第334話 更なる真相です

 引っ越しと呼ぶほどでもない少量の私物を運び込んだイセガミ家の部屋で、俺は目を覚ます。

 この屋敷で朝を迎えるのは人生で初めてのことだ。


 どことなく植物由来の香りが感じられるこの邸宅を心地よく感じるのは、人がまだ植物に囲まれて生きてきた太古の昔の遺伝子が懐かしんでいるからなのだろうか。とりとめもないことを考えつつ軽く筋トレをし、着替え、顔を洗い、そして邸宅裏に存在する訓練場へと向かう。


 武家としてもここは確保しておきたかったらしい訓練場は、個人の所有するものとしてはなかなか立派で、使い方次第では十人以上が同時に訓練できそうな広さだ。訓練用の武器立てから模擬剣を抜こうとすると、三本しか持ってきていない筈の模擬剣が増えている。元々屋敷にあったものかと思って試しに手に取り、すぐに違うと気付いた。

 重量、重心、刃渡り、全て俺が持ち込んだ模擬剣と同じになっている。


「それ、複製した」

「マモリ、おはよう」

「うん、おはようヴァル……じゃなくて、お兄ちゃん」


 背後から近づいてきたのは模擬槍を手にしたマモリだった。

 流石に俺を兄と呼ぶ態度から恥じらいは減ってきたものの、お兄ちゃん呼ばわりされるとこちらとしては未だに響くものがある。俺も早く慣れたいものだ。


「見事なもんだな。彫刻とか、そういう技術もあるのか?」

「一応は。簡単なモノなら作れる」

「大したもんだ、昨日の今日でよくここまで近づけられたな」


 模擬剣とはいえ、騎士団で使う模擬剣だ。

 その辺の素人が作った玩具とは違い、専門の職人が仕上げている。

 列国文化教育の賜物か、はたまた当人の才能か、ともあれ互いに目的は訓練なので会話もそこそこに素振りを始める。


 自分の素振りもそこそこにマモリの槍捌きを盗み見ると、彼女の真剣な表情が目に入る。


「はっ! やっ!」

(基礎は出来てるけど、ちょっとぎこちない気もするな……)


 彼女の流派は辰巳たつみ天滝てんだき流槍術といい、イセガミ家は代々これを受け継いできたらしい。しかしマモリは父から本格的には槍を教わっておらず、殆ど見様見真似らしい。それでも一応基礎が出来ているのは、それだけ完成系のイメージが深く記憶に刻まれているからだろう。


 武術指南書は一通り揃っているそうなので、俺も一応学んでみよう。

 仮にも次期当主が「槍は苦手」は流石に格好がつかないだろう。

 バジョウなら恐らく免許皆伝だろうから、マモリの為にも出来れば指南を願いたい。


 一通りいい汗をかいた俺は、汗を拭いてマモリと共に食卓につく。

 列国料理は幾つかの料理を小皿に分けた独特の盛り付けであり、どれを食べるか少々目移りした。本来は箸で食べるものらしいが、まだ慣れていないので普通にスプーンやフォークを手に取る。


「いただきます。さぁ、たんと食べてね」

「はい、母上」

「列国風の食事って初めてだからちょっと緊張しちゃうわね……」

「分かるよその気持ち……それに綺麗に盛られてるからすぐ食べちゃうのが勿体ない感じしちゃうね」

「アタシとしてはもっと大皿にドカッと肉がいいんだけど」


 ――さて、今しがた家族以上の人数の声が聞こえたのをお分かりいただけただろうか。

 食卓に、何故かネメシア、セドナ、シアリーズも並んでいる。

 唯でさえ女性比率が高かったイセガミ家は更に極端な比率に偏っていた。


「おい……おいお前ら、何故我が家の食卓に雁首揃えてるんだ……いやまて、順番に聞く。まずはそう、セドナは何しにきた?」

「ご飯が終わったらちょっと付き合ってほしい用事が……あっ、仕事関連だけどすぐ終わると思うから! ここにいるのはその、ちょっと早く来すぎちゃったら『ご飯食べる?』って言われて……えへへ」


 ぺろっと舌を出して悪びれる食いしん坊のセドナ。

 許す。


「シアリーズは?」

「あら、忘れたのヴァルナ? アタシ、イセガミ家の食客でもあるのよ?」

「忘れてたよ畜生」

「あなたって時々脇が甘いわよね~」


 くすくす笑うシアリーズ。

 昨日あっさり帰ったから文字通りの食客とは思わなかった。

 ただ、今日は流石にやる気はないのかバチバチしていないので許そう。

 残るは最大の謎だ。


「ネメシア」

「……」

「ネメシア、来るのはいいが何で朝ご飯までご馳走になってる? お前そういうの遠慮するタイプだと思ってたんだが?」

「……」


 ネメシアはぷいっと顔を反らして、ぼそりと呟く。


「……家出」

「えっ」

「だから、家出って言ってるでしょ……」


 よほど恥ずかしいのかネメシアの顔は真っ赤だ。

 確かに、もう正規の騎士になった人が家出中とはかなり言いづらい。理由は恐らく昨日の件でかなり揉めたせいなのだろうから何も言及しないが、コイヒメさんもシアリーズも微笑ましそうな顔をしている。

 なお、家出経験が一度もないセドナお嬢様にとっては「家出」という言葉は甘美に聞こえたのか、若干の羨望の眼差しを向けている。


「ちゃんとコイヒメさんにお願いして、居候の許可は貰ったわよ……あと数日の休暇の間だけの話だし……」

「父君のカルスト様に反省を促すためでもあるんですって。可愛い親子よね」

「そうか……まぁ、いいんじゃないかな……」


 確かに娘の為とはいえあそこまで暴走したカルスト氏にとって、ネメシアの家出はなかなか応えそうだ。ただ、この件について言及するのはネメシアを虐めることになりそうなので曖昧に頷く。シアリーズが余計な事を言うかと思ったが、どうも女性陣は足並みを揃えている感がある。単に食事の場でまで揉めたくないだけかもしれないが。


 なお、朝食は滅茶苦茶美味しかったが、シアリーズ的には少々物足りなかったようだ。俺としてはこれくらいあっさりしてるのが個人的には好きなのだが、彼女曰く肉と油が足りないらしい。そんなに肉が食べたいなら昼に鶏肉の香草焼き作ってやるか。


 王国民が揃って食後の緑茶の苦さに悪戦苦闘してる最中、俺はセドナに声をかける。


「で、仕事の話で何かあったんじゃなかったのか?」

「そうそう、そうなの! あのね……今日の朝に急に起こされて何事かと思ったらね、ヴァルナくんが逮捕されて留置所にいるって言われたの!」


 悲報、王国最強騎士逮捕される。

 そんな見出しが出れば王国を揺るがす大スキャンダルである。

 しかし、俺は別に逮捕されていないので人違いではないだろうか。


「私ね、ナニソレって思いながら一応話聞いたんだけどね……なんか昨日この辺で大騒ぎが起きてた時間帯の少し後くらいに捕まったんだって。容疑は詐欺罪。でもホラ、ヴァルナくんな訳ないじゃない? わたしが一緒にいたからアリバイも完璧だし。でも逮捕した人がいいやあれはヴァルナくんだって言い張るからさ……証明の為に一緒に犯人見に来てよ!」


 親友を詐欺師呼ばわりされてだいぶ憤慨ぷんすかしているセドナだが、確かにこれは一度顔を出した方がよさそうだ。うっかり月刊ジスタ辺りの記者に知られたら厄介極まりない。

 そういえば、先日ネメシアとセドナに連れられて屋敷前まで引き摺られた時、アストライアが「別の方向から向かっていると聞いていた」と口にしていたのを思い出す。あれはどうやら俺のそっくりさんだったようだ。


「分かった。どれだけ似てるかお顔拝見にいこう。そういうわけで、行ってきます」

「「いってらっしゃい!」」

(……送り出してくれる人がいるって、いいな)


 イセガミ親子が元気に送り出す中、俺はふとシアリーズがお腹を押さえてひーひー笑いをこらえていることに気付く。何がそこまで可笑しいのだろう、と不思議に思っていた俺だが、その真相は割と早く判明する。


 俺が捕まっていると噂の留置所に到着した際、こちらの姿を確認した聖盾騎士は仰天した。


「騎士ヴァルナ!? いやしかし……ええっ!! じゃあアイツは本当に別人だったのか!?」

「ホラ言ったじゃん! 犯人の逮捕時刻にヴァルナくんと一緒にいたって!」

「でもホラ、騎士セドナはかなりの騎士ヴァルナびいきなので……も、申し訳ない!!」


 慌てる騎士に案内されて王都の留置所に入っていく。

 すると、留置所の取り調べ室にそれはいた。


「だから違うんだよぉ!! 俺はこの国の騎士じゃねえよぉ!!」


 情けない声で叫ぶのは、俺のそっくりさんらしき人だ。

 自分の顔をじっくり見ることは余りないので違いは分からないが、取調係にも分かっていないのか、その態度は厳しい。


「でもお前結婚詐欺はしたんだろ? 証拠も出てるぞ」

「断れなかっただけだよ!! むしろ俺が被害者だよ!!」


 何故だろう、自分の事ではないのに何となく俺が情けないことを言っているようで腹が立つ。

 話題がタイムリー過ぎるだろう。

 なお、取調係の騎士はあからさまなまでに取り合っていない。


「はいはい、まったく世界最強になった途端にこれとは、所詮平民出身の浅ましき身という訳か――王宮に報告したらどうなるか見物だな、ええ?」


 取り調べをしていたらしい騎士が見下したような顔で俺のそっくりさんを罵倒している。セドナが声を上げようとしたが、俺は敢えて止めた。彼がいつこちらに気付くか暫く観察してみたい。


「王子と我らが無傷の聖盾に寄生し、あのひげ妖怪に魂を売り、酒に女にうつつを抜かして羽目を外した結果がこれか? 蛮人め。世界最強というのも法螺であろう? 相手に土下座でもして譲ってもらったか? 或いは買収か? 薄汚くも小賢しく掻き集めてきた名声が一夜にして散る気分はどうなんだ?」

「勇者としての名声なら一瞬で散って欲しいです」

「何を急に真顔で意味の通らぬことを言っている。勇者だと? ここまで自惚れ屋だったとはな、子供にさえ鼻で笑われるぞ騎士ヴァルナ」


 セドナが怒りの余り手を握りしめすぎて爪で皮膚を突き破りそうだったので、そっと解く。セドナの視線がもはや俺のそっくりさんより取り調べの騎士が許せないと雄弁に語っている。ここまで案内してくれた騎士はセドナの怒気に顔面蒼白で膝が震えている。


 というか、勇者と言えばシアリーズの以前の想い人だった筈だ。

 そういえば俺と顔が似てるとも言ってたし、もしやこいつが勇者クロスベルか。

 彼の勇者が結婚詐欺とは落ちぶれたものだ、と何故か取調係と同じ心境になる。


「どうだ騎士ヴァルナ、いや、もはや騎士とも呼べぬ薄汚い平民よ。今のうちに泣いて俺に媚びを売れば減刑されるかもしれんぞ? まぁどちらにせよ貴様は王国中から恥知らずの愚か者とそしられる定めにあるのだ。靴くらい舐め……」


 と、饒舌に罵倒していた係官がついに後ろで俺とセドナが取り調べの様子を見ていることに気付いた。彼は一瞬白痴の如く呆け、逮捕された男を見て、もう一度こちらを見た。いわゆる二度見である。


「ああ、俺のことは気にしなくていい。さ、続けて」

「えっ、あ、ああ……えっ?」

「自信を持って騎士ヴァルナを逮捕したんだろ? 職務は全うしなきゃな」


 ちなみに今の俺は仕事ということで勲章の類もつけた正規の仕事服に身を包んでいる。取調係の騎士も当然それに気付く。つまるところ、この段階でどちらが本物かなど一目瞭然だ。

 と、セドナが一歩前に出る。

 その顔は――笑顔。


「続けて?」

「へぁっ……?」

「続けてよ。わたしの前で、わたしが違うよって言ったヴァルナくんのそっくりさんの尋問を、どうぞ続けてください」


 にっこりと、彼らの隙も無い笑顔で、セドナは先を促した。

 部屋の温度が数十度低下したような寒気がセドナ以外の全員を襲う。

 取調係の顔色がみるみる青くなり、やがてぐるん、と瞳が白目を向いた。

 そのまま彼は糸の切れた人形のように倒れ、口からぶくぶくと泡を吹く。


 人はある一定の怒りを通り越したときに笑うのだ、と俺は思った。

 と――セドナの足元からパキパキと音が聞こえる。

 音につられて下を見た俺は、セドナの足元から霜が生えているのに気付いてぎょっとした。セドナの体の中からオーラとは違う冷たい力が湧き出ている。物理的に周囲の温度が下がっているのだ。


「セドナ、おいセドナ!! 足元凍ってる!!」

「うん? ……わわわっ、本当だ!? なんでぇ!?」


 当人も全く気付いていなかったのかセドナは慌てて足を上げる。床と靴の間に張り付いていた氷がパリリ、と割れた。何事かと困惑していたが、もしかしてこれは魔法なのではないだろうか。


 思いがけず大変なことになった騎士たちは、暫く取り調べ中だったそっくりさんを放置して色々と騒いでた。


 閑話休題。

 改めて俺はそっくりさんと相対する。


「そんなに俺に似てるかなぁ……セドナ、どうだ?」

「似てるといえば似てるかな……わたしやヴァルナくんの仲間なら絶対間違えないと思うけど、遠目にしか見たことない人には見分けがつきづらいかも。主な違いとしてはまず声はちょっと似てるけど別人。目元の形がちょっと違う。骨格はよく似てるけど、筋肉の付き方はヴァルナ君の方がしっかりしてる気がする。あと背中の筋肉はヴァルナくんとは比ぶべくもなく平凡だね!」


 俺の本人確認は背中の筋肉でやれということだろうか。

 マッスルオデッセイに輝いたくらいだから見る人が見れば特徴的なのかもしれないが、背中の筋肉で個体を判別するって言葉だけ聞くと意味分からないな。

 俺の偽物ことクロスベルは一応ヴァルナではないと正式に認められたものの、詐欺罪の件が残っているので取り調べは続行する。


「被害者一、農村の娘ビクトリア。クロスベルと暫く同棲し、婚姻を誓うもその翌日にクロスベルが逃走。これは詐欺罪に当たる」

「違うんだよ! 逃亡生活で色々と疲れてて、そのときの俺は精神的におかしかったんだ! しかもビクトリアはちょっと強引な所があって、一生ここで暮らそうとか言われても困るじゃん!!」

「でも誓いに同意はしたんだろ?」

「断れないじゃん、場の空気で!! 家族総出でおじいちゃんとかおばあちゃんまで祝福してる中でさぁ!!」


 確かに気まずそうだが、その翌日に逃走した時点で大分彼の駄目加減が分かる。これが大陸の勇者かと思うと他人なのに泣けてくるな、と内心ごちながら更なる書類をめくっていく。


「次、冒険者ミツハ。同棲ののちに冒険者式の婚姻の誓いを立てるも、事故で別れる。その後再会すると、記憶喪失を主張し婚姻を無効と主張」

「それはマジだから!! 崖崩れに巻き込まれて海に落ちて記憶なかったから!」

「でも今は思い出してるんだろ?」

「記憶失ってる間はまさか他に誓い合った人がいるとか思わないだろぉ!?」

「それが次の罪に繋がるわけだな。町民のソーヤと同棲し、関係を深めて婚姻するも、記憶が戻ったから婚姻は無効と主張するっと」

「仕方ないじゃんッ!! 俺に記憶喪失コントロールできるわけないじゃん!!」


 それは確かにそうなのだが、仮にも一度は誓い合った相手を「記憶が戻ったから」で即座に切り捨てることに良心の呵責はなかったのだろうか。こんな男がここまでモテるのは女性にとって不幸な話かもしれない。


「切り捨てるって人聞きの悪いこと言うなよ!! ほとぼりが冷めるまで距離置きたかっただけだよ!!」

「そして逃亡後、潜伏先で建築作業員カルカナ、音楽家リマジ、衛兵のナスターシャとを三股、これまた婚姻を誓うも逃げ出す」

「カルカナに関しては酒の勢いで書かされたから無効だろ! リマジは断ったらあんたを殺して私も死ぬって脅迫されたし!!」

「でもナスターシャとは素面でやったんだろ?」

「ナスターシャがそんなに困ってるなら正式に婚姻すれば周りも諦める筈だって言ったから乗ったんだよ!! ほとぼりが冷めたら結婚したフリをやめればいいって!! でも他の女の子たちも押し寄せてきてどうしようもなくなったから逃げたんだって!!」

「あのさ、すげえ不思議に思うんだけど……お前なんでそんなにカジュアルに将来誓い合いまくってんの? 背負えないんなら背負うなと思うんだけど」

「俺はその気はないって言ってんのに向こうが来るんだもん!! 俺だって最初から恋仲になろうと思って近づいてねーよ、いつの間にかそうなってるだけなんだよ!!」


 どうにも部分部分で初めて聞いた気がしない話が出ている気もする。

 もしかして俺も一歩間違えばこうなるのだろうか。すごく怖い。


 彼はもしかしたら本当に色狂いではないのかもしれない。

 一つしかない果実を巡る奪い合いであったのかもしれない。

 相手にももしかしたら問題があったかもしれない。

 しかし、相手から全力で逃げ続けたその性根だけは、俺と彼とでは違うと信じたい。


「ちなみにお前が将来を誓い合った女の子たち、全員結託して被害届出してるんだけど」

「そうなんだよ!! あいつら逆恨みして俺のこと追いかけてきて!! そしたらシアリーズがこの街にいるって聞いたから必死こいて王都まで来たんだよ!! あいつならどうにかしてくれると思うじゃん!! 俺のこと待ってるって言ってたもん!! なのにあいつ、俺を見捨てたんだよ!!」


 曰く、『あっそ。でも残念時間切れー。受け付けは終了しておりまーす』とけらけら笑いながら見捨てられたという。正直それに関しては自業自得としか言えない。


「シアリーズのこと好きだったんなら訳分らん寄り道してなくて一直線に彼女のところに向かえっての。あの子割と最近までお前のこと待ってたんだぞ?」

「じゃあもうちょっとだけ待っててくれたっていんじゃんか……」

「むしろ今までよく待った方だろ。それともあれか? 好きじゃないけど利用しようと思って近づいたの?」

「そんな訳あるか!! あんな可愛い子、好きになるわ!!」

「……他の将来を誓い合った子たちは?」

「みんな可愛いし好きだよ!!」


 ダメだこいつ。久しぶりに他人のことを最低だと思ってしまった。


「おいセドナ、クロスベルはなるだけ重い罪に問うべきだぞ。なんなら皇国に問い合わせて勇者服送って貰おう。こいつに着せるために。あとリーカ・クレンスカヤにも一応知らせてあげるか」

「徹底的に叩いて拘留期間ギリギリまで余罪を追及しないとね!!」

「誤解だ! 俺は悪くない!! あいつらがあんなに激重に愛を迫ってくるのが悪いだろぉぉぉぉーーーーーッ!!」


 愛から逃げ続け、愛を裏切り、牢屋の中で空虚な愛を叫ぶクロスベルに背を向け、俺は帰路につく。シアリーズはどうもこの男の究極の駄目っぷりを思い出し笑いしていたようだ。


 あんまりこういうことは言いたくないが、あれは振って正解だと思う。

 こうして、めくるめく女難事変に一つのピリオドが打たれるのであった。

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