あとがき

 終わりました。

 終わりましたねぇ。

 ここまで果てしなく長かったですが、遂に『最強剣士、最底辺騎士団で奮戦中 ~オークを地の果てまで追い詰めて絶対に始末するだけの簡単?なお仕事です~』(旧題:王立外来危険種対策騎士団は幹部候補生を募集しています。)が完結と相成りました。

 なろう側では既に完結していましたが、遂にこちらでも完結です。


 雨の日も風の日も、来る日も来る日も……途中忙しかったり体調不良でちょこちょこ休んだりしてた時期もありますが、よくもまぁこれほど長く続けられたものだと勝手に感慨に耽っております。


 総文字数、約270万。

 なろう側で換算した連載規範はなんと約六年四ヶ月です。

 小学生が入学して卒業するくらいの時間、この小説続いてたんですよ。

 これほど一つのことに長く取り組んだのは初めてかもしれません。


 長い間小説に付き合ってくれた皆さんには感謝してもしきれません。

 なにより私よ、よく頑張った。

 最近になって自分を褒めることの大切さを知った私です。


 我々が観測するヴァルナくんたちの冒険はこれで終わりですが、きっと彼らはこれからも様々な問題に直面しながらも切り抜けて進んでいくことでしょう。そこから先は想像するしかない物語です。


 さて、昔どこかで言ったような気もしますが、この物語は初期の構想では今とは大分在り方の違う話でした。それが時間をかけて考えが変わっていき、今の能力があるのに世知辛いヴァルナくんを中心としたドタバタ仕事ファンタジーになったのですが、今の形になってよかったと素直に思っています。


 物語を書くとき、だいたい私は作品ごとになにかしらコンセプトを決めてます。

 あんま具体的には覚えてないけど、外対の場合は確か以下の通り。


 ヴァルナくんをブレさせない。

 技は叫ぶ。

 口で言うほど簡単にはいかない世知辛さと世の中の難しさを書く。

 性質の異なる様々な場所で様々な問題を書き、なるだけ変化を持たせる。

 キャラを多めに喋らせる。

 如何なる時もオークは忘れない。

 ラスボスは話の途中で登場させる。

 必ず完結させる。


 だいたいこれくらいですかね。

 おおよそコンセプトに添えたのではないでしょうか。

 色々考えて本編に採用しなかったシナリオとか、考えが変わって辞めたシナリオも幾つかあった気がしますが、ヴァルナくんを書くのは流石に一番苦労させられました。ストーリー書いた後に「なんか違うな」って思ったら大体ヴァルナくんに原因があるので、あのハイブリッドヤベェ騎士道クリーチャーなら何を考えて何をしてどう見えるだろうってところから考え直してストーリーを再構成させられたことは何度もあった気がします。

 楽しかったですけどね。自分で書き上げた小説を「ちがーう!」って削除して書き直したらもっといいのが出来るので楽しいですよ。


 主に「変化を持たせる」の部分が読者さんに言われる「予想外」に繋がったのかもしれませんが、私自身のきまぐれで思いついたものも多かったので正確なところはよく分かりません。最後にヴァルナくんが夢○転生を会得するのは私もまったく読めませんでした。


 ともあれ、完結できて悔いはありません。

 あとはは登場人物紹介を最後までやりきれば終わりです。

 追加ストーリーは書きません。

 要望があっても書きませんからね。

 ただ、ヒロイン論争で納得しない方もいると思うので特別にちょっとだけヴァルナとネメシアのくっついた経緯やセドナのことを書きます。




 あの後段々と政治の世界を勉強し始めたヴァルナに、ネメシアは得意の世話焼きと内に秘めた好意を発揮して何かと手伝っていました。休暇の度に二人はイセガミ家の屋敷で共に勉学に励み、時々アストラエが参加したり後輩が混ざったり、セドナもちょこちょこやってきてネメシアとヴァルナの隣を取り合ったりしてました。

 ただ、このセドナの態度は半ばじゃれ合いで、彼女はその間にテロ後の混乱のなか聖盾騎士団内で出世していきます。


 事件から三年目くらいになってセドナは今の公安に近いチームを形作りはじめて様々な行動をするうちに、自分のやり方は国には必要だし自分もやるべきだと確信しているけど、ヴァルナの騎士道とは噛み合わないものになっていることを実感しはじめます。


 もし自分とヴァルナが伴侶として共に歩むなら、どちらがが理想を妥協しなければいけない。

 セドナは今の道に自分の在り方を見出しているが、かといって自分の好きなヴァルナは騎士道を追い求めるヴァルナで、ねじ曲げたくない。

 セドナは初恋は叶わないものと悟り、ヴァルナの『友達』でい続けることを決めました。


 一方のネメシアですが、ヴァルナへの想いはありつつもやはり素直に言い出せないでいました。イセガミ家もいい加減もどかしくなってネメシアの背を押すようなことをしていましたが、そんな矢先にヴァルナからいきなりネメシアに交際の申し込みがあります。

 ヴァルナは前々からネメシアの好意には気付いていましたが、テロの件で自分の中でも彼女への想いが強まっていることに気付きます。しかし理由が分からず数年経過し、その間もネメシアに勉強を教わっているうちに気付きます。


 いくら騎士道を掲げても、人間一人の判断では過ちを犯すことがある。

 ネメシアはその過ちを誰よりも早く気付いて叱ってくれる。

 己の不可侵の領域である筈の騎士道を横っ面から殴りつけてくれるネメシアの優しさ故の厳しさに、ヴァルナは自分の人生の半分を捧げるにはネメシアしかいないという考えを抱いていたのです。


 こうして二人は交際を開始し、ネメシアの父カルストから試練を一方的に浴びせられたりしながらも数年かけて婚姻を勝ち取り、ついに騎士団休職と結婚に繋がったのです。


 セドナはそれを素直に祝福し、今はゴーイングマイウェイを楽しんでいます。国内各セクションに自分のファンがいて協力してくれるし、議員クラスの相手でもあの手この手で言うことを聞かせたり悪党を蹴散らしたりと大暴れ。そんな彼女も親友ヴァルナとアストラエに過去のことを揶揄われると弱く、家族に結婚を勧められてぶーたれたりと当時の可愛らしいところは残っています。

 彼女の隣を狙う男は星の数。

 ワンちゃんをコキ使い悪党を裁くセドナ・スクーディアの事件簿の始まりです。


 ちなみにシアリーズはいつの間にか子供が出来て騎士団を去ったと思ったら数年後にヴァルナに似た息子を連れて現れて「誰の子でしょう? 正解は……教えな~い!」と笑いながら去って行ってヴァルナに変な汗をかかせています。クロスベルにも同じネタを披露しているあたり、あと数年は同じネタで擦るつもりのようです。ヴァルナもクロスベルも九割違うと思いつつワンチャン自分の子なんじゃないかと疑っているため彼女の息子にはとても親身にしてます。




 ……と、まぁこれは作者の考えてるものですが、本編に書いた訳じゃないので別に読者各々でIFを想像してもいいです。その方が面白い。だから書かなかったのもありますし。


 さて、本編は悔い無しですが、別のところでもしも悔いることがあるとすれば、せっかく賞まで受賞してコミカライズにまで漕ぎ着けたのにそっち方面が呆気なく終わってしまったことでしょうか。元々ヘビーユーザー勢はあまり興味を示していなかった節もありますが、とにかく何をやっても上手く行かずにコミカライズ連載期間はずっと苦しんで半ば鬱みたいになってました。

 漫画家さんにも悪い事をしましたが、そもそも思い返すともっと早い段階で崩壊の予兆があったと思います。今更何言ってももう遅いですけどね。

 なんとか本編に作者の心象が出ないよう精一杯力を振り絞ってました。ちなみに十七章のゴキ○リの大群はそれとは関係ないよ。本当だよ。あれは平時でも思いついたと思うし。


 今後コミカライズ再始動ないし書籍化する可能性は、個人的な印象ですが、極めて厳しいと言わざるを得ません。書籍化に際しての契約時にこの小説の出版に関する権利を会社に渡してしまったからです。当小説が今から爆発的な人気を博せば可能性はありますが、読者さんの評価次第ですね。人を選ぶ小説だから厳しいだろうなぁ……だからこそ、分かって貰える読者さんとの出会いが嬉しくもありますが。


 話を戻します。

 結果はどうあれ鬱は乗り越えて、最終章はなんの憂いもなく突入できました。

 ヴァルナくんの最後の姿だし強いところ見せたいなって思ってラスト二話はああいう形になりましたけど、初期の『首狩り』が戻ってきた感じやヴァルナくんのほどよい脱力感もあって、この形にして良かったと個人的には思っています。


 ヴァルナくんを書けてよかった。

 ストーリーに登場した全ての登場人物たちにも出会えて良かった。

 この六年間、パソコンと向かい合って試行錯誤悪戦苦闘しながら物語を書き上げた経験は、他のなにものにも代えがたい貴重な人生の財産として仕舞っておきます。


 もしもまだ評価がまだな方がいましたら、これが最後なので是非入れていってください! 感想、レビューもお待ちしています!


 では……ありがとう! そしてお疲れ様でした!

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