閉鎖病棟の怪――死臭の睡魔

 無感情、無動のはしばみ色の瞳には、PC画面上のフォルダの群れが映っていた。


 ひとつダブルクリックしては、またフォルダが出てくる。そうして、またダブルクリックすると、フォルダが現れる。


 ファイルがなかなか顔を見せない階層の下に置き去りにされたデータ資料。高級な紺のスーツの片肘は、マホガニーの机の上で頬杖をついていた。


「仕事を把握するので、毎日手一杯だ」


 やがてたどり着いたファイルを開ける。そこには、


 ――死亡。


 の文字が永遠と並ぶ。いやその文字しかなかった。


 机から手を離し、コーヒーカップを取ろうとした。深緑の極力短い髪の頭の中に、専門用語が習慣という名で浮かぶ。


 ――脇を空ける。肩甲骨けんこうこつを使う。カップと自分の正中線を合わせる。


 まるで芸術という動きで、琥珀色の液体が入った陶器は持ち上がった。


 いつも通りのスティックシュガーふた袋を入れた糖分補給。羽柴はしば 夕霧、三十五歳には絶対に欠かせない習慣。


 ――糖分補給をしないと、脳疲労を起こして、いい動きはできん。


 苦味と酸味が身の内へ落ち、温かみが広がる。


 十一月。冬へと向かう窓の外。高層ビル群の合間に広がる癒しの庭。衰えを表す、黄色の芝生に枝に取り残された赤い葉っぱたち。


 それらを眺めようと、カップはソーサーという玉座へ戻された。カチャッと心地よい食器のぶつかる音がする。


 黒のビジネスシューズはほぼ椅子の真下へ入れられる。何気ない仕草だが、自分の背負った宿命を考えれば、怠ることはできない。


 ――正中線を崩さずに立ち上がる。


 体を上下に貫く気の流れ。その通過点を体が反射的に再確認する。


 ――内くるぶしから足裏に一センチ入ったところ。

 膝の内側。

 会陰えいんのツボ。

 腰椎ようついの一センチ前。

 胸椎きょうついの一センチ前。

 頚椎けいついの一センチ前。

 百会ひゃくえのツボ。

 これらを一本の線でつなげる。それが、正中線だ。


 紺のスーツは一ミリのブレなくまっすぐ立ち上がり、膝の後ろで押された回転椅子のキャスターが絨毯の上を少しだけ滑った。次の動きへ自然と移る。


 ――正中線。腸腰筋。腸骨筋。足裏の意識を高める。縮地しゅくち


 絨毯の上を歩き出すが、足音はせず、引きずる響きもなく、窓辺へと黒のビジネスシューズを長い足が連れてゆく。


 都会のビルの隙間から、貴重な陽光がこぼれ落ちる。無感情、無動のはしばみ色の瞳にきらめきが差すと、防御反応で目は細められた。


 増築され続けてゆく、別の棟を捉え、程よい厚みのある唇がかすかに動く。


「眠り病……」


 こんなに穏やかな景色のはずなのに、その病名は、ペンキで真っ黒に塗りつぶされたような死臭漂うものだった。


 店に直接客が足を運ぶ流通形態は衰退をたどり、ネット上を経由して、分子レベルまで分解した商品を届け、再び元へ戻すという技術まで開発された国。


 世界でも屈指の先進国。それなのに抗えない、人の無力さを思い知らされる不治の病。いや違う。科学が見捨てた森羅万象の中に答えはあるだ。


 焦るでもなく、悔しがるでもなく、ただただ、無感情、無動のはしばみ色の瞳は、あのわざと別の棟にされた病室の群れをじっと見つめる。


「俺だけでは間に合わん」


 緩めておいたワインレッドのネクタイを少しだけ上げ、滅多なことでは寄りかからない椅子の背もたれから、白衣を取って袖を通す。


 足音をひとつも立てず、立派なこげ茶のドアへ近づき、金のドアノブを回す。


 すぐに小さな半透明の間仕切りが現れる。腰掛けていた女が素早く立ち上がって、無言で頭を下げた。


「中だ。席をはずす」

「かしこまりました」


 しなやかな筋肉のついた長身は、白衣の裾を静かに揺らしながら、もうひとつのドアを出た。


 清潔感を表す白い廊下を歩いてゆく。白衣を着た医師や看護師が通るたびに、誰一人もれず、自分へ頭を丁寧に下げてくる。


 夕霧にしてみれば、その態度はまるで傀儡くぐつのような空っぽの心で、別次元で見れば、嘘偽りばかり。服従でもなく、尊敬でもなく、世襲制という習慣の延長上でしかない。


 だが、そんな人々の姿も、無感情の自分にとっては、心に波紋をひとつも作らず、目の前にあることを淡々とこなす日々である。


 別棟へと続く廊下の端へと近づくたびに、人通りが少なくなってゆく。


 大きなシルバー色のドア。自動のものだが、特定の人間しか出入りが許可されていないエリア。


 あのドアは向こうを守るためではなく、今歩いている、この平常な他の空間を守るためのもの。


 解除のセンサーへと手を伸ばそうとしたが、白衣のポケットの中で振動が起き、ふと止めた。


「夜、もう一度来る」


 陽が落ちれば、あの向こうの世界は危険度が増す。それはわかっていても、行かなくてはいけないのだ――――



 ――――ワンフロアの大きなオフィス。


 規則正しく並ぶデスクの上にはPCの画面が開かれ、人々の視線はそこに真剣身を持って向けられている。


 時折、打ち合わせのために人の話し声は聞こえてくるが、全体的に静かなフロア。


 壁際の列で、どこかずれているクルミ色の瞳を持つ女が、大量のファイルを見つめて、リターンキーに手を乗せた。バンジージャンプをする人のように、大きく息を吸って覚悟を決める。


(バッチを作ったから……あとは回すだけ)


 これを実行すれば、大量のデータが処理できるというプログラム。手に力を入れて、上から押せば――


月雪つきゆきさん?」


 背後から女の声がかけられ、出鼻をくじかれた倫礼の手はPCからはずれて、机の上にころっと転がった。


 振り返るとそこには、ストライプのシャツを着た女が立っていた。


「あぁ、先輩、お疲れ様です」

「お疲れ様……」


 ため息をつきながら、他の人の視線から逃れるように女はしゃがみ込んだ。それはオフィス内ではよく見かける行動。だが、この先輩がするのは、珍しいことだった。


「どうかしたんですか?」

「今日の飲みの約束なんだけど、またでいいかしら?」

「いいですよ」


 基本的に土日が休みのIT関係。今日は金曜日。会社帰りに、居酒屋に行く。ごくごく普通のことだった。女は額に手を当てて、


「なんかねー、今日、ひどく眠くてね」

「夜更かしでもしたんですか?」


 倫礼はロングブーツのチャックを指先でいじった。


「そんなことないんだけど……。規則正しい生活してたんだけど、疲れてるのかもしれないわね」


 しっかりした先輩だというのに、そんなこともあるのかと思って、断りに来た気持ちも汲んで、倫礼はできるだけ明るく言った。


「今日は早く帰って寝てくださいよー」

「うん。そういうことだから、また別の日にね」


 ゆっくり立ち上がった女に力なく手を振られて、倫礼は素直にうなずき、


「はい」


 再びリターンキーに指先を乗せて、ゴーをかけると、斜め横でドサっと大きな物が落ちたような音がした。チームリーダーの男の声が響き、


「大丈夫かっ⁉︎」

「どうしたの?」

「どうした?」


 机の山の前方でガヤガヤ言い出した。バッチが無事に回ったPCの画面は、どこかずれているクルミ色の瞳から消え去り、床に落とされると、さっき話していた女がまるで命を吸い取られたかのように倒れていた。


「え……? 先輩?」


 ぼうぜんとする倫礼の前で、物事が勝手に動いてゆく。


「誰か、救急車呼べ!」


 ただ事ではない空気で、オフィスフロアは一瞬にして騒然となった。


 だが、倫礼は別のことにもっと驚いて、机の上から両手を震わせながら落とし、白のモヘアのワンピースのスカートを、寒気がしてぎゅっと握りしめた。


「黒い霧? 先輩のまわりだけ……。どうしてだろう?」


 それは、どこかずれているクルミ色の瞳というレンズにも、窓にも映らないものだった。それでも、倫礼の心の中では、はっきりと見えていた――――



 ――――黄色の液体で満たされたグラスが、中央に掲げられた。


「カンパーイ!」


 カツンと心地よい音が響き、それぞれの元へビールジョッキが引き寄せられた奥で、


「はいよ」


 刺身の盛り合わせが、オープンキッチンから、粋のいい男の声とともに出された。


 着物を着た女の従業員によって運ばれてゆく。カウンターの端に座っていた女二人に近づいて、


「お待たせしました」


 どこかずれているクルミ色の瞳と、とぼけている黄色の瞳が同時に向けられた。


「刺身の三点盛りでございます」

「ありがとうございます」


 倫礼が割り箸を指に挟んだまま受け取ると、店員は離れていった。醤油を隣にいる赤茶の髪の女に渡す。すると、


「先輩、先にどうぞ」

「じゃあ、お先」


 刺身皿を茶色に染め、ワサビをたっぷりと取り、倫礼はドロドロになるまで混ぜた。そうして、満面の笑みで、今来た魚を見据える。


「サーモンとハマチ、ゲット!」


 電光石火のごとく、ふた切れを同時につかみ、ジャボっと醤油に浸し、すぐにすくい上げ、パクッと口に入れると、


「んん〜〜! く〜っ!」


 ドラック的な辛味に頭を痺れさせている隣で、取り皿にネギまという規律が乱されてゆく。ビーズの指輪をした手で、箸を縦滑りさせる。


「……鶏肉、ネギ、鶏肉、ネギ、鶏肉終了です」


 高級和食みたいな、串からはずされた焼き鳥を見つめて、倫礼は妙に感心する。


知礼しるれ、上品に食べるよね?」


 聞かれた山吹 知礼、二十四歳のグラデーションニットの前で、カシスソーダの氷がカランと鳴った。


「そうかはわかりませんが、先輩はそのままですよね?」


 焼き鳥の盛り合わせから、もも塩をガバッと取り上げ、倫礼は挑戦的な顔をする。


「ガシッと口で挟んで抜き取った後に、ビールで流し込む。これが一番おいしい。私はね」


 その通り、肉を串から引き抜いて、ビールジョッキをグビっとあおった。


 仕事帰りのサラリーマンやOLでいっぱいの店内。食器のぶつかる音が入り混じり、金曜日のにぎやかさが広がっていた。


 フライドポテトにマヨネーズをつけながら、知礼が話を切り出した。


「どうしたんですか? 急に呼び出すなんて……」


 さっきまでの元気は消え去って、倫礼は割り箸をテーブルへそっと置く。


「あぁ、ちょっと胸騒ぎがして……」


 人がたくさんいるはずなのに、照明は十分なはずなのに。まわりの音がやけに遠くに聞こえ、薄暗く感じた。


 十年近く、先輩後輩でやってきたふたり。暗号みたいな話が飛び交う。


「いつものあれですか?」

「そうだね、たぶんそう」


 倫礼はおしぼりを落ち着きなく、何度かつまんだ。割り箸の紙袋を手に取って、適当に折り曲げる。


「今日ね、バイト先のお世話になってた先輩が仕事中に倒れたんだよね」


 カシスソーダのグラスをつかもうとしていた小さな手を、知礼は不意に止めて、本当に心配そうな面持ちになった。


「それは大変です。何が原因なんでしょう?」

「それは、聞けなかったんだけど……」


 ビールジョッキについた結露を、倫礼は指で拭う。言葉が出てこない先輩を、知礼はじっと見つめた。


「他に気になることがあるんですか?」

「先輩、その直前にすごく眠いって言ってたんだよね」

「寝不足とかじゃないんですね? 先輩がわざわざ話すってことは……」

「うん。本人が違うって言ってたから……。でもそれって、あまり考えたくないけど……」


 この国の人間なら誰でも知っている症状。にぎやかな店内とは逆に、重苦しく、ふたりの声が重なった。


「――眠り病……」


 トンと割り箸をそろえると、知礼は今度は唐揚げにマヨネーズをつけ出した。


「かもしれないですね」

「やっぱりそう思うか……」


 すっかり泡の消えたビールが、倫礼の喉元に苦味ばかりを残していった。動かしていた手を止めた知礼の、黄色の瞳は深刻だった。


「現代の不治のやまい。ある日、睡魔に取りかれるように眠り続け、食事をすることもしなくなり、点滴で補給し続けても間に合わなくなり、やがて死ぬ……」

「原因も治療方法も開発が進んでない病気……」


 倫礼があとを引き取った。かかったら最期さいご。死する運命しかない。ネギを取り上げ、知礼は口の中に入れた。


「先輩の両親はそれで亡くなったんですよね?」

「十年前にね。最後は会うこともできなかったけど……」


 十代半ばで、肉親を失う。悲しみの淵に立たされて、あのステンドグラスが美しい聖堂を訪れては、神の畏敬の中で心を鎮めて、前に進むを繰り返してきた日々。


 記憶の端っこで、倫礼は引っかかった。今日見たものと同じものに、過去に出くわしたことを。


「そう言えば、あの時も……」

「何か思い出したんですか?」


 音と光が正常に戻った気がした。倫礼は唐揚げに手を伸ばす。


「もしかしたら、原因が他にあるのかもしれない」

「思い当たることでもあるんですか?」


 マヨネーズをこれでもかというほど塗りたくり、唐揚げを頬張り、倫礼はまろやかという幸せで思わず目を閉じた。すぐに瞳を開けて、表情を曇らせる。


「黒い霧を見たんだよね」

「あぁ、先輩のいつもの霊感ですか?」

「そう」


 倫礼の日常は、スピリチュアル満載なのである。例えばこんな風に。


 バイト先のオフィスがある、ひとつ前の交差点にいつも三十代の男が立っている。時間帯は関係ない。ずっとそこにいる。


 他の通行人は気づかないどことか、すり抜けてゆく。それを見ても、彼女は気にすることなく、あれは地縛霊。と判別するくらいなのだった。


 わさびをちょこんとマグロに乗せて、知礼は割り箸で挟む。


「幽霊じゃなくて、正体不明な方ですね?」


 オフィスでいつも元気なあの女を、まるで飲み込んでしまうかのような黒の渦。


「うん。先輩、その霧で真っ黒だった」

「そうですか。何なんでしょうね? それは」

「ん~?」


 聞かれても答えが出ない。人の姿をしていない。本当の霧で、形は自由自在に変わり、大きさもまちまち。おもむろに割り箸を握りしめて、倫礼は頬杖をつく。


 ダボダボのニットの袖が食べ物につかないように気をつけながら、カシスソーダのストローを、知礼はつかんだ。


「先輩の近くに来ると、消えるんでしたよね?」


 不思議現象、怪奇現象が起きているが、いつものことだ。あごに割り箸の端を当てて、倫礼は舟を漕ぐように、体を前後させる。


「んー、それがね、最近ちょっと変わったんだよね」

「どう変わったんですか?」


 さっきは違うが、時々こうなる。


「黒い霧が金の光に包まれるっていうか、打ち消されるっていうか……」

「金の光ですか?」

「そう。どうなってるのかな?」


 幽霊を通り越して、魔法使いみたいな倫礼の話。知礼はつくねの串を指先でつまんだ。


「先輩、相変わらず日常がファンタジーですね」

「紛れもなく現実的ではないね。知礼と違って」


 皮肉でも何でもなく、本当のことだ。倫礼も同じつくねを取り、串から引き抜こうとして、大声を上げ、


「あっ! 現実って言えば……」


 女子トークに入った。


「彼氏とどうなったの?」


 それなのに、知礼の黄色の瞳はとぼけた感全開になって、持っていたつくねをじっと見つめた。


「えっ!? ここに入ってるんですか?」


 完全にどこかに話を投げられて、倫礼は知礼とつくねから状況を打破。


「つくねの中にカレーが入ってる――。斬新なアイディアだね。じゃなくて、恋人の話」

「あぁ、そっちですか、びっくりしました。よかったです」


 知礼は本当に安心したように吐息をもらして、つくねの規律を今度は乱し始めた。


「…………」

「…………」


 妙な間が女ふたりの間に降りる。腹が減っては戦はできぬで、倫礼はつくねをガシッと串から口で噛みはずし、ビールを飲み干した。


「いや、話終わってるってば!」

「彼氏の話ですか?」


 知礼の話題転換の見事さに、倫礼が今度は驚いた。


「どういう順番? っていうか、器用に戻ってきた、話」


 こんなことはいつものことだ。倫礼はすぐさま体勢を整え、


「で、どうなの?」

「うまくやってますよ」


 ニッコリ微笑む知礼を横にして、刺身のツマとシソをつかむ。


「結婚するとか?」

「そういう話も出てなくはないです」

「そうなんだ。出会って半年ぐらいなのに、運命だったんだね」

「そうかもしれないです」


 倫礼と知礼は仲よく微笑み合った。座敷席の方から、騒ぎ立てる声が突如上がる。


「で、前から言ってるけど、紹介はしてくれないの?」

「何を確かめるんですか?」


 かすった感があったが、


「あぁ〜、漢字変換ミス。その照会じゃなくて……」

「どうしたんですか?」


 まじまじと見つめられても、困るのだ。大暴投クイーンのおおせのまま、話が脱線の一途をたどっている。倫礼は日頃のツッコミの甘さを思い知った。


「え〜っと、どうやって言えばいんだろう? 、と、、が同じ響きになって、またどこかに投げちゃうから……」


 反対に顔を向けて、ボソボソとつぶやいている、倫礼のブラウンの髪を、知礼は本当に不思議そうに見つめた。


「え……?」


 パパッと直感がきた。


「あぁ、あぁ。彼氏と直接顔を合わせたいなと……」


 さっきまでの引っかかっていた会話が嘘のように順調に進み出した。


「それが、なかなか忙しいみたいなんです」

「そうなんだ」


 フライドポテトのホクホク感を味わいながら、倫礼が返事を返すと、ビーズの指輪をした小さな手が割り箸を器用に動かした。


「はい、土日なら、わりと時間があるんですけど、それだと先輩が忙しくなっちゃうじゃないですか?」

「そうだね。お芝居の稽古があるからね」


 いい感じで進んでいたが、大暴投クイーン、またまた宇宙の果てに向かって、豪速球を放った。


「どなたですか?」


 倫礼は素早く走り込んで、さっと飛び上がり見事にキャッチ。


「また漢字変換ミス。ケイコさん、人の名前じゃなくて、練習する稽古」

「あぁ、そっちですか」


 倫礼は店員を呼び止めて、ジョッキを掲げ、知礼はつくねを口へと運ぶ。


「…………」

「…………」


 妙な間が女ふたりの間に降り積もった。


「いや、話終わってるってば!」


 倫礼が突っ込むと、何事もなかったように、知礼は話し始める。


「先輩、夢を追うのもいですけど、恋愛はしないんですか?」

「興味がない、ね」


 倫礼はロングブーツのチャックを手でいじり、


「先輩、花の命は短いですよ」


 知礼の説教が、ブラウンの髪の中にある脳裏で、誰かさんの面影と重なった。倫礼は笑いそうになるのをこらえながら、


「人生語るね。私、まだ二十五なんだけど……」

「お肌の曲がり角はもうきてるじゃないですか?」


 手厳しい意見を言われて、倫礼は最もらしい言葉を口にする。


「人の成長期は二十五年間だから、そうなるらしいって聞いたことがある。理論通りに行くと、百二十五歳まで生きられるらしいね」

「先輩は、生物学者ですか?」

「ううん、女優志望のフリーター」


 店員からお代わりのビールを受け取りながら、倫礼は首を横に振った。


「とにかく、彼氏今度連れてきてよ」

「先輩と時間が合えば、連れてきます」


 ふと会話は途切れ、焼き鳥を焼いている煙が、換気扇に吸い込まれていく様を、女ふたりはただただ眺める。さっきとは違う沈黙が流れる。


「…………」

「…………」


 ダボダボのニットの袖口から出ている知礼の手を、倫礼はしばらく見つめていた。それが終わると、ビールに口をつける。


 白いモヘアの袖口から出ている、背の割には大きな倫礼の手を、知礼は目で追っていた。


「…………」

「…………」


 倫礼は落ち着きなく、同じカウンターに座っているサラリーマンをうかがう。


 ガヤガヤとにぎわう店内。時折、店員が忙しそうに、ふたりの背後を通り過ぎてゆく。


「…………」

「…………」


 まだ料理は充分残っているが、なぜか食べる手が止まった、倫礼と知礼。そうしてやがて、知礼が沈黙を破った。


「そう言えば、先輩の男性のタイプってどんな人ですか?」


 さっきまで普通に話していたのに、倫礼の口調はやけにぎこちない。


「そうだね? 感情に流されない人……」

「落ち着いてるとか、冷静な人ですか?」

「そう。自分が感情に流されるタイプだから、そういう人がいいんだよね」


 マグロに再び割り箸を伸ばした知礼の言葉から、ふたりの会話がおかしくなってゆく。


「まわりにいっぱいいますよね?」


 倫礼のどこかずれている脳裏に、誰かさんたちの面影がよぎり、笑いそうになるのを必死で押さえながら、


「あれ? いたかなぁ〜?」


 電球がピカンとついたようにひらめいて、こうした。


「あぁ、九人ぐらいいたよね?」

「ぐらいじゃないです。九人ぴったりです」


 イケメン全員の姿がはっきりと浮かび上がっている女ふたり。倫礼は残念そうにため息をつく。


「あぁ〜……言っちゃったね」


 知礼ははっとして、慌ててつけ加えた。


「先輩、今の話はなかったことにしてください。現実ノンフィクションでした」

「あはははっ!」


 珍しく倫礼が笑うと、画面が変なふうに飛び、前の動きとつながらないところから、スタートした。唐揚げをつまみ上げる。


「知礼と話してると楽しいね。やっぱり結婚してよかったわ」

「先輩、ノンフィクションになってます」

「あはははっ!」


 つかんでいた唐揚げが皿の上にポトンと落ちた。そうして、また画面が途中でいきなり変わり、倫礼が今度はサーモンを箸で取っているところから。


「このお刺身おいしいね?」

「今度家で取って、みんなで食べましょうか?」


 知礼も同意したが、倫礼は持っていた割り箸をパラパラとテーブルの上に落とした。衝撃的な場面にでも出くわしたように。


「みんなっ?!」


 振られた話。うまく返さないといけない。倫礼は何度もうなずいていたが、


「あぁ、こういうことだね。知礼の家で取って、私が食べに行く……」


 途中から言葉が失速した。


「……ふたりきりじゃ、だと言葉がおかしくなっちゃうね」


 十八人それぞれの面影が浮かんでいた。大暴投クイーンが制裁を科した。


「先輩、ノンフィクションになってます」


 こんな会話をしながら、料理は少しずつなくなってゆき、夜は更けていった――――



 ――――細い路地に、街灯がポツリポツリと花を咲かせる。住宅街の中で、ひときわ明るい場所へと向かって、靴音は近づいてゆく。


「あぁ、お疲れ様です。お迎えなら……」


 小さな子供を見送りながら、人の気配に気づいて、鼻声が振り向きざまに響いた。その男の高い声とは違って、地鳴りのような低いそれが名を呼ぶ。


「独健?」


 薄闇から知った顔を見つけて、若草色の瞳は少し見開かれた。


「あぁ、夕霧、お前か。どうしたんだ? わざわざ俺の職場に来るなんて、珍しいな」

「話がある」


 一直線に交わる無感情、無動のはしばみ色の瞳はどこまでも続くなぎ。この男がなぜ今ここにいるのか、独健は直感して、一瞬言葉をなくした。


 だが、ひまわり色の髪をかき上げ、出来るだけ明るく言う。


「そうか。ちょっと待ってくれ。断ってくるから」


 くるっと背中を向け、俊敏に走ってゆく。同僚の女に気さくに声をかけて、一言二言話すと、振り返って独健は夕霧を手招きした。


 ずいぶん低いブランコに、男ふたり並んで座る。十一月の夜風が少しだけ肌寒い。


「すまなかった」


 深緑色の短髪は、独健のすぐ隣で深々と下げられた。自分が予想していた通りの言葉。だが、この男がこんなことをする必要などどこにもない。


 独健は謝罪を受け入れる気はなく、真正面を向いたまま、できるだけ平常を装った。


「どうして、お前が謝るんだ? お前のせいじゃないだろう?」


 それでも、視界はにじみ始め、地面が空が歪む。


「一週間前に、俺の両親が眠り病で死んだ。それだけだ。違うか?」


 この男の心の内はわかる。若草色の瞳がこっちへ向くことはなくても。夕霧の脳裏に違った角度から物事が浮かぶ。


 ――胸の気の流れが頭に登っている。泣いている。


 独健のような感情は持っていない。どんな気持ちかは、本当にわからない。しかし、自分は誠実ではなかった。だからこそ、今は言わなくてはいけない。


「防ぐ手立てはあった」

「医者のお前でも無理だろう。治す術がないんだから」


 ブランコの鎖をつかむ手に力が入るが、少しでも揺らしたら、涙がこぼれ落ちてしまうだろう。赤いスニーカーは砂埃の上で密かに踏みとどまる。


 だが、それさえも、夕霧には伝わってしまうことで、


 ――太ももに前からの気の流れができている。後ろ向きになっている。


 対照的に、黒のビジネスシューズはきちんとそろえられていた。


「あれは医学では治せん。別のことが原因だ」


 誰もが知らず、著名人が眠り病にかかっては大ニュースになるばかりだ。独健は涙も引っ込み、初めて夕霧の顔を見た。


「ん? 知ってるのか?」

「そうだ」


 無感情、無動のはしばみ色の瞳はすれ違いというように、真正面へ向けられた。はつらつとした若草色の瞳は、少しだけ怒りに染まる。


「どうして、学会で言わないんだ?」


 自分のことだからではなく。たくさんの人に関わること。それを放置するとは、正義感の強い独健は許せなかった。夕霧は膝の上に両肘を落とし、軽く手を組む。


「何度も論文は出したが、受け入れられん」

「何が原因で認めてもらえないんだ?」


 子供が親の手に連れられて、敷地内から出てゆく。微笑ましく平和な景気を、独健は目で追った。


「原因が非科学的だからだ。医学という科学をしている人間には、特に受け入れ難い」


 何を勘違いしているのか、エリートという地位や名誉にしがみつくやからまでいる。人の命を預かる職業であって、決して神ではないのに。


 不意に吹いてきた風で、独健のエプロンの裾がそよそよと揺れた。


「どういう理由なんだ?」

「――邪気じゃきだ」


 ひどく非現実的アンリアルだった、夕霧の地鳴りのような低い声で出てきた言葉は。若草色の瞳は不思議そうに、シャープなラインを描いている横顔に向けられた。


「邪気?」

「そうだ」


 その手のたぐいの話は信じていないわけではない。だが、自分は見たこともない。ガラス細工でも扱うように、独健はそうっと聞き返した。


「幽霊ってことか?」


 深緑の短髪は横へ振られ、


「それとは少し違う。悪霊が作り出す波動みたいなものだ」


 無感情、無動のはしばみ色の瞳はどこか別世界を見ているように、遠くに向けられたままだった。


 勘の鋭い独健は、目の前で落ち着き払って座っている男のもうひとつの素顔に迫った。


「それって、お前が倒してるってことか?」

「そうだ」


 今は紺のスーツにネクタイ。だが、あでやかな和装を見ることが多かった。それが本当は何のためだったのか、独健は気づいて、


「邪気を倒すために武術を習ってたのか? 確か、アイ? 何だったか?」


 感覚の独健の記憶力は崩壊気味だった。いつも通りの友人を隣にして、夕霧命は少しだけ目を細める――微笑む。


合気あいきだ」


 幽霊は浮遊してくる。それに効く武術。そう考えると、気の流れを使うものを選び取ることになる。だが、それだけではなく、夕霧は単に合気が好きなのである。


「それで倒すのか?」

「それも使うが、主力ではない」


 体が透き通っているものには効かない。


 武術など聞きはするが、何度説明されても再現できるものではなく、独健は記憶の底から引っ張り出してきた。あの細長い木の棒を上げては下ろすだけを淡々としている、夕霧の後ろ姿を。


「じゃあ、剣のほうか?」

無住心剣流むじゅうしんけんりゅうではない」


 相手に実体がない。武器が効かない。雲をつかむような話で、独健はとうとう根を上げた。


「じゃあ、何で退治してるんだ?」

「これだ」


 夕霧がそう言うと、彼の手にさっきまでなかった、細長くあちこち突起物のついたものが姿を現した。出てきた物が物だけに、独健の鼻声は素っ頓狂に夜空へ跳ね上がる。


「けっ、拳銃っっ!?」

「FN/FNC アサルトライフルだ」


 ここでも非現実的な言葉が、男ふたりの間に降り積もった。しかも、銃マニアみたいにすんなり出てきた名前。


 独健はひまわり色の髪をかき上げて、あきれたため息をつく。


「落ち着いて答えるとこじゃない。いやそこじゃない、問題は。医者のお前が何で武器を持ってるんだ?」


 医者に拳銃など必要ない。無縁である。非現実的なことは重なるもので、夕霧命の程よい厚みのある唇から、こんな言葉がもれ出た。


「幼い頃に気づいたら、そばにあった」

「神さまか何かの贈り物か?」


 独健は皮肉交じりに言ってやった。だが、夕霧は珍しくため息を晩秋の空気に残す。


「思いつかんかった……」

「相変わらずまっすぐだな」


 しんみりした気持ちは影を潜めて、独健は少しだけ笑った。紺のスーツの膝にまだ鎮座しているライフルを眺める。


「発砲するのか?」


 この国では、武器を所持するにも許可がいる。それを実践するとなると、安全を確保した場所へ行ってでないと使えない。それが法律。


 だが、そんな常識を覆す、言葉が返ってくる。


「するが、実弾は入れん。霊力を使って撃つものだ」


 実弾など、幽霊にはかすりもしない。ただ通り抜けてゆくだけだ。何の脅威にもならない。おもちゃどころか、それこそ幻だ。


 独健は赤いスニーカーで地面を軽くけって、ブランコを揺らした。


「それで、お前、一人でずっと退治してたんだろう? 修業バカのお前なら、そうなるだろう? 違うか?」

「退治はしていない」


 夕霧が首を横に振ると、ライフルはどこかへ消え去った。予測していたのとは違う返事が返ってきて、独健は拍子抜けした。


「じゃあ、何をしてるんだ?」

「邪気を散らす、吹き飛ばすだけだ。トドメは刺せん」


 現実は非常に厳しく。原因がわかって、術があったとしても、数が減るわけではないのだ。


 この国をむしばんでいる眠り病。根元から断ち切ることができない現状。憤りで、ふと言葉は途切れた。少し離れたところで、つかの間の平和な日常が目に入り込んでくる。


「せんせい、さよなら」

「じゃあ、また来週ね」


 小さな子供が親の手に引かれて、帰路につこうと、暗い夜道へと消えてゆく。そんな姿を何人か見送りながら、男ふたりは幼稚園のブランコに座り続ける。


 ふと視線を、独健は夕霧の横顔に向けた。


「というか、お前に霊感があるなんて知らなかったな」

「それは話しとらんからだ」


 無感情、無動のはしばみ色の瞳が見つめ返してきた。独健は一人ボケツッコミをする。


「まぁ、それじゃ当然だな。――って! お前、言葉数が少なすぎだ! 少しは話をしろ!」


 この男ときたら、寡黙すぎて、聞かなければ、余計なことは自分から話してこないのである。


 オーバーリアクションで、ブランコから立ち上がった独健を見上げ、夕霧は拳を口元に当てて、噛みしめるように笑った。


「くくく……」


 自分が手を貸せるなら、貸してやりたい。だが、幽霊などという非現実的なものではどうすることもできない。


 しかしそれでも笑わせて、少しでも緊迫感の連続から解放してやろうと、心優しい独健は思った。


「だから、結婚しないのか?」


 地位や名誉も持っている。背は高く、端正な顔立ちで、性格もよく。掃いて捨てるほど、女が言い寄ってくる。そんな毎日を過ごしている夕霧。


 だが、自分には死という影が常につきまとう。


「俺のまわりには邪気が集まってくる」


 ため息まじりに、独健は両手で気だるそうに、ひまわり色の髪をかき上げた。


「まぁ、敵からすれば、お前は邪魔者だからな。そうなって当然だな」

「俺一人を守るのはできるが、誰かを守りながらは戦えん」


 自分が死ねば、立ち向かう者は誰もいなくなる。だからこそ、そうそう無謀に死ぬことはゆるされていない。


 サバイバル世界で、守るものが二倍になる。いくら独健が戦場とは程遠い生活を送っていても、少し考えれば容易に想像がついた。


「巻き込まない方が賢明な判断だな。命がかかってるんだから」


 結婚など夢のまた夢だ。そんなことにかまけている暇などない。夕霧には。たくさんの命を守れる可能性がそこに少しでもあるのなら、自分の幸せなどあと回しだ。


「自分のことを何かで守ることができる女がいるのなら、俺は結婚する」


 だが、誰よりも結婚願望は強かった。独健はあきれた顔をする。


「あれか? 合気は愛の気だからか?」

「そうだ」

「本当に修業バカだな、お前。合気が人生なんだな」


 独健は思いっきり皮肉たっぷりに言ってやったが、夕霧は切れ長な瞳を少し細めただけだった。


「そうかもしれん」


 児童の少なくなった部屋の明かりがまたひとつ消えてゆく。あの電気のように命が尽きた両親のことを、独健は思い浮かべ、若草色の瞳は再び正面を向いたままになった。


「なぁ、聞いてもいいか?」

「何をだ?」


 真相に触れれば、そこにあるのは、聞かなくてよかったという後悔だけだろう。だが、肉親の死と向き合うために、独健の心臓はバクバクと音を立てた。


「その……邪気が具体的に何をするんだ?」 

生気せいき――魂を食う」


 人の領域ではなかった。地鳴りのような低い声が言ってきた言葉は。独健の声はいつもよりもトーンが下がった。


「……それで死ぬんだな」

「そうだ」


 バクリと大きく波打って、独健の心臓はそれに続けとばかり、早鐘を打ち始める。


「食われた人間は死んだあと、どうなるんだ?」

「どこの世界からもいなくなる。消滅する――」


 通常の死に方ではない。勘の鋭い自分はどこかで気づいていた。ただ、受け入れるのが怖かっただけ。目をそらしていたが、はっきりと言われて、独健の若草色の瞳はまたにじみ出した。


「……そうか」

「死んでももう会えん」


 死後の世界へ行けば再会できる。そんな淡い期待も持てないのだ。


 晩秋の夜風がふたりの間を吹き抜けるたびに、深緑とひまわりの短髪はさざ波を立てた。


「…………」

「…………」


 容赦なく死は訪れ、人生を変えてゆく。夕霧はそれでも、ブレることなく生きてゆく男。


 それに比べて、独健は揺れに揺れて、涙がこぼれないように星がまたたく空を見上げた。


「お前の両親とお兄さんももうどこにもいない……」

「そうだ」


 無差別にたくさんの人が命を落としている病気。それでも、対策が取れないまま、時だけが悪戯に過ぎ、人が無残に死んでゆく。


 ――霊的なものが原因です。


 そんな理由で動く国など、宗教国家でなければ、どこにもないだろう。科学技術という文明の一面だけを磨き上げた末の、しわ寄せだった。


 園児たちが土団子をいつも作っている建物の隅を、独健は黙ったまま見つめていたが、やがて、吹っ切るように大きく息を吐き、


「それなら、これ以上、俺と同じような想いをするやつが増えないことを祈るだけだな」


 薄闇で充血した目はごまかして、さわやかな笑みを夕霧に向けた。


「お前までいなくなるなよ」

「気をつける」


 決して約束ができることではない。あの戦場を知っているからこそ。だが、今倒されるわけにはいかないのだ。


 女の声が遠くから、ふと聞こえてきた。


「――成洲なりす先生? ちょっといいですか?」

「あぁ、すみません。途中で抜けて、今行きます」


 仕事中に邪魔をしたのだ。長居ができるはずもなく、夕霧は艶やかさを持って、ブランコからすっと立ち上がった。


「帰る」


 たった一言告げて、砂埃も音も立てずに、黒のビジネスシューズは歩き出す。左右前後に揺れることなく去ってゆく、夕霧の背中に、独健の鼻声が響き続ける。


「仕事を頑張り過ぎるなよ。あ、あと、今度一緒に飲みに行こうな。あ、それから、今度俺の彼女を紹介するからな。あ、あと――」

「お前は俺と逆で、話しすぎだ」


 ふと振り返った夕霧は、フィギアスケートのスピーンでもするような縦に一本の線が入ったブレのなさだった。


 暗くならないように。心も体も固くならないように。その配慮で、独健はわざと長く言っていた。ひまわり色の髪をかき上げて、さやわかに微笑む。


「そうか? じゃあな」

「じゃあ」


 門柱を右へと曲がり、夕霧が遠ざかってゆくのを視界に端に残したまま、教室へと振り返ろうとした時、独健は直感してしまった。


 ――虫の知らせ。


 何かの境界線が、自分と夕霧の間に決定的に引かれ、下から火であぶられるような焦燥感が胸を襲う。 


「嫌な予感がするのは気のせいか?」


 門まで急ぎ足で向かったが、夕霧の姿はもうどこにもなかった――――

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