第十章 遥か空を仰げば

第152話 苦くて酸っぱい思い出です

 討伐の翌日、補給とオークの死体処理も兼ねて王立外来危険種対策騎士団はラードン丘陵という場所に向かっていた。ラードン丘陵は騎士団の訓練地の一つであり、常設の砦が存在する。また地方から王都に繋がる道に沿って街道が出来ており、騎士団全体の補給拠点ともなっている。


 また、この砦はテイムドワイバーンを所持し『空路』という新たな道を作ろうとする聖天騎士団の管理する土地だ。聖天騎士団は元を辿ると古くから王国を支えてきた貴族とは違って別の国からやってきた貴族が中心となっており、思想の違いから全聖騎士団の中で唯一王立外来危険種対策騎士団に対して公平な扱いをしてくれる。


 公平という言葉を逆に捉えれば、利害関係上どことも敵対せずに世渡りをしているので完全な味方という訳でもない中立的な立場ともいえる。こちらに有利な事も不利な事もしうるので、手放しで協力し合えるほど仲がいいわけではないのだ。

 言わずもがな、平民を猿か何かと勘違いしていそうな他の聖騎士団に比べればマシというだけで、内心では何を考えているか分かったものではない。


 俺としては聖天騎士団との接点と言えば御前試合で戦ったあの男、遊撃隊筆頭騎士ヴァン・ド・ランツェーとちょっと会話したくらいである。自分の娘と政略結婚させようと勧めてきたあのひげジジイの同類は、もしかしてここに居たりするのだろうか。婚約者として差し出そうとした次女にいらんこと吹き込んでそうで会うのが怖いな。


「……では、オーク肥料の引き渡しと三日間の滞在、及び補給の手続きは以上で終了です。いやぁ、良質な肥料のお陰で田畑が少しずつ拡張出来ててありがたいですよ」

「いえいえ、互いの利益になっている分だけお互い様です」

「そう言ってもらえると有難い。では任務の疲れを癒していってください」


 当たり障りのない会話で砦の係官と手続きを済ませるローニー部隊長。ここで他の聖騎士団なら出会い頭に罵倒したり、「おやぁ? 島流しになったローニーくぅ~~んじゃないですかぁ!」と笑顔で嫌味トークを連発するか、補給内容が残飯とかになるか、滞在場所が倉庫の横になったりする。

 何なんだ、奴らの人の労働意欲を削ぐ能力の高さは。


 こんな思いをするくらいなら自分の勢力の砦が欲しくなるが、砦の管理は聖騎士団の専属公務だ。その不均衡にひげジジイがケチをつけ、王立外来危険種対策騎士団は王立魔法研究院から優先的に支援を受けられるようになってる。たまにはジジイも役に立つな。


「……ときに、そちらの部隊にはファミリヤ使いと魔物研究の専門家がいらしましたよね?」

「ええ、いますよ。尤も魔物研究と言うにはオーク特化ですが……何かワイバーンの事で困りごとですか?」

「少し、ね。我々の側にもファミリヤ使いと研究者はいるのですが、他の人の意見も聞きたいということでして」

「話を聞きましょう。内容如何では力になれそうです」


 ここで「困った時はお互い様!」などと二つ返事で回答してしまうと後で金が絡んだ時にタダ働きさせられるのが聖天騎士団の油断ならない所、とは部隊長がここに来る前に言っていた事だ。彼らはそういう商人的な気質があり、前の所属でも何度か引っかけられたらしい。 


 ちっ、引っかからねえかなどと内心で思っているだろうに顔に一切出さない係官によると、こうだ。

 このラードン丘陵はテイムドワイバーン騎乗の基礎の基礎を学ぶ訓練場でもある。しかし最近、今年からワイバーン騎乗を許されたとある新人の担当するワイバーンの体調が思わしくなく、訓練でも動きがおかしいという。しかし病気の線を探ってもこれといった異常は見つからず、また大型の魔物であるワイバーンは魔法耐性が強めなのでファミリヤ技術による意思疎通も判然とはしないのが現状だという。


 その後はノノカさんの勤務外労働についての話、ファミリヤ派遣による追加給金の支払いの是非とどちらが金を出すか、そして派遣後の仕事の結果が思わしくなかった場合も金銭の支払いをするかどうかなど、多方面にわたるお金の押し付け合いトークが繰り広げられ、最終的に条件は半々くらいに落ち着いた。

 流石は元エリート騎士。隙らしい隙を与えず綺麗に話を纏めるローニー隊長の手腕に、最後は係官も苦笑いだった。


 砦を出て街道を歩きながら騎道車に向かっていると、遠くでワイバーンの特徴的な遠吠えが聞こえた。悪天候でも数キロ先まで届くという独特な重低音は、空路で侵入しようとする外来魔物を遠ざける効果もあるという。


 外来種を以て外来種を制す。

 一時期取り沙汰された議論だったが、どっちも敵になったら誰が責任を取るのかという話になった時点で話はストップしたそうだ。俺の予想では取らされるのは王立外来危険種対策騎士団である。王国議会に責任を押し付けないという選択肢はない。押し付けた先が沈むと自分たちも足を引きずられるという危機感がないのが王国七不思議だ。


「にしても、ああいう場での交渉が堂に入ってますね、隊長。昔取った杵柄って奴ですか?」

「そりゃもう。聖靴騎士団は一種の外交組織みたいなところもありますしね。ちなみに頑張ればもう少し条件を絞ることも出来たんですよ?」

「え? あれでも、ですか?」

「立場的には、こちらが断れば向こうは何も言えないですからね。しかし厳しい条件を圧しつけ過ぎると心象が悪くなるでしょう? 付かず離れずの関係が一番いいのです。そのために、こちらも一定の部分では多めに譲歩しなければいけない」


 ひげジジイの交渉に慣れ過ぎたせいだろうか、交渉というものはとにかく絞れるだけ絞るのが理想だと思っていた俺は虚を突かれた気分になった。

 成程確かに、ジジイと交渉した相手の大半はもう二度とジジイと喋りたくないという面をしている事が多い。敵が相手ならそれでもいいだろうが、中立者に喧嘩を売るような真似をすれは後々に響くのはあり得る話だ。


「大人の世界だなぁ」

「ヴァルナくんはまだ騎士三年目ですから、これから学んでいくことでしょう。今はまだ周囲を見て学ぶ時期です。焦らずゆっくり行きましょう。取り合えず今回は、ノノカさんとキャリバンくん達を連れて竜小屋に向かってください」


 今まであまり頼れる印象のないローニー隊長だったが、こうして立場が変わるとやはり頼るべき先達であることを思い知らされる。偉くなるのも悪い事じゃないな、と思った俺は、そういえば両親に出世の話を伝えていなかった事を思い出した。


(今日の仕事が終わったら書くか。今日はツイてる日、偶にはそれもいいだろ)


 根拠のないポジティブシンキングも偶にはいいものだ。

 今なら運命の女神の労をねぎらえる気がする。




 ◇ ◆




 王国内に正式な手続きを経て持ち込まれた唯一の魔物――それがテイムドワイバーンだ。


 ワイバーン野生種と元は同じ種であるが、昔から「竜騎士」という特殊な職業が存在した大陸にて品種改良を経たテイムド種は野生種より気性が穏やかで、オス同士の争いで使われる角は退化して短くなり、代わりに翼の力は野生種より強いという。


「それを間近で見るのは強気なプロにとってもいい勉強になるかなぁと連れてきてみたっす」

「ヴルルルルルルル……」

「相変わらず勇ましい顔してるが、なんて言ってるんだ?」

「ビ、ビビッってねーし。これは武者震いだし……と震え声で言ってるっす」


 ワイバーンの様子見の為、俺はノノカさんとキャリバンを伴って竜小屋に向かっていた。キャリバンの横には今日も今日とて顔が怖いが内心ビビってるらしい狼ファミリヤのプロ、そして後ろに荷物持ちロリコン野郎ことベビオンが着いてきている。ノノカさんに持たされた荷物が思いのほか重かったのか、既に無駄口を叩く余裕もないとばかりに必死で俺たちの歩幅に合わせている。


 ちょっと速度を合わせた方がいいのでは? とも思うが、ノノカさんがガンガン進むせいで俺は速度を緩められない。ドSなのか、それともベビオンへの期待の証なのか。第三の可能性である「そもそもベビオンが眼中にない」という予測に、俺はそっと蓋をした。


 それはそうと、ワイバーンである。

 テイムドワイバーンは聖天騎士団が凱旋に連れてくるのは選りすぐりの数匹程度なのでお目にかかれる機会が極めて少ない。その原因はいくつかあるが、最大の問題がワイバーンの強烈な威圧感だ。

 木っ端とはいえ流石は竜の系譜、確かにワイバーンは貌もその図体も恐怖の対象だ。俺も間近で見たことはそれほどないが、あの厳つさは敵として相対すればオーク以上の恐怖となる事は想像に難くない。


「まぁビビるよな。だってテイムドワイバーン座ってても高さ二メートルはあるし、尻尾から首まで合わせたらデカイので五メートルだぞ? カルメは見たくもないと全力拒否して部屋に籠ってるし」

「ばうっ」

「臆病風に吹かれた小娘だ、と言ってるっす。完全に雌だと思ってるっすね」

「男の筈なんだけどなぁ……」

「ばうわうっ」

「あんなものは、たとえ股座に何がぶら下がっていようと雌同然、との事っす」


 狼畜生にヒエラルキー下位だと思われている騎士とはいいのだろうか。もしかしたらクーレタリアでカルメが野犬を射殺したのはプロへのストレスによる腹いせだったのかもしれない。

 ストレスそのままにプロが射殺されなければいいのだが。


「ノノカさんはテイムドワイバーンは?」

「見たことくらいはありますし基礎知識はありますけど、生憎ワイバーンは研究者がそれなりに多いし家畜化が進んでいるので、そんなに面白くなさそうだったんですよねぇ……」

「という事はノリ気じゃない?」

「若いころはそうですね。でも今はそれなりに興味もありますし、今回の問題の原因究明がいつかオーク研究と結びつく経験になるかもしれないでしょ? 異なる視点、異なる知識は積極的に得ていきたいんです!」

「さ、流石ノノカ様……その志の高さに、このベビオン敬服しまし……んぐぐぐっ」

「あ、ゴメンねベビオンくん。ちょっと早く歩きすぎちゃったカナ?」

「お気に……なさらず! このベビオン、これしきの荷物に苦戦する程、軟ではありませ……」

「あ、そう? じゃ、気にせず歩くね~♪」


 苦しそうに話すベビオンにペコっと可愛らしく頭を下げたノノカさんは、相変わらず長いソコアゲール靴でとっとこ先に向かっていった。もちろんベビオンの歩幅になど見向きもしない。


 ノノカさんにも気遣いはあるが、忖度はない。

 他人の意見は聞くが、あくまで優先するは己の好奇心なのでそういうところは容赦がない。結局竜小屋に全員が辿り着いた頃には、ベビオンは喋れないほど息を切らして壁に凭れ掛かり、ノノカさんの「偉いゾっ♪」を貰っても曖昧に微笑むだけで動こうとしなかったという。強く生きろ。



 初めて訪れた竜小屋は、小屋という言葉の意味が風に飛ばされたような大きさだった。

 本部にある騎道車の格納庫より更に巨大で、いっそ体積だけなら本部そのものと同じぐらい大きいかもしれない。下はドーム状の建物に見えるが、上の屋根は四角形であり、その四方に大きな隙間が空いている。隙間の下に足場らしきものがあるのを見るに、どうやらワイバーンの出入り口らしい。他にも大型の昇降機や上部の風車などがあり、その不思議な構造には圧倒されてしまう。


 これが、ワイバーンを飼うという事なのだろう。

 広い土地があるラードン丘陵だからこそ可能なもので、きっと王都では不可能だ。

 もし日常的に王都の上をデカイ魔物が飛び回っていたら、それは市民にとっては恐怖の対象ともなり得る。それにワイバーンが一度吠えると都内の動物たちは一斉にパニックを引き起こすだろう。また、小屋が狭いとワイバーン自身の体調維持も大変だ。そうした事情を全て汲めば、こうなるのだろう。


 そもそもワイバーンは今でこそ空路研究に駆り出されているが、元は国境沿いのドンパチを想定としていた遊撃戦闘用だ。竜種の特徴の一つである強力な火炎放射(ブレス)も王都防衛では余計な被害を増やすだけだ。


 ここの責任者だという人物、聖天騎士団の騎士バネウスは俺たちの到着を歓迎した。


「ようこそノノカ教授! それに騎士団の皆様方も! しかも騎士ヴァルナも一緒とは嬉しいですね~!」


 頭がかなりチリチリのボサボサで垂れ目なためにどこかお気楽そうな印象を受ける男性だが、背中に抱えた槍らしき長物が彼の本業を示している。刃の部分を布で覆っているのは聖天騎士団特有のやり方なのだろうか。


「あ、これですか? これは棒の先に布を括りつけて綿棒みたいにしたものです。これで翼の付け根をゴシゴシするとアイツら喜ぶんですよぉ。喜びすぎてブレス吹きつけられたので髪の毛がこんなことに! あーっはっはっはっはっは!!」


 訂正、この人の本業はやっぱり戦士ではないかもしれない。俺たちを見てすぐに狼のプロの存在に気付き「お手!」と手を出し、平然と噛みつかれている。尤も革製の分厚い手袋をしているので痛くないようだが、プロはそのままハグハグ噛み続けていた。


「おおっ、これは噂に聞く甘噛み! いやー分かっちゃうかー僕の動物に対する深い深ーい愛情が!」

「いえ、丁度いいから歯磨き代わりに噛んでるだけっすね。俺がプロの歯磨きに使う手袋と繊維がよく似てるみたいっす」

「……」

「……」


 微妙な空気が流れたまま、ひとまず休憩室らしい場所に案内された。ノノカさんはまったく気にしていなかったが、流石にバネウスさんは荷物持ちのベビオンの体力が限界であることくらいは悟っていたようだ。


 さて、休憩がてら話を聞いた状況を整理する。

 大筋の流れは砦で聞いた部分に合致するが、ここでは詳細を知ることが出来た。


 今年度よりワイバーンでの飛行訓練を始めた一人の訓練生とワイバーンがいるのだが、そのワイバーンが訓練中どうにもフラフラするのだという。訓練生にはきちんと調教したワイバーンが回されており、その訓練生に宛がわれたワイバーンも勿論そうだ。


 様子がおかしいと訓練を中断して竜小屋で体調を調べると、これが何の異常もない。小屋に戻った頃にはワイバーン自身もけろりとしている。そしてもう一度飛ばせると、またフラフラする。単に調子が悪いだけかとコンディションを整え直しても同じ事は繰り返され、挙句の果てに訓練生の騎乗を嫌がり始めてしまった。


 これには教官も困り果てた。

 もしやワイバーンと訓練生の相性が悪いのかと思いワイバーンの変更を提案したものの、ここで訓練生がそれを拒否。ワイバーンはワイバーンで悪い飛行癖がついたのか別の騎士が乗っても飛び方が安定しなくなり、休ませているという。


「あの、いいですか」

「何でしょう、騎士ヴァルナ?」


 恐らく他の面子も気になっているであろうことを質問する。


「訓練生がワイバーン交代を拒否したそうですが、それは規律的にはアリなんですか?仮にも目上の人間の命令でしょうに」

「もちろん本来は良くないですね。強制的に交代を執行することも可能です。ただねぇ……その訓練生ちゃんが、結構な名門家なんですよ。しかもうちの騎士団の系譜に連なってなくて、なおかつ顔色を伺った方がいい感じでして……上の上が渋るんです」

「あぁ、そういう事……ったく、話を拗らせるのはいつも偉い人だよ」

「なははは、我が上司の事なんで僕としてはノーコメントで」


 苦笑いするバネウスさんのその態度が答えと言っていいだろう。

 要はセドナやアストラエが特別待遇されるのと同じ理由だ。

 件の訓練生の家系はかなりの要職、或いは莫大な資産を持っているから機嫌を損ねたくないのだろう。もしワイバーンを変更した結果、原因が訓練生側にあったなどと判明『してしまえば』、恥をかかせることにもなる。


 原因を速やかに究明し、出来る事ならワイバーンのせいにしたい。そうでないなら秘密裏に原因を取り除いて何事もなかったかのように訓練を再開させたい。概ね、そんなところだろう。

 何となく胸糞悪い気分になるが、そんな俺の事などお構いなしにノノカさんが身を乗り出す。


「ノノカとしてはワイバーンの研究が出来れば後のお偉い人たちの話はルガー団長にでも丸投げすればいいと思いますので、早速ですがワイバーンの所に向かいましょう!」

「うーん、俺としてもノノカさんに賛成っすね。まずワイバーンの心配からで、他の雑事は後で偉い人に考えて貰いましょう」


 キャリバンも内輪の話には興味がないのかノノカさんに賛同する。あいつの場合、優先順位の問題だろう。すぐ近くで苦しんでいる命がいるならそちらを優先する。まるで正義感の強い医者みたいだ。

 やっと体力が回復したベビオンもノノカさんに賛同した。


「俺はノノカ様に全面的に賛同します! なぜならノノカ様の言葉は全て正しいから!」

「思考停止したカルト教団みたいだなお前。ま、ここでまごついていても始まらないか……バネウスさん、こちらの意見は一致しました」

「イヤー皆さん話の分かる人達だ! 私としてもワイバーンが悪く言われるのは嫌ですし、どちらにしろ原因究明は必要なので! ではでは、可愛いワイバーンたちの所に早速案内しましょう!」


 やけに嬉しそうなバネウスさんが立ち上がり、俺たちも席を立った。

 と、ノノカさんが口を開く。


「……時にバネウスさん。訓練生ちゃんって言ってますけど、もしかして訓練生ちゃんは女の子だったり?」

「はい、お美しい方ですよ? ちょっと性格がツンケンしていますが。名前はですねぇ、ネメシアさん。ネメシア・レイズ・ヴェン・クリスタリアさんです! 午後三時くらいに呼び出していますので、彼女に聞きたいことがあったらその時にでも――」


 俺は、竜小屋内部と反対の外に出るドアに直行した。


「失礼、俺は用事が出来たので帰らせていただきます」

「――あれぇ!? 騎士ヴァルナ!? さっき協力しよう的な雰囲気だったのに!?」

「ちょ、先輩!? 突然どうしたんすか!! いくら何でもフリーダム過ぎるっすよ!?」


 ドアを開けようとする俺をキャリバンが必死で止めるが、そんな事は関係ない。

 俺は今すぐ騎道車に戻ると決めたのだ。誰がワイバーンの事など気にするものか。


「邪魔するな! ネメシアに会うくらいなら俺は帰る! 帰ってカルメと一緒にオセロして遊んで時間を潰す! ノノカさん後の事は任せた!!」

「あらヤダ吃驚するほど強硬的!? いったいネメシアさんとヴァルナくんの過去に何が!?」

「……そういえばネメシアさん、騎士ヴァルナとは同級生でしたっけ?」

「そうだ! そうですよ! 士官学校時代俺にしつこく絡んで罵倒してきた奴らはいますけどね、ネメシアのしつこさと面倒くささといったらもうオルクス以上!! これから会うとか無視すればいいのに絶対また当たり屋よろしく向こうから絡んでくるじゃねーか!! もう嫌だぞあいつと顔を合わせるのはッ!!」


 今日くらいは良いことがあると信じていた、信じたかった。

 だが、嗚呼。結局俺はそういった星の巡りの下に生まれた男だった。


 ネメシア・レイズ・ヴェン・クリスタリア。

 何を隠そう彼女こそ、俺が士官学校時代に一番苦手にしており、更に言うとあの温厚なセドナと犬猿の仲で取っ組み合いの喧嘩までしていた高飛車お嬢様である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る