第56話 勝負の後は仲直りです
戦いを生業にする人間には、一種のスイッチがある。
日常から非日常へ、待機状態から戦闘状態へ。このスイッチはもちろん物理的な話ではなく心の話である。このスイッチがあると、さっきまでふざけたことばかり喋っていた男がオーク襲来の知らせを受けた瞬間に急に的確な判断を下し始めたりもする。
ノノカさん達研究院では「やる気スイッチ」とも呼ばれるそれを自在に発揮できるようになった時、人は今までより一歩進んだ存在となることが出来る。尤も、スイッチを覚えた途端にオンオフの落差が激しくなってしまう我らが王立外来危険種対策騎士団のような存在もいる訳だが。
そんなスイッチをオンに設定した俺は、雪で作った数メートルの壁の合間から一瞬だけ向こう側を垣間見る。瞬間、あちら側から無数の陰が飛来して顔面スレスレを数発通り過ぎた。狙いのきわどさに思わず息が漏れる。戦闘態勢でなければ当たっていたかもしれない。
「どうだ!?」
「クソッ、寸前で避けられた!」
「落ち着いて追い詰めろ! どうせこの状況では碌に動けまい!」
物体の正体は雪の塊だ。当たってもそれほど痛くはないと思いたいが、雪玉に込められた熱意のようなものに圧されて必要以上の動きで避けてしまう。安全地帯である雪柱の裏に滑り込んだ俺に、先客が震えた声をかけてくる。
「ど、どうでしたか先輩!?」
「こっちが後三人しか残ってない事を知ってか、全員身を乗り出してこっちを狙ってやがる。かなりマズイぞ」
足元で雪玉を量産していたカルメに少しはいい知らせを伝えたかったが、生憎と状況は最悪である。案の定カルメは「そんなぁ……」と情けない声を上げた。同時に、数メートル離れたところから雪を投げ返そうとした先輩騎士の一人の顔面に雪が直撃する。
「おぶぅッ!? 何であんなにポンポン当てられるんだ!? すまんヴァルナ、後は任せた!!」
「遊撃班四番、雪玉命中により脱落! 速やかに陣地の外に出てください!!」
「へへっ、いくら騎士団でも雪遊びを知り尽くした俺たち相手じゃ役不足だったな!!」
「あれ? 意味的には役者不足じゃなかったっけ?」
「どっちかってーと村には砂糖が不足してんだけど……まぁそれは後にして、敵は残りたったの二人だ! 判定勝ちなんて狙わずにガンガン攻めていくぞ!!」
「おっしゃあああああッ! バーグウォッカは俺らのモンじゃあああああッ!」
審判の判定によって数少ない味方の一人が脱落し、敵陣の士気は鰻登り。
まさか俺たち騎士団がこうも簡単に弄ばれるとは、学力はさておきその実力には偽りなし。きっとほかに娯楽がないから年がら年中没頭したに違いない巧みな戦術は、彼らをものすごく限定的な局面での達人の域まで押し上げていた。
「メラン先輩もやられたとなると、隊は俺たちを除いて全滅か! 遊雪部隊
「うわぁぁぁぁん!! もう時間切れでもなんでもいいから終わってくださいよぉぉぉーーーーッ!!」
何故俺たちがこんな目に遭っているのか。
事は、一時間程前に遡る。
「第一回騎士団雪合戦大会を開催しますっ!!」
料理班副長さんの元気な声が響き、続いてわっと歓声が上がる。
雪も収まってきた頃を見計らい料理班(狩り専門の人たち)と工作班の一部が地元の猟師たちと山に先行したことで、一時的に暇になった騎士団の若い衆の遊びが開幕していた。安定の緊張感のなさではあるが、一応寒さに体を慣らすという名目があるので筋は通っている。
「優勝者にはイスバーグ名産品の一つ、地元の人さえ滅多に買えない最高級品の『バーグウォッカ』を贈呈しちゃうよー!!」
「雪合戦のルールに関しては地元の人が説明する! 大会審判も務めてもらうことになっているので、くれぐれも失礼のないようにしろよー!」
世代にして若者から三十代前半までの騎士たちが再びわっと歓声を上げる。皆もこれほどパラパラな雪で本場の雪合戦を行うのは初めてなので非常に盛り上がっている。対照的に寒さに根負けしたメンバーは騎道車に引きこもって観戦しており、工作班のメンバーは雪彫刻の作成に心血を注いでいた。
……何故か全員ヴィーラの雪像を作成しているのがシュールである。
さて、雪合戦のルールは単純。
雪玉を相手にぶつけられたら脱落し、先に相手を全滅させたチームの勝ちだ。それぞれ複数の雪柱のある陣地が設けられており、陣地の外に出るのは脱落者以外禁止。チキンプレイ防止のために時間制限とテクニカルポイント制――簡単に言うと勝利への貢献度や頑張り、スーパープレイを見せると加点され、動きが少ないと減点されるシステム――が設けられているなど無駄に本格的だ。
一チーム十名、四チームによるトーナメント戦。
遊撃班チーム、料理班チーム、工作班と回収班の混成チーム、そして地元チームを加えて盛大な大会が開かれたのが一時間前の話。
そして一時間後――混成チームを下して決勝に進んだ俺を待っていたのが、地元チームの自称「遊雪部隊DD」の猛攻である。
当初DDは強かったものの、あくまで「流石手馴れてるなぁ」止まりの実力にしか見えなかった。ところが、そんな俺たち遊撃班の予想は大きく覆される事となる。
DDのメンバーは全員が男性だ。そしてDDと最初に当たったのは平均年齢二十歳前半な見目麗しい料理班のうら若き乙女たち。田舎育ちのDDから見れば「都会の女の子」という非常に興味をそそられる存在だった。
早い話、DDメンバーは女性陣の魅力と「女性相手に本気を出すのは格好悪い」という彼らの男女観から本気を出せずにいたのだ。その後「えーい♪」なんてかわいい掛け声とともに飛来する剛速球たちにボコボコにされたことで女性軽視の報いを受けたのだが。
しかし今度の試合では構成メンバーが全員男(――ん?いや、間違いない筈だよな……?)である遊撃班が相手だ。もうDDが手加減をする理由も必要もない。
という訳で、既に残り二名になった俺たち遊撃班の生き残りには、未だかつてない雪玉の猛攻が仕掛けられていた。少しでも顔を出せば命取りとばかりに雪柱に当たって砕けた雪が降り注ぎ、状況はさながら弓矢の降り注ぐ戦場の如くだ。
「初撃で何人やられたっけ!?」
「四人です! あとは数を減らそうと顔を出した人を各個撃破されて、残されたのは反射神経だけで雪玉避けてる先輩と最初から集中攻撃受けててこの場から動けない僕だけですよぉ!!」
「そりゃまた幸か不幸か分からない話だな!!」
なお、彼が集中攻撃を受けている理由はイスバーグ地元の女性陣が試合の合間に「ボク、可愛いのね!」「いくつなの?」「わっ、キューティクルすごーい!」といった具合に彼を包囲していたのが原因だろう。
もみくちゃにされて「助けてぇぇ~~!」と叫んでいたカルメに向けられた殺意はDDだけでなく騎士団からも若干数あったりもしたが、それはいつもの事なのでさて置く。
問題は、限りなく敗北に近い現状で俺たち二人に何が出来るかということだ。
「さぁて、どうするかね……! 別に優勝商品は欲しくもないが、完封されたとあっちゃあ騎士の沽券に関わるし……!」
「いやいやいや! この状況だとどうにもならなくないですか!? 八対二ですよ!?」
数の差は気合で覆すなどという非論理的な根性論を打ち捨てたカルメが涙目で叫ぶ。確かにこの戦力差が覆し難いという事実は否めないが、それでも二人は脱落させているのだし、ここで最後の抵抗を見せればテクニカルポイント差で勝てるかもしれない。
「勝ち目があるなら諦められんな……おいカルメ、どうにかしてここからあいつら狙い撃てないか!? 曲射とか!!」
「無茶言わないでください!! ボウガンとは全然勝手が違うし、第一この猛攻の中じゃ相手の位置が……ふわぁ!?」
頭の上を雪玉が掠め、カルメが尻もちをつく。この間「立派になる!」と意気込んでいた青年と同一人物とは思えない情けなさだ。あと女座りでこちらを見上げてないで立ち上がらんか。手は貸してやるから。
「うう、屈んでたのに当たりかけたぁ……」
頭をさすりながら立ち上がるカルメの姿が見えないのか、DDは審判に判定を仰いでる。
「おい審判!! 今のは!?」
「当たってません!! ノーカンです、試合続行!!」
「ちっ……おら騎士団さんよぉ! 時間切れまであと三分ずっとそこでチキってる気かぁ!? 男なら潔く戦えやぁ!!」
人を大人数で袋叩きにしようとする男たちが何やら言っているが、肝心のカルメは何かに気付いたようにぶつぶつ喋って煽りを華麗にスルーしていた。
「曲射は現実的に出来る技能なんだ……でも曲射しようにも放った球がどこに当たってるんだか分からないことには……そうだ、先輩!
「すぽったぁ? なんだそりゃ、俺に出来るもんなのか?」
「多分! 僕はこれから連中の真似をして曲射を試しますから、先輩はその球がどこに落ちたかを確認し、落ちた場所と敵の場所の位置関係を教えてください! 僕じゃ雪柱から出た途端に狙い撃ちですけど先輩ならどうにかなる。先輩の目を頼りに当ててみせます!!」
「責任重大なこと言ってくれるな……ま、言い出しっぺは俺だし出来る限りやるさ」
こういう時、カルメは驚くほど凛々しい顔を見せる。
決意に満ちた目、希望を見出した目。
そういう目をされると、俺も期待に応えてやろうと思えてくる。
「さぁて、反撃開始と行きますか!!」
「第一射行きます!! 先輩、観測を!!」
逆境からの逆転――反撃の狼煙となる布石の一手。
相手は手練れ、数も上。されどそれは騎士団にとって諦める理由にも負ける理由にもなりはせず、「この程度」と笑って状況を覆すことこそが俺たちの仕事だ。
さぁ、遊雪部隊
王立外来危険種対策騎士団という集団がどれだけしつこく粘り強いかを、その身に刻んでもらおうか!!
……たかがウォッカを賭けたお遊びにそこまで熱くならずとも、と内心で思う俺もいないでもないが。たまには俺だって下らない勝負ごとに心血を注ぎたい時もある。
オークを狩るのは義務だもの。
義務でないからこそ燃える時ってあるじゃない。
俺は内心でアホな事をしている自分を正当化しつつ、カルメの第一投を見届けた。
◇ ◆
最初は、弱々しい最後の抵抗のような雪玉がぱすん、と雪柱の数メートル奥に落ちただけだった。
余りにも情けなくやけっぱちな反撃に、思わずDDメンバーも鼻で笑う。まるで、もう戦えませんから許してくださいという懇願が込められたような雪玉。投げたのは恐らく最初から集中攻撃をしているあの女々しい騎士だろう。
最早厄介なのは先ほどから隙を見て雪玉を投げてくる素早い騎士の男だけだ。
地元民でなければ容易に足を取られるこのフィールドでDDを翻弄する身体能力は認めざるを得ないが、一人だけで戦いに勝つことは不可能だ。
あとは全員で雪柱に隠れた人間を狙うテクニック、曲射の一斉爆撃で仕留めるだけ――。
「目標から右に二メートル、奥に……七メートル半ずれたぞ」
「雪柱の高さは?」
「二メートルって所だな」
「右に二、奥に七少し、射角を修正、込める力を……第二射、行きます!」
――なにやら声が聞こえたと思った瞬間、雪柱に隠れていたDDのメンバーの一人の頭部にぱすん、と小さな衝撃。
「DD隊一番、脱落!!」
「え……?」
何を言われたのか、一瞬分からなかった。
さっきの哀れっぽい暴投では百発投げても命中しないと高を括っていた。
なのに、今の衝撃と審判の宣言は何だ?
頭から感じる冷たい感触は、何だ?
「こーら、一番! 負けたんだからさっさとフィールドから出る! あんまりぼうっとしてると
「ま、まぐれ当たりだ! ドンマイ! あとは俺たちで盛り返すから――」
茫然自失の男を励ますように隣の男が脱落した一番の肩を叩く。
その手に、雪玉がぱすん、と命中して上着から零れ落ちる。
「DD隊五番も脱落!! 遊撃隊、ここに来て驚異の狙撃を見せるーっ!!」
「やべぇ、位置が割れたのか!! 急いで移動しないと……!!」
一番と五番の状態を見てやっと他のメンバーの顔色が変わる。二人と同じ雪柱に隠れていた別の男が慌てて雪柱から別の雪柱へと飛び移る。
その刹那のルートを射抜くように、弾丸のような速度で飛来した雪玉が男の脇腹に命中した。先程二人に命中したそれと違ってかなり硬く丸められた雪玉の一撃に男の息が一瞬止まる。
「ぐあッ……!?」
「DD隊二番も脱落だぁー!! 遊撃隊四番と十番、炙り出し曲射からの見事なスナイプです! 逆境に打ち勝ってこその騎士! この二人、まだ勝利を諦めていないぃぃ~~~っ!!」
「畜生、やられた!! 炙り出しからの狙撃なんて俺たちにとってもセオリーだってのに!!」
「まずい、全員もっと雪柱に体を密着させろ!!」
「TP減点されますよ!?」
「これ以上やられたらTP差は離れるばかりだ! 肉を切らせて勝ちを取る!!」
がなりながら、司令塔である四番は内心で歯ぎしりした。
反撃はないと踏んでいたが故に、一撃目の命中の後にチームの動きと判断力が鈍った。脱落した五番と二番も、雪合戦ベテラン勢から見れば凡ミスの類だ。それを目ざとく突かれた。
いくら雪山素人といえども矢張り騎士は騎士。
戦術さえ割れればきっちり隙を突いてくる。
こうなれば安全策を使うしかない。
(数が減ってこっちは五人、恐らくさっきの狙撃で相手は二人ともTPを稼いでる……生存点四点にTPを多めに見積もって七点、いや八点は行くか? 対してうちは生存点十点、TPは多少減点されても最初優勢だったんだから最低五点はカタい。メンバー一人につき生存点二点、TP一点と仮定すれば、今から一人も当たらなければポイント差で確実に勝てる筈だ!!)
TPは一点からスタートし、活躍に応じてマックス五までの間で増減する。
スポーツマンシップに反する場合はマイナス評価になることもあるが、開幕から攻め続けていたDDは少なくとも試合の支配率で二,三点は持っている筈。脱落すれば持っていたTPは消滅するが、とりあえず全員生き残ればチキンプレイで減点されても全員分で最低五点は手に入る。
ある意味これもチキンプレイだが、時間制限的に試合はもうすぐ終わりである。勝ちを取りに行く身からすれば、これは肉を削って骨を断つ立派な戦術たりうる。DDの戦術にまるで気付いていないように、素早い動きで生き残った騎士たちの声が聞こえた。
「よっしゃ、この調子でもっと撃破だ! 次は左に3.2メートルの所にある雪柱の裏!」
「了解です!! 第四射、行きます!!」
(……おいおい、敵を前に狙う方向を口にするとはサービスしすぎだぜ?)
そこはまだまだ素人か――と四番はにやりと笑う。
考えてみれば最初の攻撃の時から方角を口にしていた事から、雪の裏に隠れた優男はそれを頼りに狙いをつけていたのだろう。しかし曲射が来ると分かっていれば、雪に体を密着させればそうそう当たりはしない。
更に、四番は左右のメンバーにアイコンタクトをして意思疎通する。
(次の一発を凌いだら一斉攻撃だ。攻撃と同時に三番雪柱のメンバーは空白になった二番に向かって、後は当たらなくてもいいから安全圏から投げまくる!)
(なるほどね、了解!!)
(さぁて、いつでも撃ってきなよ騎士団さん!!)
イスバーグスタイルの雪合戦は技術より戦術がモノを言う。迎撃準備は万全だった。後は安全に勝つだけだ。数秒の沈黙のうち、雪玉が雪柱から投げ飛ばされる。全員が一斉に雪玉に当たらないよう雪柱に強く体を押し付ける。
やがて、地面に落下したのを確認したDDの総員が騎士のいる雪柱に集中攻撃を仕掛けた。
「外れだな、次は俺たちの番だ!!」
「オラオラオラ!! やられちまいなぁ!!」
「タイムアップまで封殺させてもら――べふッ!?」
これで勝利は揺らがない――そう思っていたのに、希望はあっさりと崩れ去った。
「あーと、ここでDD十番の顔面に雪が直撃ぃーーっ!! そしてここで試合終了だぁぁ~~~~っ!!」
一人脱落したことで、四番の目算による確実な勝利が崩壊。
しかし、まだ判定次第では僅差で勝てる可能性もある。
DDメンバーが固唾を飲んで見守る中、審判が高らかに結果を発表した。
「当初はDD隊の猛攻に為す術ないかと思われた遊撃隊でしたが、最後の二人による大反撃で一挙に四人を撃破! 非常に姑息な罠と確かな狙撃力、そして信頼とチームワークで優勝したのは………得点十二対十三で遊撃隊だぁぁぁ~~~~~~っ!!」
瞬間、観客たちが一斉に立ち上がってどっと歓声を上げる。
それは、地元最強を謳う「遊雪部隊DD」の敗北と、歴戦の戦士である騎士団の勝利を意味していた。
――開幕時、勝利には絶対の自信があった。
男性だけのチームでやりやすかったし、何よりヘイトを稼いでいるカルメという存在がいたから士気も高かった。実際、試合では終盤まで一方的で、あと二人の所まで相手を追い詰めた時は勝ちが確定したようなものだと内心でほくそ笑んだ。
なのに、盤石だと思っていた布陣が突かれ、崩され、安全策に移った筈が何らかの理由で裏をかかれて逆転敗北。決して騎士を侮っていた訳ではないが、その事実にDD達の脳裏は悔しさよりも「何故?」という疑問ばかりが浮かんでは弾けていた。
未だに現実が受け入れられない十番が顔面の雪を払うと共に悲鳴にも似た抗議の声を上げる。
「何だよ今の!? いつ、どうやって、何で俺の顔面に雪を当てられたんだよ!?」
「俺たちだってそんなの分からないよ! 確かに一発凌いだ筈なのに!!」
「知りたいか?」
「え? ――どぅおッ!? お前遊撃隊の四番!?」
そこには、対戦相手の一人――最も警戒していたヴァルナが立っていた。
後ろには数名の遊撃隊メンバーも立っている。ただしカルメは既に女性陣に捕まって再びもみくちゃにされているようだ。涼しい顔をしているヴァルナに再び女性に囲まれるカルメ……非常に分かりやすい勝者と敗者の構図である。
DDのリーダー格だった四番は、反射的に僻みっぽく叫ぶ。
「な、なんだよ! 俺らを笑いに来たのか!?」
「そんな性根の腐ったことはしないって。そうじゃなくてさぁ、一緒に飲みながらお喋りしない? ……てな話だよ。だいたい俺たち、ウォッカの飲み方なんて知らないしね」
ヴァルナは少々照れくさそうに、優勝商品のバーグウォッカをちゃぷんと波立てて苦笑いした。
「軽く一、二杯ひっかけてさ。なーに、雪玉に関しては難しいコトはしてないんだ。多少アルコールでぼうっとしてても記憶が零れることはなかろうよ」
「え? ……俺たちにもくれるの? 地元の俺らでさえ飲んだことは殆どないあのバーグウォッカを!?」
「優勝商品は何本かあるし、この場の全員で嗜むくらいはあると思うよ。足りなかったらワインでも持ってくるさ」
――初めての相手を理解し、理解してもらうには酒の席が一番。
「お酒はお嫌い?」
「大好物ですッ!!」
前回クリフィアでそんな教訓を得たヴァルナの気軽な誘いに、遊雪部隊DDはバーグウォッカ欲しさにあっさり乗るのであった。
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