第6話 綻び

朝になり少年は目を覚ます。しかしその目覚めは快適とは言えなかった。腹部に酷い違和感があったからだ。手を触れずとも分かる。何かガサガサした物が腹の上に乗っている。しかもそれは服の中、直接肌に触れている。


(まさか、虫だったらどうしよう……)

軽く警戒しながら服の中に手を入れる。するとすぐに、その心配は無用だったと知る。その違和感の正体は紙切れだった。何故こんなところに紙? 自分は一体どんな寝方をしたのだろうかと、一抹の不安を覚えた。


謎の紙切れを取り出してから、少年は身体を起こす。全部で3枚のそれを開いて布団の上に並べてみた。するとそこには日付が記されており、順に並べ直す。それは日記のようだった。それも書いたのは自分。不思議とそれは分かった。


内容を読むと、俄かには信じられない事柄が拙い文で綴られている。まるでファンタジーだ。しかし今の空っぽの自分を思うと、それはえらく真実味があった。


(けどどうして破られているんだろう)

少年は首を傾げる。そこでもう一度ざっと読み返してみた。目に付いたのは最後の一文。絶対に見つかるなとある。この“お姉さん”は、ぼくに本当の事を知られたくないようだ。もしかしたらこの人に日記が見つかって処分されてしまったんじゃないだろうか。他のページがどうなってしまったかは分からない。しかし過去の自分が必死に守ったのがこの3枚だったとしたら。


(……やってみよう)

自分の事も、“お姉さん”の事も調べてみよう。今度は決してバレないように。慎重に。少年は既に消えてしまった過去の自分に誓った。そしてその紙を小さく畳むと、差し当たっては机の引き出しに入れた。また眠る時に腹にでも入れておけば、明日の朝気づくだろう。


机上に視線を移し書き置きを目にする。もうじき“お姉さん”がここへ来ると察した。あまり時間は無い。まず考えるべきは、これからは何に日記を書いていくかという事だった。ここで重要なのは、前回はどのような経緯でバレるに至ったのか。それが分からないままでは対策のしようが無い。しかし何にせよ大きい物や、いかにもと言った物は避けるべきだろう。少年は腕を組み、思考を巡らす。けれどいつまで経っても良い案は浮かんでこなかった。そうしているうち、聞こえてきた音が少年にタイムリミットを報せる。


(帰ってきた)

日記は隠したし、他に怪しい物は無いはず。少年はぐるりと部屋を見渡す。何もない事を確認すると、書き置きの乗った机の前に座り直した。


(自然に、自然に……)

落ち着かせるように胸の内で呟く。


少年は知らない。女と顔を合わせるのに緊張した事など、これが初めてだという事を。既に賽は投げられたのだ。少年の閉じた世界にある日穿たれた小さな傷は、そこから徐々に広がり亀裂となり始めていた。






「じゃあ、使う物準備して来ますね」

少年は女にそう言って物置小屋へ向かった。駆け出す直前、『あの夜』を思い出したのか女は僅かに顔をしかめたが、それには気づかなかったようだ。


午前中のまだ涼しいうちに、共に庭の手入れをする事になったのだが、丁度良い。草むしりでもしながら今後についてゆっくり考えようと思っていた。


小屋に入り、目的の物品を探す。軍手と、バケツと……女に指示された物を探していると、足元に新聞が束になって置かれているのが目に入る。少年の脛程の高さまで積まれた束が二つ、紐で縛られていた。量から見て次の資源ごみの日にでも出すつもりだったのだろう。それを見た少年は考える。これを使えば……。


しゃがみ込んでよくよく見ると、新聞の他にも沢山の広告用紙が挟まっている。その中には片面印刷の物も多くあった。少年はそれぞれの束から、紐が緩まない程度に数枚ずつ抜き取り、小さく畳んでズボンのポケットに仕舞った。それから軍手等を手に取って小屋を出る。思いの外早く最初の目的を達し、意気揚々と女の元に戻った。






外の手入れがひと段落し、冷やし中華の昼餉で腹を満たした後、女が言った。


「今日これから担当編集さんが来るの。外で会うから、留守番してて貰える?」

思いがけない機会だった。少年は頷きながら、緩みそうになる顔を懸命に引き締める。女の話では夕方までかかるかもしれないとの事。彼女は申し訳なさそうにしていたが、少年にとって願っても無い機会だった。


「分かりました」

少年は湧き上がる興奮を抑えて答える。


実は草むしりの最中、ずっと考えていた事があった。敷地の外に出てはいけない、書斎に入ってはいけないという二つの約束事について。前者は少年の事が心配だから。後者は仕事の過程を見られたくないからだと言っていた。しかし一度疑心を待ってしまった今の少年には、その言葉を素直に受け取る事が出来ない。


(何かあるんだ。それを破ったところに、きっとぼくの知りたい事がある)

そんな時、女が長時間家を空けると言うのだ。このチャンスを逃す訳にはいかない。この日は書斎に忍び込むよりも危険度の高い、もう一方を実行しようと決心した。






食器の片付けを手伝った後、歯磨きをしていたところに女が顔を出す。


「そろそろ出るね」

「はい。いってらっしゃい」

うがいをしながら耳をすます。すると程なくして女が家を出たのが分かった。少年は急いで口を拭くと二階に走った。窓から家の周囲を確認する為だ。隠れるようにそっと顔を覗かせると女の姿が視界に入る。それはすぐに曲がり角の向こうに見えなくなった。少し待ってみるが、引き返してくる気配は無い。


「……よしっ」

軽く拳を握ると、意を決して玄関に向かった。


(こんなに簡単なのか)

少年は拍子抜けしたように、たった今くぐったばかりの門を振り返る。今にして思えば言いつけられていると言っても、強く強制されるようなものでは無かった。それなのに今まで一度もこうして外に出た事は無かったのだろうか。暗示にかかっていた訳でもあるまいに、と不思議に思った。


(それだけ信頼してたって事なのかな)

それは自分も女も、お互いに。その人を今自分は裏切っている。そんな後ろめたさを振り切るように、無理矢理足を動かした。


暫く歩くと道が二つに分かれていた。片方は遠くの土手に通じており、その向こうには店が立ち並び人で賑わっている様子が見て取れる。お姉さんは人と会うと言っていたから、どこかの店に入っているだろう。ならばと少年は反対の道へ進むことにした。


10、20分程歩いた気がする。あまり遠くへは行きたくなかったが、いかんせん通りかかる人が居ない。これが田舎かと改めて思った。やはり向こうの道を行けば良かっただろうかと後悔し始めたその直後だった。買い物帰りだろうか。膨らんだ袋を持つ年配の主婦たちが数人立ち話をしているのが見えた。やっと見つけた村人に少年は嬉々として駆け寄ろうとするも、すぐに思い返して足を止める。


(何て話しかければいいんだろう)

面識があるかどうかすら分からないのだ。どうしたものかと頭を悩ます。すると、一人の主婦が少年に気がついて声をかけてきた。


「僕、一人でどうしたの」

他の者も会話を中断し、一斉にこちらを振り向く。急に注目された少年はどうしていいか分からず、不覚にも動けなくなってしまった。そんな様子に気づいてか、そのうちの一人が少年に歩み寄る。


「こんな田舎じゃ、村の子供はみんな自分の子みたいなもんさ。怖がらなくていいんだよ」

そう言ってがしがしと頭を撫でた。すこし乱暴だが優しい手つきに、肩の力が抜ける。


「は、はい。……えっと」

それでもやはり考えは纏まらず、モゴモゴと口籠った。どうしよう、いきなり質問しても大丈夫かな? 後でお姉さんに報告なんてされないよね? そう思うと、もう何を言ってもまずい気がしてくる。そんな少年を見て主婦たちは、人見知りかねぇと和やかに笑っていた。


すると、それまで奥にいて何か考え込む風だった一人の女が顔を出す。その女は漸く思い出したという顔で少年を見て言った。


「僕、誰かに似てると思ったら。なっちゃんにそっくりね」

その言葉に、周りも少年を覗き込みながら口々に言った。


「あらほんと、そっくり」

「懐かしいわぁ」

聞かない名前だった。そのなっちゃんとは誰なのか尋ねようと口を開きかける。しかしそれは、少年の頭を撫でていた豪快な女の声に遮られてしまった。


「なっちゃんと言えば、支倉はせくらさんのお宅って今どうなってるの?」

はるちゃんが一人で住んでるみたいよ」

「ごく稀に商店街で見かけるけど、何だか印象変わったわよねぇ」


一人で住んでる晴さん……もしかしてお姉さんの事だろうか。すっかり話しに花が咲いて盛り上がるなかに、少年は思わず割り込んだ。


「その支倉……晴さんって、向こうの家に住んでる若いお姉さんですか……?」

言ってから、もしかしたら苗字は別かもしれないと思ったが、どうやら間違いではないようだ。あら知ってるの、と主婦たちは少年に視線を落とす。何度か見かけたのだと誤魔化して、続けて尋ねた。


「いつも不思議な人だなって思ってて。晴さんってどんな人なんですか」

少年の問いに周囲は顔を見合わせる。少し考える素ぶりをした後で一人が口を開いた。


「元々は都会の方で暮らしてたみたいなんだけどね。ご両親が亡くなられて、この村にいるおばあちゃんと住む事になったって聞いたわ」

昔を思い出すように目を細め、しみじみとそう話す。


「確かまだ小学校に上がったばかりの頃だったわねぇ」

「そうそう。その時はまだ絹江きぬえさんもお元気で……晴ちゃんもよく笑う元気な子だったのにね」

成る程。お姉さん……晴さんはおばあさんと一緒に暮らしていたのか。そして今はもうおばあさんは亡くなってしまった。しかし最後の一言に少年は引っかかりを覚えた。晴さんは今もよく笑うし、優しい人だ。外では違うのだろうか。


「絹江さんが亡くなってからよね、晴ちゃんが殆ど家から出なくなったの」

「違うわもっと前よ。なっちゃんがあんな事になってから、学校の登下校以外で見かけなくなったじゃない」

「あぁそう言えば。その頃から笑わなくなっちゃったのよね」


まただ。そのなっちゃんとは誰なのだろう。

彼女らの話しに度々出てくる名前だった。その人物が恐らく真実の鍵を握っているに違いない。


「あのっ……」

少年は声を上げた。しかしその声はまたもや遮られてしまう。


「あらやだ、もうこんな時間?!」

「ほんと、うちの子プールに迎えに行かなきゃ!」

プール……? あぁそういえば今は夏休みの時期だった。だから昼間に一人でいても怪しまれなかったのかと少年は納得する。通常であれば親か学校に連絡が行ったかもしれないのだ。その事をすっかり失念していた。


「僕、迷子ではないのよね?」

「暗くなる前にちゃんと帰るのよ」

そう言って彼女らは散り散りに立ち去ってしまった。少年は止める事も出来ず、暫くその場から動けないままだった。


なっちゃんという人物の事は聞けなかったが、他の事は色々と知る事が出来た。お姉さんの名前と生い立ち。おばあさんの事。しかしその話題に自分が登場する事はついぞ無かった。おまけに晴さんは今一人で暮らしてると思われている。つまり自分の存在は晴さんしか知らないのではないだろうか。徐々に明らかになる晴さんの事とは対照に、自分についての謎は深まるばかりだった。






これ以上家から遠く離れるのは良くない。おまけに時間も時間だった。晴さんの帰りがいつになるか明確でない以上、あまり長く出歩くのは危険だ。そう判断した少年は来た道を足早に戻り始めた。


先程までの会話を反芻しながら歩いていると、後ろから一台の自転車に追い抜かれた。その人物は少年の目の前で停止すると、こちらの顔をじっと見つめてくる。


「?」

「見かけない子供ガキだな。そんなに急いで、一人でどうしたんだ」

その人物は少し前に晴と出会った、佐々木ささき成政なりまさその男だった。しかしそんな事この少年には知る由も無い。警戒心剥き出しの目で男を見つめた。


「そんな警戒すんなよ。ってこんなこと前にもあったな」

成政は以前女と交わした会話を思い出して笑った。


「急いでるなら乗せてやるよ。どうせこの先のお宅に用があんだ」

どうする? と返事を待つ成政に少年は頷いて見せる。


(村の子はみんなの子って言ってたし、好い人そうだし。大丈夫だと思う)

それに帽子には“佐々木商店”って刺繍が入ってる。たぶん仕事中なんだろう。であれば何か良からぬことをする可能性は低い。そう考えて彼の言う事に甘える事にした。


(早く帰りたいし)

少年が頷いたのを見ると、よし、と身体を持ち上げて荷台に乗せてくれた。


「行くぞ。ちゃんと掴まってろよ」

「はい」


成政はぐいぐいと力強く漕ぎ、その力で自転車は軽快に進む。気づくとあっという間に先程の分かれ道まで戻ってきた。


「ここどっちだ?」

成政は一度地に足を着けると、少年を振り返った。それに対し少年は指をさして応える。


「あっちか……」

「?」

すぐに走り出すと思ったが、成政は暫くそうして遠く道の先を見ていた。少年は目の前の広い背中を軽く叩く。


「どうしたんですか?」

そう声をかけると、ああ悪い、と言って成政は再び漕ぎ出した。


「……お前さ、この辺りに住んでる暗い顔した姉ちゃん知らないか」

前を向いたまま少年に尋ねた。暗い顔。さっきおばちゃんたちが言ってた。きっとそれは——。


「晴さん……」

つい声に出してしまった。しまった、と今さら口を押さえるも時すでに遅い。成政は驚いて、知ってんのかと声を上げた。


しょうがない。まあ口止めしておけば大丈夫だろう。こうなれば少しでも情報を貰おうと開き直った。


「一緒に住んでます」

「は……?」

案の定更に驚いた声。全くの予想外な答えだったようだ。


「あの姉ちゃん子供いたのか!?」

「あ、いえ……多分違うと思います」

少年は不安げに言葉を濁す。違うと断言しないのは確証が無いから。今の段階では隠し子という可能性も否定出来ない。あまり考えたく無い可能性ではあったが。


「多分? 何だそりゃ」

「えっと、ぼくはただの居候です」

そう言うと成政はふーん、と釈然としない様子で相槌を打った。


「お兄さんこそ、晴さんの事知ってるんですか」

「いや、俺は前にちょこっと話した事あるだけだよ。名前も今知った」


そうですか、と少年は項垂れる。どうやら今日の情報収集はここまでのようだ。すると丁度そのタイミングで家が見えてきた。少年は背中越しに指をさし、場所を示す。成政は頷き、家の前で止まってくれた。


自分が先に降りると、乗った時と同様に抱えて降ろしてくれる。


「せっかくここまで来たし、姉ちゃんに挨拶でもして行くかな」

そう言って大きく伸びをしてから玄関に向かおうとする。


(っそれは困る!)

少年は咄嗟に成政の服を掴んだ。彼は突然引っ張られたせいで、ぎこちない形で足を止める。何だよと言いたげな視線が少年を刺した。


「今家には誰もいませんよ。それに……」

話してもいいものか一瞬言い淀む。しかしやはり口止めは必要だと思い直し再度口を開けた。


「ぼく絶対に家から出るなって言われてて、今日の事も内緒にして貰えますか」

真っ直ぐに目を見据え懇願する。暫くそうしていると、成政はやれやれと肩をすくめて了承してくれた。


「まぁいいけどよ。ただ絶対にってのは聞き捨てならねーな」

お前んちはどういう教育方針なんだと訝しげな視線を少年へ向ける。


「それはその、色々あって」

「はぁ……分かったよ。もう何も聞かん」

成政はガシガシと頭を掻きながらため息混じりに言う。ありがとうございます、と笑みを向け、門を潜ろうと踵を返した。成政はその少年の肩を掴んで引き止めた。


「悪い、最後にこれだけ」

「?」

「お前の名前。あと姉ちゃんのももういっぺん聞かせろ」

「お姉さんは支倉晴さんです。ぼくは……」


分からない。ぼくの事を知る人は居なかった。昔からこの村に住んでいただろう人たちも、お姉さんと同じくらい若いこの人も。誰も知らない。答えられず俯く少年を見て、言いたくないのだと思ったのか。成政は少年の頭を撫でた。


「ごめんな、もう聞かないって言ったのにな。いいよ言わなくて」

「……うん」

彼の笑顔に、少年もつられて笑った。もう家に入れ、と軽く背中を押してくれる彼に感謝しながら、玄関の戸を開けた。






——あの後、暫くしてから晴さんが帰ってきた。何も知らず笑顔でただいまと言う女を見て、少年の心はズキリと痛んだ。


そして夜になり、女に挨拶を済ませた少年は部屋で一人、机に向かっていた。手にはポケットに隠していた広告用紙。その裏に今日あった出来事を記録していく。


眠気と闘いながら何とか書き終えたその紙と、朝に見つけたくしゃくしゃの紙切れを一緒にする。電気を消して布団を被ると、朝と同様に腹の上にそれを置いた。


後は未来のぼくが頑張ってくれるだろう。そう願いを託し、意識を手放した。






—成政 side—


俺は少年が家の中に入るまで、その後ろ姿を見つめていた。


(絶対に家を出るな、か)

どうりで今まで一度も見た事が無い筈だ。俺は仕事柄顔が広いし、配達で村中を回っている。しかし、そんな事情があったのなら納得だ。あの少年が何歳なのかは分からないが、確実に小学校には入っている年齢に見える。中学年か、高学年と言われても違和感は無い。まさか学校にも行かせてないなんて事無いよな? ……このままにしておくのは良くない気がする。しかし、どうにかするにも俺はあの女を知らなさ過ぎる。そう思い、ポケットから携帯を取り出した。電話帳を開いて友人の名前がある事を確認する。こいつは高校時代部活に入っていたから、二つ下の後輩とも繋がりがある筈だ。誰かあの女を知っている奴を紹介して貰おう、そう考えた。何でもいい。どんな小さな事でも良いから知りたかった。


支倉晴。学生の頃に一度会っていた女。当時はただ暗いやつという印象だった。しかしこの間再会した時は、話してみると意外と普通の女なんだなと思った。けど、今はもうあいつが分からない。


あいつは何かを抱えている。誰にも話さず一人でその重みに耐えている。巨大に膨れ上がったそれをどうすればいいのか、きっとあいつ自身も分からなくなっているんだろう。


俺も一緒に抱えるなんて大層なことは、他人同然の俺に言えることではないし、出来るとも思わない。けど。


いつか重みに耐えかねた時、それを下に降ろす手伝いくらいなら出来る。溜まりに溜まった愚痴を聞いてやるくらいなら出来る。俺じゃ不満だって言うならそれでも良い。誰か他のやつとの橋渡しをしてやる。だから、目をつぶってないでもっと周りに目を向けろ。そうあいつに言ってやりたい。


お節介だと思うだろうか。またこの間みたいに鬱陶しそうな顔をするだろうか。たった一度何年も前に説教したやつと、されたやつ。それだけの関係。それもあいつがとうに忘れる程の細い縁。少年に関しては名前すら知らない。


それなのにあいつを、あの子供を、何とかしてやりたいと強く思った。

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