第10話 路面電車の中で

「電話では聞かなかったけど場所はどこなの?」


 路面電車の中で冬ちゃんに聞いた。 


「終点の駅の近くだって。歩いて五分かからないみたい」


「そんなに近いんだ」


「それで行く人が多いみたいだよ」


 そっか、駅近なら人気だよね


 『願い事の館』か。


 行ったら願い事を聞かれるんだよね?


 何て言おう?


 『普通の人間に戻してください』って言おうかな。


 でも冬ちゃんがいるから言いにくいんだよなぁ。


「冬ちゃんは願い事決めた?」


「興味本意で行くけど一応ね。『お小遣いをアップさせてください』って」


「いいねそれ! 私もそれにする」


「……決めてなかったんだ」


 他に思いつかなかったから冬ちゃんと願い事を同じにした。


 まぁこれなら誰だって嬉しいもんね。


 上がったら、の話だけど。


「……あのさぁ」


「どうしたの?」


 冬ちゃんが少し下を向いて話しかけてきた。


「ミントちゃんとライトってさ……その……えーっと」


 冬ちゃんどうしたんだろう?


 何か言いたそうだけど。


「仲、いいよね」


「へ?」


 それだけ?


「そ、そうかなぁ?」


「ライトって男子の中でも一番女子に優しいじゃん」


 それは女好きだから。


「ミントちゃんにも優しくて気つかっているし」


 それは周りから良く見られるように猫かぶっているから。


「成績優秀、スポーツ万能だし」


 それは私もスゴイと思っている。


「まさに理想の男性じゃん」


 表面はね。


「『白馬に乗れば王子様の完成』って言っている人もいるし」


「王子様ねぇ……」


 偉そうだから王子ってより王様だけどね。


「『天使のような人』とも言われているし」


 堕天使だよ。


「ミントちゃんは優しいって思ったこと無いの?」


「無い訳じゃないけど……」


 『ライトって学校とか人前じゃ優しいな』って。


「私達くらいの異性の姉弟ってそんなに仲がいい訳じゃないし、話したりもしないんだって」


「へぇ~じゃあ仲がいいと珍しいんだ」


「そうみたい」


 仲がいい訳じゃない、か。


 私とライトの場合は話しはするけど仲がいい訳じゃないんだよなぁ。

 

 一人っ子だから兄妹姉妹に憧れた時があったけど、あんな偉そうな弟を持つより一人っ子のままや、いてもあまり話さない兄妹の方が良かったなぁ。


 こうして、終点の駅に着くまで冬ちゃんとおしゃべりしながら路面電車に乗っていた。

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