第11話 願い事の館

 駅で降りたら道案内をする、と冬ちゃんが言ったので私はついて行くことになった。


「このあたりみたいなんだけど……あった!」


 静かな住宅街の中に一軒だけ怪しい雰囲気を漂わせる小さな洋館があった。


 入り口付近にいるだけで怖い感じがする。


 でも『願い事の館』と聞いたら本当に願いを叶えてくれそうで入りたくなる気持ちになってくる。


「ついに、来たんだね」


「ミントちゃん、もしかして怖い?」


「怖くないけどちょっとドキドキしてる」


「入ろっか」


「うん」


 冬ちゃんが入り口のドアを開けて私を先に入らせた。


 うわっ暗い。


 ドアを閉めたら真っ暗になっちゃうよ。


 冬ちゃんが入ってドアを閉めた途端、暗かった館に電気がついた。


「へー。ドアを閉めたら自動で電気がつくんだ」


「でも、まだ薄暗いよ」


 ついた電気は天井のシャンデリア1つだけ。


 それでも広いので奥の方は暗いままだ。


 入り口のドアの前に敷かれている赤いじゅうたんの先には階段がある。


 窓があるような場所には全部カーテンで閉められていて外からの光が一切入ってこないようになっている。


「あなたたちのねがいごとはなあに?」


「へ!?」


 階段の方から声がしたので見てみると、女の子が階段から降りてきていた。


 薄ピンクのボブカットにかなりオシャレな服を着ている。


 見た目は小学一、二年生ぐらいでかなりカワイイ。


 まるで幼稚園の頃に読んだ絵本に出てきたフランス人形みたい。


「うわースゴイ! それってロリータファッションですよね? ピンクのワンピースに白のフリルとリボンでオッシャレー。白のハイソックスとワンピースの色に合わせたピンクの編み上げブーツもステキ!」


「……冬ちゃん詳しいね」


「え!? ま、まぁね。偶然知ってたんだよ。前にテレビで紹介していたの観てたかから」


「一回観ただけでそこまで覚えたの?」


「可愛かったからすごく印象に残ったんだよ!」


「スゴイ!」


「そ、そうかな?」


 冬ちゃんは皆がよく知らなそうな知識を持っている時がある。


 でも私が『どうして知っているの?』って聞くとスラスラ喋られなくなる。


「ありがとう。きょうのふくはきにいっているからすごくうれしい。それで、願い事は?」


「お小遣いを上げて欲しい!」


「私も!」


 冬ちゃんが答えると私もすぐに答えた。


「おこづかいね~。いいよ。それでねしゃろうのねがいもきいてくれる?」


「えっ?」


 願い事叶える人が自分の願い事を言うの?


「いいよシャロウちゃん。聞いてあげる」


「しゃろうのゆめはね……」


 シャロウが右の人差し指で冬ちゃんを指した。


「あなたにはねむってもらうこと」


 バタン 


「冬ちゃん!」


 冬ちゃんが倒れた。


「冬ちゃんをどうするつもり!?」


「ねむったままにするだけだよ。だって……」


 シャロウの背中から羽が生え、下半身から尻尾が生えた。


「あなたのちからをうばいたいんだもん。ひすいみんと」

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