予想をたて、数回確認したところ、それが的中していました。時雨さんは、やはり頭がいいようです。天才と言える程に。


 下校途中――隣には、次に狙われる家の女の子(先輩)。前から知り合いでよかったです……と言っていいんでしょうか……?


 家に着いてからは、二人で楽しそうに話しています。


「……ふふ、君から遊びに来たいと言ってくれるなんてね。何度も誘っては、断られていた気がするんだけど」


「あはは……まあ、菜津なつ先輩の両親にも会ってみたかったですし。うん、あの美男美女から産まれたって聞くと、納得できますね」


「っ……そ、そうかな……?」


 狙われるタイミングが分かっているなら、殺すことも難しくはありません。むしろ、時雨さんにとっては簡単なくらいでしょう。


 ――この女の子は、時雨さんが好きなんでしょうか……? 距離が近い気がします……あれ? わたし、どうして嫉妬してるんでしょうか?


 そんな事を考えているうちに、その時はやってきました。


 扉が開く音と共に、あの男が入って来ます。


 前は帰ってきた時、既に入られていましたが、備えていた時雨さんは、「僕達は待ってます」と言って、女の子の親にだけ買い物に行かせたのです。


 どうして女の子だけ残したのか?


 それは、すぐに分かります。


「く、来るなぁ!」


 そんな声を上げたのは、女の子ではなく、時雨さん。……そして、その前に立つ女の子。


「……そんな大きいナイフを取り出して、何のつもりかな? ……時雨君、私の後ろに下がっているんだ」


 この女の子、可愛い上に強いんです。とは言っても、時雨さんほどじゃありません。


 秀才であって天才ではないので、大会で優勝するような強さはありません。普通の日本人と比較した時の話です。



 男がニヤついた顔をして、無言のまま走ってきました。それに対して、女の子は構えをとりますが、震えています。


 中々の速さでパンチを繰り出すも、腕を掴まれピンチ。すぐに負けたのは仕方ありません。動けた事を褒めるべきですよね。


 それに、時雨さんが居ますから。


「――俺は、この時を待っていた」


 完全な死角から、意識を刈りとる一撃。これをするために、女の子だけ行かせませんでした。そして、鞄から縄を取り出し、男を素早く縛ります。



「おい、起きろよ」


 ガッ!


 時雨さんが男の腹部を蹴ると、うめき声と共に起きました。


「お、お前は、いったい……」


「九年前、お前に殺されかけた子供だ。父さんと母さんを殺しておいて、忘れたとは言わせないからな」


「……え? ……時雨、君……?」


 女の子は時雨さんの豹変ぶりに困惑していますが、それよりも、親が殺されていたという事実に驚いているようです。


「……あ、あぁ! あの時いい声で鳴いてた――」


「覚えているなら、後はどうでもいい。俺の目的は復讐だけ」


「……へっ、殺すなら早く殺したらどうだ……?」


「ああ、勿論。……その前に、痛みを味わって貰うがな!」


 まず、指の骨を一本一本折っていきました。痛みに耐性がないようで、みっともない悲鳴を上げ続けています。


「お前みたいなクズのせいでっ! どうして、父さんや母さんが死ななきゃいけないッ!? お前の勝手な都合で! ふざけんな、クソッタレが!」


 腕があらぬ方向に曲がり、一際大きい悲鳴を上げましたが、時雨さんはやめません。

 足も折り、踏みつけながら、男が持っていたナイフで滅多刺しにしていきます。


 ――見ているのは辛いですけど、時雨さんにとって大事な瞬間なんですよね? 前に進むための……


「……どうしてっ……俺だけが生きてっ――」


「時雨君、もう、やめるんだ……」


 泣きながら刺し続ける時雨さんを、そっと抱きしめる女の子――菜津さん。


 殺すのを止めたのではなく、男は既に死んでいて、これ以上辛そうな時雨さんが見たくなかったから、止めてくれたんです。


「……菜津、先輩……」


「助けてくれてありがとう、時雨君。……どうして逃げるんだい? 言っておくけど、私は君が怖くないよ」


「……どうして、ですか?」


「君がどんな人間かは知ってるつもりだし、闇を抱えていることくらい気づいていたさ。……まあ、ここまでとは思っていなかったけど……それでも、私の両親を逃がしてくれたようだし」


 そんな菜津さんの言葉に、ほっとする時雨さん。憧れの先輩で、嫌われたくはなかったようです。

 菜津さん、すごくいい人なんです。


「……菜津先輩には敵いませんね……でも、こんなもの見たら、普通は軽く吐くと思うんですけど」


「君を傷付けた輩がどうなろうと、知ったことじゃないね。……でも、少し気持ち悪いかもしれないから、膝を貸して欲しいな」


「別に、それくらいなら……」


 ――うらやましいです、ずるいです、敵ですっ!


 すごくいい人と言ったのは撤回せざるを得ません。時雨さんの膝枕は羨ましすぎます。


 復讐のことばかり考えていた時雨さんですけど、やさしいところはそのままでしたから。ずっと見ていたのに、好きにならないはずがありません。


 しばらくしてから血を洗い流し、菜津さんの両親が帰ってくると、事情を説明します。


 ……え? 菜津さんのお父さんは、けいさつのえらい方なんですか? 時雨さんの学校生活に影響が出ないよう、手回しをする?


「……そんな事していいんですか?」


「娘だけでなく、俺達も助けられたんだ。このくらいしても、まだ気が済まないくらいだぞ?」


「普通は、その、人殺しを娘から遠ざけたいと思うんじゃ……」


「私達の娘は、人を見る目があるの。それに、いつも時雨君の話を聞かされて――」


「ストップ!」


 そうですか、やっぱり時雨さんが好きなんですね。今は、付き合ったりしてるんでしょうか?


 みなさん、時雨さんのためにわざわざ明るく話そうとしてます。……菜津さんは本気で焦っていますけど。


 わたしは、人が死んでいるのに、あまり気分が悪くなりません。記憶だから現実味がないんでしょうか? わたしが知らない世界だからかもしれませんね。



 あ、時雨さんが帰るみたいです。気分は最悪で、だけど、ようやく他のことも考えられるようになりました。

 ……本当は、けいさつに捕まって終わりにするつもりだったそうなので、菜津さんのお父さんには感謝しないとです。


 家の前に、重光しげみつさん(お父さん)がいました。


「……ただいま、父さん」


「……終わったようだな。おかえり、時雨」


 時雨さんはずっと重光さんと呼んでいたので、これでちゃんとした親子になったということでしょう。


 お父さんは用事があるそうなので、時雨さんだけ家に入ると、さっそく出迎えてくれる人がいました。


「――しーぐーれーっ!」


 この声は……従姉の鈴香れいかさん。こうこうの新任教師で、この時は19歳。長い髪を後ろで一本に縛り、うすーくお化粧をしているだけの美人さんです。


 時雨さんを見るなり、抱きついて来ました。


「おかえりっ!」


「鈴香さん、恥ずかしいって」


 そうです、時雨さんを離してください!


「……なんでお姉ちゃんって呼んでくれないの? もう家族なんだから、呼んでくれたっていいじゃない」


「無理。今更変えられないし」


「ケチ」


「ケチで結構」


「コケコッコー!」


「はいはい」


「だからぁ、もっとお姉ちゃんを構いなさい!」


 鈴香さんを振りほどいて部屋に向かおうとした時雨さんでしたが、今度は背後から奇襲を受けます。


 鈴香さんの様子は、先程とは違いますけど。


「……心配したのよ? 時雨に何かあったらって………怪我してないわよね? もう復讐なんてしなくて大丈夫なのよね……?」


 時雨さんが、全て終わったこと、菜津さんのお父さんのおかげで特に問題も無い事を説明すると、鈴香さんの泣いている声が聞こえてきました。


「れ、鈴香さん? どうしたの……?」


「……だって……私……時雨が辛い時に、何もしてあげられなくて……お姉ちゃんなんて言ってるのに……ごめんね……?」


 鈴香さんは、いつも尊敬出来る方で、時雨さんと話す時はすごく明るい方だと思っていました。


 ですが、わたしはようやく気づいたんです。……いえ、時雨さんも同じだったのでしょう。


 いつも時雨さんにちょっかいを出していたのは、もっと笑って欲しい、時雨さんの心がすり減ってしまわないようにって事だったんです。


 普段とは違う鈴香さんの様子に、時雨さんは回されている手を解き、改めて正面から抱きしめました。


 成長が早い時雨さんとちょうど同じ身長なので、たぶん160cm前後でしょうね。


「何もしてない事はないよ。鈴香さんや父さんが優しくしてくれたから、今の僕が居るんだ」


「……そんなの、誰でも出来ることでしょ……?」


「夜中、ご飯を作って道場まで持ってきてくれたよね。あれは誰にでも出来ることじゃないよ」


「……家族なんだから……当たり前じゃない……」


「栄養まで考えて作るのは、当たり前じゃないと思うんだ。それも、毎晩遅くまで起きていてくれたんだし」


「……き、気づいてたの……?」


「冷蔵庫の中身が多いんだから、少し気にしてればね。他にも色々……どれだけ支えになっていたか、今ならよく分かる……ありがとう、僕の大好きな、自慢のお姉ちゃん。だから、そんなに泣かないで欲しいな」


 ……鈴香さんがおちました。間違いありません。これまで見たことが無い、乙女の表情になっていますから。


「……生意気よ。もう少し子供らしくしてなさい」


 これは、『つんでれ』というものですね。歳の問題があるので、素直になることができないのでしょうか。


「善処するよ、鈴香さん」


「戻ってる……お姉ちゃんでいいのに……」


「そ、そっちも善処するよ……」


 いくら時雨さんでも、『ししゅんき』なのは他の人と変わりませんから、お姉ちゃんと言うのはむずかしいのです。



 この日から、時雨さんは平和な、でも普通とは言えない生活を送りました。


 変化も多いです。


 まず、時雨さんが強くなる理由。

 元々は復讐のためでしたが、それが無くなった今は、『自分と大切な人を守るため』という、日本では必要ないように思えるものになりました。


 ただ、自分の命は最優先です。自分が死んでしまっては、守るも何も無いからなのだとか。

 わたしのお父さんを助けた時は、例外という事ですね。


 二つ目は、菜津さんと一緒に『あにめ』や『らいとのべる』を見始めた事です。趣味が無い時雨さんのために菜津さんが探したそうなのですが、菜津さんが楽しくなってますよ?

 なにやら、えっちなゲームにまで手を出し始めたとか……時雨さんを振り回しているような。


 鈴香さんも、「時雨の趣味を理解しないと、お姉ちゃんは名乗れないわ!」と言っていたり。


 三つ目は、お父さんや鈴香さんと仲良くなった事です。元々仲が悪かったわけではありませんが、少しよそよそしかったですね。それが無くなって、誰から見ても家族だと思える関係になりました。……鈴香さんは、違う関係になりたそうですけど。


 四つ目はとてもじゅうようです……時雨さんの魅力が、多くの方に知られることとなりました! 毎日道場に居た時雨さんが、お友達をつくって遊びに行かれたり、学校で人助けをしてクラスの頼れる存在になられたり……かっこいいですね!


 ……時雨さまとお呼びしましょう。


 普段の時雨さまも、怒った時雨さまも、困ったお顔の時雨さまも、優しい表情をされた時雨さまも、照れている時雨さまも……


 大好きです、むしろ愛してますっ! どんな時雨さまでも、キュンキュンしてしまいます……



 ついに、こちらの世界に連れてこられてしまいましたが、他のみなさんは大丈夫なのでしょうか? 特に、菜津さんと鈴香さんはおかしくなってしまいそうで、とても不安です………時雨さまの大切な方がそんなことになるのは、許せません。

 それに、わたしもよく知っていますから。時雨さまの記憶ではありますけど……



 時雨さまを見ている間に、いつの間にか現実と同じところまで進んでいます。


 でも、16年が一瞬だったような気がします……いえ、実際にそうなのかもしれませんね。記憶を覗かせて頂いただけなので、可能性はあります。


 ……早く、時雨さまにお会いしたいですね……








 目が覚めると、意識を失う前と同じ場所に倒れていました。お父さんも、目を覚ましたようです。


 時間はあまり経っていないのですね。


 ここには誰も入れないようにしていたので、気づかれることなくそのままだったのでしょう。


「……見たか?」


「はい、とてもすてきでした……」


「そ、そうか……それはよかった、でよいのか?」


 お父さんがおかしな事を仰っています。よかったに決まっているじゃないですか。

 それにしても、時雨さまが目を覚まされません……


「……そうでしたっ、シグレさまっ!」


「……様?」


 時雨さまが、もし亡くなっていたら――


「……ん……」


「よかったです……」


 ……後を追うつもりでしたが、ご無事なようです。まずは、へーネを呼んで運んでいただきましょう。


「……あ、れ……?」


 おかしいです、時雨さまから離れた途端、力が入りません。お父さんなら分かるでしょうか?


 ……魂が時雨さまと繋がっているそうです。それも……ずっと離れると死んでしまう……


 なんて……なんて――


 素晴らしいんでしょうか……!


 お父さんはへーネを呼んだ後、眠るために部屋へと向かいました。わたしも、時雨さまをへーネに運んでもらい、ベッドで横になります。


 ……二人っきり、ですね。そっと、そーっと……時雨さまの服を上だけ脱がし、わたしは全て脱いでしまいました。


 なんだか頭がぼーっとしますけど……とにかく、今は時雨さまと触れ合いたいんです。

 ……えへへ、あったかくて、しあわせ……




 ――時雨さま、早くお会いしたいです。

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