第370話 全ては刹那の輝きです

 いきなり、上から飛来したハルピーの――確か、ぴろろの父のチュンだ。

 その刹那、アースが目の色を変えて崖を飛び降りる。


「待て!!」


 咄嗟にそう言ったものの、待てと言って待つ犯罪者がいないように当然アースも待たない。そもそも多分人語が通じないし。

 アースは武器を腰のベルトに引っかけ、空中でバランスを取ると四つん這いの体勢で傾斜に着地する。人間なら絶対に転げ落ちるが、そこはオークの環境適応能力故か、そのまま四足歩行で全力疾走を開始した。

 このまま降りるかと思ったが、アースの進行方向を見るに下ってはいない。


 俺は剣を投げて殺すかどうか逡巡したが、アースの移動目的が気になって一旦泳がせることにした。どちらにしろ今から殺そうにも場所が悪い。この判断が後に響かなければいいが、と願いつつ疾走する。

 俺の疾走速度にチュンが併んで飛行する。


「いいかねー?」

「走りなからでお願いしますッ!!」

「おっけー。じつはさとに知らんニンゲンが近づいてるんだけど、なーんかアブナイ雰囲気だからしらせにきたー」


 不審者がミノアの地に近づいている――今の状況でミノアの地にわざわざやってくるのは誰だろうかと考えると普通は騎士団の可能性が高い。オークにいつ攻撃を仕掛けられるか分からず殺気立ってるのかもしれない。


「アブナイって、どんな感じか分かりますか?」

「こーげき的っていうか、はないき荒いっていうか。おちかづきになりたくないかんじ? それにほら、ハルピーはへいきだけど、にんげんってどうぞくころすんだろ?」

「俺は出来れば殺す日は来ないで欲しいですけどね……」


 しれっと告げられた言葉に人類の業を突きつけられた気分だ。


 確かに人間は同族を殺す。

 そういう事が自然界で存在しない訳ではないが、時として自然生物にとっては異次元とも言える発想で相手を殺害することがある。平和な王国内でさえ、殺人事件が完全に途絶えることはない。海外では戦争や内紛というものもあるそうで、俺には想像もつかない世界だ。


 のんびり屋のハルピーが「同族を殺しそうな雰囲気」と言うような相手と聞き、俺の胸中に微かな不安がこびり付く。もしかしたらその人物は、騎士団ではないのかもしれない――或いは騎士団の中に危険思想の持ち主がいたのかもしれない、と。


「しかし、それにしたってアースとの一騎打ちの最中にいきなり割り込んでくるから吃驚しましたよ」

「まぁ、アースにもつたえとかないとなって。にんげんがこのままのぼってくると、アースたちのまもってたどうくつをとおりかかる」

「守ってた洞窟って?」

「おやをなくした虎のこどもが住んでるらしい。ぴりりがいってた」

「ぴろろね!」

「そうそう」


 待て、と考える。

 虎を保護する洞窟をオークが守っていたというのは初めて聞いた情報だ。

 そして恐らく、森で見かけなくなってきた虎はそこにいる。では、虎のいる場所に殺気立って近づいていく人間というのは――。


「……アースはその洞窟に向かっているんですか?」

「たぶんそーじゃない? あのどうくつのとらは『彼女』――ああ、もう亡くなったメスオークにとってこどもみたいなもんだから」

「……」


 オークは死んだ仲間の亡骸には情を抱かないが、メスオークに対してはその限りではない。あの戦いを中断して逃げ出してまでそこに近づく理由は十分にある。そして、村に到達した誰かがハルピーを連れてそこに向かった可能性も、ある。


 根拠はないが、何となくトラブルの予感がする。

 こういうとき、第六感は嘘をつかない。

 それは、起きるか起きないかの話ではなく、もし起きた場合は面倒なことになるだろうという一種の確信だ。未然に防げるならばそれに越した事はない。


 傾斜の関係上俺では突っ切れない方向に突っ切っていくアースを見て、俺はアースの方が先に洞窟とやらに到達すると確信し、更に加速することを決める。これまでアースを崖で倒すことも考慮した動きだったが、ここからはスピード勝負だ。


「道案内お願いします! 後日おやつを一食ごちそうしますので! ――踊鳳ッ!!」

「おおっ!? ちょっとナくん、きみはやいね!?」


 驚愕しつつもきっちり並列飛行するチュンに安心して、俺は地面を蹴り飛ばしてぐんぐん加速した。




 ◇ ◆




 自分はどうすればいいのだろう。

 シャーナは自問するが、答えは出ない。


 トゥルカが去った後、すぐにぴろろが洞窟にやってきた。

 彼女こそトゥルカの協力者、虎の守護者のひとり。

 彼女は洞窟に来た理由を、トゥルカに頼まれてのことだと言った。


「だれがくるかはしらないが、にんげんならカンタンだ。おいかえせばいい」

「戦いになるのですか? トゥルカはコリントスという男が来ると言っていましたが……」

「さあ?」


 ぴろろは自分の身が危険に陥るとは欠片も思っていない顔だ。


 シャーナはこのとき、ムームーを連れて里に戻るかどうか迷った。

 弟を想うならばそうすべきだが、これから精霊に無礼を働く人間が現れようというのに、この島の戦士たる者が引くのでは臆病者のそしりは避けられない。その悩みを破るように、弟のムームーは槍を構えた。


「精霊様が戦うなら、おれ手伝う! よくわかんないけど、西のヤツラは約束破りなんだろ!? 島の人間が約束破って悪さするのに、それを倒すのを全部精霊様に任せるの、絶対ヘンだ!!」

「ムームー、しかし精霊様の邪魔になっては……」

「駄目だ! 戦士は戦うべきだ!! ねーちゃんだって戦士だから戦うよな!?」

「う……」


 戦士は誇りあってこその戦士だ。

 ムームーの言い分は掟を考えれば正しい。

 それでも弟の身を心配してしまう自分は、間違っているのだろうか。


「……分かった。精霊様、微力ながら我らも力をお貸しします」

「いいけど」


 結局、弟を置いていく事が出来ずにシャーナは残る。

 心の内では、弟をこの場から逃す言い訳がないか探しながら。


(トゥルカよ……王国の毒に冒された西の民と、頑なな掟に縛られる東の民に、どれほどの違いがあるのだ……今こうして弟が危険に晒されるかもしれないのに、守る理由も見つけられない我らと……)


 余所者を排斥し、掟に拘り、何も変わらないことが本当に良いことか。

 船頭のバウが齎す物資や情報に頼りながら、彼を余所者と呼ぶのは本当に礼節を弁えたものなのか。王国人の学者だというプファルという男の語る「植物学」は、言い伝えとは全く一致しないが、不思議と納得の出来る理論だった。その知識を知らず掟だけを信じていることは、本当によいことなのだろうか。


「――なんだ? バケモノがいるじゃねえか……」

「ッ!?」

「ねーちゃん、きたぞ!」


 弟の鋭い叫びに、声の主の方を向く。

 そこには、恰幅のいい――肥満体型がいない東の民の視点でだが――中年の男がクロスボウという王国の武器を携えていた。体からは汗が滲み出て、若干の疲労感を覚えているようだが、足取りはしっかりしている。

 槍を腰だめに構え、シャーナは己を奮い立たせるように叫ぶ。


「貴様がコリントスか!?」

「黒い肌……ふん、トゥルカのお仲間ってか? まさかお前らそこにいる小さいバケモノをトーテムだ精霊様だと拝んでるのか? これだから未開地の野蛮人は困るなぁ。その小さいのは魔物なんだよ。人間の邪魔になるから殺されて当然の、お邪魔虫って奴だ!!」

「何をふさけたことを! 精霊様は本物の精霊様だ! いや、待て……貴様、トゥルカをどうした?」


 彼を殺す覚悟まで決めて向かったトゥルカが来ずに、コリントスという男が来る。

 それは、つまりトゥルカの敗北を意味するのではないか。

 シャーナの質問に、コリントスは下卑た笑みを浮かべる。


「さぁなぁ。逃げ出したんじゃないのか? あいつは逃げ足だけなら王国でも通用するぞ」

「ウソだッ!!」


 即座に否定したのはムームーだった。


「トゥルカはやるときはやる男だ!! 戦うと言ったら勇敢に戦う!! お前、何かずるいことをしたな!!」

「口の利き方に気をつけろよ、ゴキブリみたいな肌しやがって」

「……そんなヘンなこと言う奴、初めて見た。よく分からんけど、馬鹿にされてる気がする」


 感情的になったムームーが歯ぎしりする。

 アルキオニデスにはゴキブリを悪口の例えにする文化はないが、確かに彼の言葉の節々にはシャーナたちを徹底的に軽蔑するような雰囲気を覚える。

 コリントスの視線はぴろろの方に移り、彼は舌打ちする。


「ハルピーってやつか。そんなのがいるとは聞いてなかったな……クソ、粗悪品のライフルでもないよりはマシだったか」

「何を一人で勝手にぼそぼそと……逃げるなら今のうちだぞ、王国の商人!! 貴様では精霊様に勝つことは出来ん!!」

「そうだぞ。えっへん」

「ゴミ共が……どいつもこいつも邪魔邪魔邪魔……あと少しで息子の仇が取れるっていうときによぉぉぉぉぉッ!!」

「!? なんだ、あいつヘンだ……怖い……」

「呑まれるな、ムームー!」


 一人でぶつぶつと喋ったと思ったら突然豹変したように叫び出すコリントスの異常な情緒に、ムームーは完全に怯んでしまっている。戦士が戦いの中で怖いなどと感じてしまえばそれは敵にとって格好の隙となる。


 コリントスは唐突にクロスボウに番えた矢をぴろろに向ける。


「如何にハルピーでも貴様のようなちび一匹ッ!! 殺して標本にすれば高く売れるだろうよッ!!」


 ばひゅっ、と、空を切り裂いて一条の矢が飛来する。

 東の民が狩猟に使っている弓に比べかなり小さいにも拘わらず、その速度は劣らない。しかしぴろろは慌てた様子もなく、自分の周りに纏わせた風に指向性を持たせて解き放つ。


「むだー」


 風は、完璧すぎるタイミングで真下から矢に風を浴びせ、全く別の方向に逸らしてしまう。流石は精霊様、と内心で驚嘆と同時に敬服の念を覚える。今のは風を操るだけでなく、きっと驚異的な動体視力と反射神経が必要だった筈だ。まだ子供でもこれほどの力があるとは、やはり先祖代々崇めてきた精霊の力は本物のようだ。


 ぴろろの体に更なる風が纏わり付く。

 今度の風は、心なしか攻撃的だ。


「おまえ、いってることまったくわからん。でもわかることがある……ころす、ころすってぎゃーぎゃーさけぶにんげんにイイやつはいない」


 周囲から風が渦巻いてぴろろの眼前に目に見えるほどの空気の塊を形成していく。

 それでいて、シャーナもムームーも全く風に煽られてはいない。

 風か、或いは天空そのものの支配者か。

 ぴろろは、不快感を以てしてコリントスに叫ぶ。


「おまえ、とらにさわるしかくない。どっかいけっ!!」


 まさに今、人間など紙切れのように吹き飛ばす強大な風の塊が射出される寸前――コリントスは背中から何かを取り出して突きつける。

 それを見た瞬間、ぴろろは瞠目した。


「とらのこどもっ!? なんで――!」


 それは確かに神聖なる虎の鮮やかな紋様がある、虎の子供だった。

 ぴろろは咄嗟に風を霧散させて攻撃を中断する。

 洞窟で殆どが保護されているはずの虎をどうして――そう思った刹那、シャーナは気付く。コリントスの出した虎は何かがおかしい。そして掲げられた虎の体が妙にうすっぺらいことと、無防備に開いた虎の口の中に光る何かを見つけ、シャーナは青ざめる。


 あれは、虎そのものではなく虎の毛皮だ。

 唐突に出した一瞬だけは顔の形などで虎に見えるよう加工されているが、実際には既にそれは死んでおり、悍ましいことにクロスボウの装飾品のような姿に変わり果てている。


「しまっ――」

「咄嗟に攻撃を中断させたら、隙が出来るよなぁ?」


 本来は虎を油断させる為に用意したものだったのかもしれない。

 それが今、虎を守護するぴろろに致命的な隙を生み出した。


「死ねや、バケモノぉッ!!」


 矢は一直線にぴろろに飛来し――。


「精霊様っ!!」


 ぴろろの前に、咄嗟にムームーが躍り出た。

 槍で弾くなどという芸当も出来ず、ただ庇うように。


 ぱっ、と、小さな血飛沫が舞った。


「あ……ああ……」


 ムームーは余りの衝撃に、戦士の証たる槍を取り落とした。


「ねーちゃん……ねーちゃんッ!!」

「おまえ、あたいをかばって……ちが……ああ……!! ぴぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」


 ぴろろが動揺のあまり耳をつんざくような悲鳴をあげる。

 人間などどうとでも倒せると思っていた彼女にとって、それはきっとあってはならない光景だったのだ。


「グッ……はっ、あぁ……ッ!!」


 矢を浴びたのは、ムームーを庇って前に出たシャーナだった。

 腹部に、鋭く、深く、矢が突き刺さり、血が滴る。

 シャーナはその衝撃と痛みを、歯を食いしばって耐える。

 

 結局、シャーナは浅はかな人間なのかも知れない。

 精霊の為に動くことは出来なくとも、弟の為なら迷いなく体は動いた。

 弟だけは――愛する弟だけは絶対に、こんな男の手にかけさせない。

 不意打ちが失敗に終わり、慌てて矢をクロスボウに再装填しようとするコリントスに向け、シャーナは命を絞り出すように前に出る。


「クソっ、余計なことしやがって! そんなに死にたいなら殺して……」

「手を、出すな……私の、弟に……!!」


 痛みの余り、槍は握っているのでやっとだ。

 でも、シャーナは弟の為ならどんな辛い事も我慢が出来る。

 コリントスよ、貴様に分かるか、この思いが。

 お前も息子を愛していたなら、分かる筈だ。

 大切なものを守りたいと思ったとき、人は誰よりも勇敢になれることを。


「弟に手を出すなぁぁぁぁぁーーーーーーーーーッ!!」


 山をも震わせる爆発的な感情が、絶叫となって響き渡る。

 コリントスの狂気をも上回る圧倒的な気迫が空間を伝播した。


「ひっ、あ……」


 コリントスの顔面が蒼白になり、震える手が矢を取り落とす。

 コリントスはシャーナの気迫に気圧された――訳では、ない。


 一体、いつの間にそこにいたのか――それは、己を見ること以外を許さないとばかりに巨体を揺らして悠然と歩み寄ってきた。その巌の如き肉体、無骨で野太い四肢、そして醜悪ながらどこか誇りに満ちた目をした怪物が、そこにいた。


 矢の一本二本では決して止められないと確信する程の圧倒的な存在感を纏い、シャーナたちには目もくれずに近づいてくるアース・トーテムを見た瞬間、コリントスは我を忘れて取り乱した。


「おっ、オーク……なんで……く、来るなッ!! 来るなぁぁぁぁッ!!」


 コリントスは確かに常人より強く、武器を持っていた。

 トラを仕留める為に他の小細工もあった。

 しかし、彼は気付いてしまったのだろう。


 世の中には、絶対に怒らせてはいけない存在がいることを。

 虎を狩るつもりで、『虎の尾』を踏んでしまったことを。 

 息子の敵も何もかもを忘却し、コリントスの心にはただ恐怖のみがあった。


 恐怖は平常心を狂わせ、正常な判断を失わせる。

 この場にトゥルカがいれば、それはどのような皮肉だろうかと思ったことだろう。


「――あっ?」


 気がつけば、逃げるコリントスは足を踏み外し、傾斜に体を落下させていた。

 息子の死が確定したそのときと全く同じように、同じ場所で。

 体が地面に叩付けられ、短い悲鳴を漏らす。


「あっ、ガッ、い、助け――!?」


 どんなに手足を突っ張ろうとしても、体が止まらない。

 その瞬間、コリントスの死は確定した。

 ただし、運命はより強い運命によって覆される。


「なに滑落してんだあのおっさんはッ!!」


 僅かに遅れ、疾風のような速度でアースの横を駆け抜けたのは、ヴァルナ。

 ヴァルナは猛スピードの疾走から異常なまでの足捌きで体勢を変え、片手で剣を引き抜きながら加速を殺さず斜面を滑り降りる。凹凸の激しい筈の斜面をつま先と斜面に突き刺した剣だけでバランスをとって滑るように移動したヴァルナは、回転しながら駆け落ちていくコリントスの襟首を一瞬で掴み上げて停止させた。


「ったく、世話焼ける!! お前が何したかは後でじっくり調べるが、罪は生きて償えよ!!」

「ぐ……あ……」

「聞こえてねぇか。まぁいい。どっちにしろ話は後だ」


 ヴァルナは残る仕事を片付ける為に、人一人を抱えているとは思えない速度で斜面を登っていく。

 ヴァルナは、彼がシャーナを射たらしいことは到着した瞬間に気付いていた。あと少し早ければ止められていたという後悔の念は絶えないが、間に合わなかった以上は速やかに応急処置なりなんなり施さなければならない。


「リンダ教授に無理言って頼むか……専門じゃないだろうが、今一番頼れるからな」


 普段の彼なら、それよりも優先してオークを狩る。

 だが、ヴァルナにはこのとき、既にアース・トーテムが本当の限界を迎えていることに気付いていた為、敢えてそれを口にすることはなかった。崖を登り切ったヴァルナが見たのは、そこで直立したまま事切れたアース・トーテムの姿だった。




 ◆ ◇




 朦朧とする意識の中、アースは自分が夢を見ているのだろうと思った。


 体に矢を刺されながらも、守る者のために気高く叫んだ『彼女』。

 もう永遠に出会える筈のない『彼女』。

 自分があと少し早く到着していれば、今も生きていたかもしれない『彼女』。


 あの日、何もできなかったあの瞬間が目の前にあった。


 もちろん、それは幻影に過ぎず、彼女はよく見れば人間の女だった。

 しかし、その女がどうしても『彼女』と重なって離れない。

 故に、アースは非道にも彼女に追い打ちをかけんとする人間に迫った。


 押されれば倒れてしまいそうなほど、血を流しすぎた体で。

 一矢受ければ膝から崩れ落ちるような状態で。

 背後から迫る剣士に抗う力が残らないと承知の上で。


 それでも、あの娘を見捨てることは出来ないと願った。


 ――あ。


 白んでいく視界の中に、生涯をかけて求めた者の姿が見える。


 『彼女』は、微笑んでいる気がした。


 それでいいのだ、アースは間違っていないと告げてる気がした。


 アースは『彼女』とその周りに一足先に集まっていた皆を見て、ああ、と安堵する。


 ――お待たせ。


 ――じゃあ、いこうか。


 七つのトーテムと彼らの愛した『彼女』は、刹那と那由他の狭間に旅立っていった。

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