第219話 フェードアウトします

「やぁやぁやぁ!! ここから先は列国武家に生まれし男児、このバジョウがまかり通さんッ!! 幼き少年をいたぶる前に、まずは我が剣技を突破して見せよぉぉッ!!」


 列国の武人らしいその男、バジョウは子どものふりをする男、カダインにまんまと利用され、義憤に駆られて俺の前に立ちはだかる。個人的には非常に馬鹿らしい戦いだが、バジョウは真剣らしい。


「名乗られたからには名乗り返しておく。騎士ヴァルナだ」

「そうか君が……君の後輩くんには一杯食わされたよ。彼は怒ると怖いね」

「大体の人間は怒ると怖いもんだけど」


 例外として、セドナ辺りは怒っても可愛いだけだったりもするが。


「しかし分からないな。騎士道を貫く騎士とはつまり武士と同じような存在だと俺は思っていたんだが、あんな小さな子供を追い詰めてまで勝利に執着するのかい?」

「小さかろうが大きかろうがこのステージに立って戦うと決めた時点で戦士だろ。その覚悟があるから今もリタイアしてないだろ?」


 バジョウの背後のカダインがあっかんべーしているが、バジョウが振り向いた瞬間には怯えて声も出ないようなか弱い少年の顔で震えていた。


「……俺には弱い者いじめの為の詭弁に見えるね! それに守ると言った以上、武士に二言なしッ!!」


 俺から見ると凝ったコントにしか見えないのだが。

 この男、助けを求める声にはいち早く気付いた癖に察しが悪すぎる。

 というか、俺は何をやっているんだろう。

 競技中なんだから戦って倒せばいいじゃないか。 


「まぁ、分かった。とりあえず戦うぞ。観客も退屈してるみたいだし」

「む……そのようだ」


 バジョウが視線を向けた先ではファンの集団が「た・お・せ! た・お・せ!」と熱烈なキリングコールを送っている。どんだけファンの顔色伺って戦ってるんだ。段々バジョウが窮屈な生き方をしているように見えてきた。


「では、参るッ!!」


 瞬間、バジョウが弾かれるように前に出る。

 腰を落とし歩幅は小さく、さりとて速度は落とさない。

 剣術の基礎に通ずる堅実な動きだ。

 彼が派手に動くだけの戦士ではないことを示している。


「イェアアアアッ!!」

「ふっ!!」


 迎撃に繰り出した剣がバジョウの刀とぶつかり、鍔迫り合いになる。

 刀の曲線を利用して剣を滑らそうとする動きに合わせて剣を押すと、バジョウが唸りながら蹴りを放った。体を回転させながら剣を弾いて刃と蹴りの両方を躱すと、バジョウが唸る。


「唯ならぬ技量……それほどの実力がありながら、何故外道に落ちた!」


 なんか勝手に一人で盛り上がっているバジョウ。

 そのバジョウの声に湧き上がる黄色い歓声と俺に対するブーイング。

 やるせない気持ちだが、俺自身も観客を気にし過ぎているのかもしれない。


(スイッチ入れるか)


 御前試合を思い出せ。観客は全て野菜だ。

 かちり、と自分の中で何かが押し込まれた音がした。


 観客の一人が、面白いものが見られるとばかりに「本気になったな」と呟いた。




 ◇ ◆




 その瞬間、バジョウの全身を駆け抜けたのは恐怖でも不快感でもなく、威圧感とも違ったものだった。


 演劇では時折「食う」という表現がある。

 それは、複数の役者がいる中で、主役でもない人間が強烈な存在感を放つこと。聴衆や役者の視線、意識を全て食らう。それだけ場における存在として大きくなってしまうのだ。


 しかし、これは違う。

 彼――ヴァルナはバジョウという主役を食っているのではない。

 ステージ上の誰よりも強烈な「ここにいる」という力で、場そのものを食っている。

 そう確信したときには、ヴァルナがゆっくりと動き始めていた。


「……ぼうっとしてる隙を頂いたぁ!!」


 そんな中、彼の背後から選手の一人が盾を構えて迫る。

 派手な見た目の割に意外と回避が難しい、シールドバッシュだ。

 ヴァルナはそれを一瞥もせず、タイミングを合わせた回し蹴りでシールドを蹴り飛ばす。

 最も衝撃が伝わりやすい場所、そして盾の決して広くはない縁の部分を爪先で正確に蹴り抜かれ、選手は抵抗も出来ずに盾を弾かれる。

 しかも、弾かれたのは盾に留まらなかった。


「グベッ!? おわぁぁあぁぁーーーーッ!!」


 気が付けば、飛んだシールドに追従するように顔から吹っ飛んだ選手がステージを転がることもなく下まで落下した。一瞬何が起きたのか分からなかったバジョウだったが、スタリと着地するヴァルナを見て悟る。


『ヴァルナ選手、なんという神業ッ!! 背後から迫るタントラス選手のシールドを右足の後ろ回し蹴りで引き剥がしながら、続く左足で彼自身を蹴り飛ばしましたッ!! 一撃必殺ならぬ二撃結殺!! この男、剣を持つ必要があったのかぁぁぁ~~~ッ!?』

「……」


 ヴァルナは今の攻撃を誇るでもなく、最初から興味がなかったように視線をバジョウに向ける。

 ただ戦い、ただ勝利するという意識に一切の揺らぎを感じない両眼。


「……しかしッ!!」


 背後にはヴァルナに泣かされた哀れな少年、カダインがいる。

 己を奮い立たせ、バジョウはヴァルナに斬りかかった。


「つぇぇぇぇいッ!!」


 気合一閃。

 生木を割り燕をも斬るその一刀はしかし、するり、とヴァルナの横にすり抜ける。

 否、余りにも手ごたえが自然過ぎてそう錯覚しただけだ。

 実際には完全に見切られた上で、剣に受け流されている。


(まずいッ)


 全身に奔る悪寒。

 この態勢、この状況を一秒でも早く立て直さなければならないと直感したバジョウはそのまま前に飛び出すように転がる。瞬間、背中をボヒュッ、と音をたてたヴァルナの蹴りが掠った。


 転がりながら更に弾かれるように飛ぶと、直後に自分の胴体があった場所を震脚が貫いた。余りの威力にバキキッ、と床に亀裂が入る。転がりながらなんとか剣を掲げたときには、既に眼前に迫っていたヴァルナの刃が振り下ろされていた。

 ギィンッ!! と刃同士がぶつかったと思った瞬間にはヴァルナの剣は離れ、斜め下から逆袈裟に刃が放たれる。その狙いを咄嗟に察知したバジョウは、容赦のない追撃に何とか抵抗する。


「武器弾きッ!? させるかぁッ!!」


 脇差を抜いたバジョウはヴァルナの剣をそちらで受けた。咄嗟の構えだったこととヴァルナの剣が余りに重かったこと、その二つが重なって体ごと弾き飛ばされる。


 しかし、バジョウに驚愕の感情はない。最初から受け止め切れない可能性を考慮し、敢えて脇差を緩く構えていたことが功を奏した。ただそれだけだ。

 衝撃に体を任せて飛び、やっと完全に態勢を立て直す。


 怒涛の追撃は突風の如く、刃の威力は烈火の如く。

 さりとて今のヴァルナはその激しさを感じられない、驚くほど静かな佇まいでゆっくりこちらに歩み寄ってくる。その林の如き静けさを乱したのは、選手ではなくギミックだった。


 ガコォンッ!! と音を立ててステージ下が開き、長さ十メートル近くの『く』の字型の柱が迫り出した。くの字に曲がった部分がステージと水平になる。


『おおっと、ここでステージギミック!! ステージ上を回りまくって選手をステージ外に叩き落とす、スピニング・ワイパーだぁッ!! これは大量脱落の予感ッ!!』


 ステージの殆どが範囲に入るほどの柱が急速回転して、ステージ上の選手たちをなぎ倒さんと襲い掛かる。

 戦いに夢中になっていた者、重装備で動きが鈍かったものは次々に弾き飛ばされステージ外に落ちていく。残った者も安全圏である中央でおしくらまんじゅうを始め、中央は逆に危険と判断した者は回る柱を飛び越えて身の安全を図る。


『選手という名の障害物を次々に排除するスピニング・ワイパー! 残り選手は十名を切りました! なお、ワイパーの上は特例的にステージ内とします!!』


 棒を飛んで躱しながら、そういえばカダインは無事かと視線を逸らすと、妨害するワイパーの回転の中心点であるくの字柱の折れ目に彼は立っていた。目を回さないよう必死に狭い足場で体を逆方向に回転させることで平衡感覚を保っているようだ。


 だが、遅れてバジョウは気付く。

 先ほどまで戦っていたヴァルナの姿が周囲にないと。


「……お、おい!! ヴァルナの野郎が中央のセーフゾーンに来るぞ!!」

「何て野郎だ、ワイパーとワイパーの上を飛び交ってやがるッ!!」


 回転するワイパーの位置を正確に予測し、時にワイパーに着地しながらヴァルナは稲妻のように中央に走り、そして自らの剣と同時に鞘を腰から引き抜いて十字に交差させる。


「数減らしとくか」


 一瞬だった。


 あと数メートルあると思った距離に一瞬で踏み込んだヴァルナは、剣と鞘を流れるように巧みに操り、セーフゾーンにいた選手を次々にワイパーのある方向へ叩き出す。密集しているがゆえに抵抗も碌にできなかった選手たちは次々に床に転がり、そして柱に弾かれて場外へ次々に転がり落ちていく。


 更に中央を全滅させたヴァルナはそのまま非安全地帯に飛び出し、柱を飛んで避けていた選手を横っ面から攻撃する。事態に気付いた選手はなんとか抵抗するが、ヴァルナは狡猾だった。


「こいつ、ワイパーに追走してッ!?」


 ワイパーがくれば躱さなければ落とされるため飛ぶしかない。

 しかし飛ぶと、ワイパーの後ろを走って迫るヴァルナの的になる。

 驚異的な瞬発力と持久力が生み出す埒外の戦法だ。


『ステージギミックを妨害ではなく敵を追い詰める道具として利用してるのかッ!? ヴァルナ選手、なんという機転の早さ!! ここ連日大乱闘で無双したシアリーズ選手にも匹敵するペースだッ!! もはやここは彼の庭なのかぁぁぁーーーーッ!?』


 恐ろしく正確でありながら敵を薙ぎ倒す『華』を感じる絶対的な強さ。

 ワイパーの回転開始から僅か数分、そこは王国筆頭騎士の狩場と化していた。


『残り選手三名!! 王国騎士ヴァルナ、列国の武人バジョウ! そして誰が予想したか、ある意味闘技場のアイドルと化しているカダイン少年ッ!! ステージギミックもそろそろ停止する中で、勝つのは一体どの選手だぁぁぁぁーーーッ!?』

「はぁっ、はぁっ、くっ……」

「……」


 ヴァルナはあれだけ派手に動き回っているにも拘らず、動きが鈍る気配なくこちらを見つめている。ギミックが発動していた時に攻撃されなかったのは恐らく、単純にバジョウが近くにいなかったからだ。


 どれほど戦っても、勝機が見えない。

 まるで不動の山に挑まんとしているかのようだ。

 じりじりと近寄るヴァルナを前に、間合いに入ったら負けると足が下がり、ステージの淵に届く。それでも、幼いカダインの為に負けてはやれないという義心だけがバジョウの背中を押していた。

 ギミックはゆっくりステージを離れて格納されていく。


 逃げ切れない場所、構える二人。そして――。


 ステージが揺れ、中央から割れた。


「な、何だッ!?」

「ちっ!」

『これは珍しいステージギミック、ハーフアンドハーフだぁぁぁーーーッ!! ステージが半分ずつ沈んでいく完全終盤用ギミックッ!! 否が応でも勝負が決まるッ!!』


 その瞬間、バジョウの脳裏に勝機が閃いた。


 カダイン少年は既に安全圏に走って避難し、そしてヴァルナとバジョウは沈みゆく方のステージにいる。


「悪いが……道ずれにさせて頂くッ!!」

「何ッ!?」


 バジョウは武人としてヴァルナに大きく劣っていたかもしれない。さりとて、彼も脚力と瞬発力を全力で振り絞れば、一瞬くらいはヴァルナの速度に追い付ける。腰を屈めて地面を蹴り飛ばしたバジョウは、無事なステージに飛ぼうとしたヴァルナの腰を両手で捕まえた。


 もはや武器はない。

 こうなれば彼を道ずれに負けることが、カダインに報いる唯一の道だ。


 こうして、無事なステージの上にはたった一人の狡猾な少年――いや、少年という年齢ですらない男だけが残った。


「……や、やった? やったぁぁぁぁーーーー! 怖い人が落ちたぁ! ありがとうバジョウさんっ!! ボク絶対お礼しに行くデスぅ!!」


 残されたカダインはいかにも子供らしく可愛らしい素振りで飛び跳ねて見せ――。


「そう言わず、今すぐお礼してやったらどうだ?」


 その背後に、バジョウに胴体を掴まれたまま跳躍してステージに着地したヴァルナが見下ろしていた。




 ◇ ◆




 腰を掴まれたときは流石に少し戸惑ったが、よく考えたら俺の脚力なら人ひとり抱えての跳躍にさしたる問題はなかった。というわけでステージ上に登ってみると、カダインが完全に勝利ムードだったので話しかけてみた訳だ。


 俺を捕まえる為に武器を手放したバジョウは丸腰。

 俺は武器を持って健在。

 そしてカダインは、そもそもそんなに強くない。


 つまりこの戦い、もはや勝敗は殆ど決した。


「すまない、カダインくん。俺にはこの男を止められ……」

「……んだよ」

「え?」

「何なんだよテメェよぉ……ッ!! あんだけ自信満々にやってきたのに押されまくってるし足引っ張るくらいは役に立つかと思ったらそのみっともねぇザマ……ッ!! マジでクソ役立たずだなテメェ……ッ!!」

「な……え?」


 一度期待したが故にそれが覆されたのが余程腹立たしかったのか、もはや幼児演技も捨てて盛大に不快感を露わにしたカダインは堂々と悪態をつく。

 今まで純真な幼子だと思っていた少年の豹変ぶりにバジョウは言葉を無くしていた。ちなみに、これまたギリギリステージ外には届かない声とタイミングである。この期に及んでおおっぴらに大衆の顰蹙ひんしゅくを買いたくないようだ。


 俺は一度ため息をつき、体に抱き着くバジョウの手を解いて教えてやる。


「そいつはルヴォクル族って言って、成長しても見た目が幼い種族なんだよ。中身多分おっさんだぜ」

「じゃあ、俺は……騙されてたのか?」

「ご愁傷様」

「おい何だらけてんだよ! ブシだか何だかに二言なしって言ってただろ! せめてソイツの足もう一回引っ張るくらいは役立ってから負けろやッ!!」

「こっ、こんなのを信じてたのか俺はぁぁぁぁーーーーーッ!!」


 本性を隠そうともせず罵詈雑言を吐き出す彼に、もはやバジョウが助けたいと思った純真さの面影はない。失意の拳を床に叩きこむバジョウに、俺はなんと声をかければいいかイマイチピンと来なかった。

 悲しい事件だったと言うべきか、見る目なさすぎと言うべきか。よほど裏切られたのがショックだったのか、バジョウはそのまま戦闘を放棄。ステージ縁に座って頭を抱えて項垂れた。


 突如仕事をクビになって何もかもが嫌になった無職みたいな哀愁を漂わせるバジョウを背に、俺は「野郎ぉタマ取ったらヴォケェェェェッ!!」と叫びながら槍を携え突っ込んでくるカダインの背後に回り込み、尻を蹴り上げた。


「ホゲぇッ!?」

「ま、一発ぐらいは痛い目見るんだな」


 痛みに悶絶したカダインはそのまま転がりステージ縁に辿り着く。ギリギリで縁を掴んで落下を防いだカダインだが、武器は失い支える手に段々と力が入らなくなっていく。

 逃げているだけとはいえカダインも相応に消耗していたようだ。


 落ちそうなカダインの隣には失意に項垂れるバジョウがいるが、助けるどころか目線すら向けない。気付いたカダインは今更猫を被って懇願を始める。


「ね、ねぇお兄ちゃん! お願いだから助けてデス!! ボク、このままじゃ悪い騎士に虐められて負けちゃうデス! い、今こそ立ち上がる時デスよ!?」

「……」


 ちらりとカダインの姿を見たバジョウは、はぁ、とため息をつく。


「俺って人を見る目がないのかなぁ」

「おいィ! あ、いや、モシモーシ!? 助けて……助け、助けろやゴルゥアッ!! なにボーっとしてんだファッキンシットォッ!! ああ、手に力が……!」

『おおっとぉ! ここでハーフアンドハーフギミック第二弾!! 半分になったステージがさらに半分、四分の一になっていきます……が、どうしたことか!? カダイン選手は落ちかけのまま、バジョウ選手は戦意を失ったように沈み続ける~~~ッ!!』


 観客の一部、特にバジョウのファンたちが猛烈に応援しているが、もうバジョウの耳には届いていない。彼はどうやら思いのほかメンタルが強くなかったようだ。うちの騎士団にスカウトしても長くは持たないな。


『ゆっくりとフェードアウトしていく二人! それを物悲しそうな目で見送る騎士ヴァルナ!! いったい三人の間にどんな人間ドラマがあったというのでしょう!! 沈没船を見送る救難艇の生存者の如きフィナーレと共に、ここで試合終了ぉぉぉぉーーーーーーッ!!』


 大乱闘マッチ――確かに楽しいと言えば楽しい戦いだったかもしれない。襲い来るギミックをどう利用すれば相手を倒せるか考えるのはそれなりに刺激になったし、対戦相手を次々に蹴散らしたところは全体的には大盛り上がりで途中から客の大半がカダインのことを忘れていたらしい――と、これはアストラエから後で聞いた話だ。


 しかし、戦いを勝ち残った俺の心に残るのは虚しさだけだった。


「何なんだ、この一千ステーラ払って出てきたもの食べたら三百ステーラ分くらいの味しかしなかったみたいな釈然としない充足感の欠如は……」

「ま、いいんじゃないかい? バジョウという男も相当出来るようではあるが、君に勝てる程ではないと見たよ」

「あいつもあいつで可哀そうな奴だ。なんていうか、別に間違った事はしていないのに世知辛い思いをすることってあるよな」


 道行くお年寄りに荷物を持ちましょうかと声をかけたら「年寄り扱いするんじゃないよクソガキがぁッ!!」と怒られた若き日の事を思い出した俺は、しみじみと世の生き辛さを嘆いた。ちなみにその年寄りの荷物を巡ってその後ちょっとした騒乱があったりもしたのはいい思い出だ。セドナのスニーキングスキルの高さが判明したのもあの件だったな。


「あったなそんな事件も……最終的に僕らも頑張ったのに、褒められたのはセドナだけで僕らは『若い男が女の子に遅れて情けない』とか謂れのない文句をつけられ、その日は考えるのが嫌になってシャワーも浴びずに寝たものだ」

「ああいうとき、男は損だよ……」


 互いに思い出すのも嫌になり、ため息を一つ。

 癒しが欲しい。割と切実に。差し当たってはマスクド・アイギスもといセドナの試合でも見に行こう。ついでに絢爛武闘大会に優勝したら何か癒されるものが欲しいな。後で受付メッセージ箱に投函しておこう。

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