第7話 夜のコンビニ 上

「二人共。食べ終わったら一緒にコンビニに行かない?」


 家族で夕食を食べているとお父さんが私とライトに聞いてきた。 


「何でコンビニ?」


 ライトが聞いた。


「このあたりで歩いていける範囲で今の時間やっているお店ってコンビニしかないだろ。飲み物を買いたいんだ」


「なら明日スーパーへみんなで行って買いましょうよ」


 お母さんが提案した。


「今日飲みたいんだよ。二人を一緒に連れてっていい?」


「そうなの? ならいいけど」


「何か買ってくれる?」


「いいよ」


 やった! 私も好きな飲み物買おう。


「三人で夜の散歩か。楽しみだね」


 ……それって本心なの? ライト。


「よし、食べ終わったら出かける準備をしよう」


*   *   *   *   *   *   * 


「こうして三人だけになるのは久しぶりだね」


 コンビニに向かって三人で一緒に歩いているとお父さんが話しかけてきた。


 ライトがいなかったら『二人だけ』になっていたのかな?


「俺、こうして父さんと歩けるの嬉しいよ。普段は母さんと姉さんしかいなくて男は俺だけだから」


「男はライト君一人だけだからなぁ~。淋しい?」


「最初はね。でももう慣れたよ」


「偉いぞライト君」


 まだ一ヶ月ほどしか経っていませんが?


 それにしてもライトの演技はいつもうまいなぁ。


 家でも学校でも最初からいたように振舞っている姿にはいつもすごい、と思ってしまう。


「ミントちゃんも」


「へ?」


「碧から聞いているよ。手伝いを頼まれた時は文句一つ言わずに手伝ってくれたり、宿題は言われる前にやって、洗濯物はキチンとたたむって。僕はどれもできなかったからね」


「そうだったんだ」


 ちょっと意外。


 お父さんって家の手伝いとかしない人だったんだ。


 そういえば家事は全部お母さんがやっていたような気がする。


 『宿題は言われる前にやって』は本当のことだけど実は裏がある。


 私は自分の部屋で宿題をするんだけど気分が乗らない時は児童書を読んでから取り掛かるので少し遅くなる時がある。


 なので図書室から本を借りた日なんて読むことが最優先になる。いつの間にか時間が経っていて寝る時間に近くなってから宿題を始める日もあったりする。


「姉さんは妙なところはしっかりしているよな」


「そう言うアンタはどうなの?」


「もちろん同じようにやっている」


「偉いぞ。嬉しいけどこんなにしっかりしているなんて、僕の子供とは思えないな……」


「ヒドイよお父さん!」


「冗談冗談」


 歩きながら話しているとコンビニのすぐ近くまで来た。


 私達三人は一緒にコンビニに入ってそれぞれの買いたい物が置いてあるコーナーに向かった。


 私は明日食べたいパンを持ってお父さんがいる飲み物コーナーに向かった。


「決めた?」


「うん。このパンと……これ」


 お父さんが持っているお店のカゴの中にパンと陳列棚から取り出したばかりの飲み物をそれぞれ一つずつ入れた。


 私が入れた物の他にカゴの中にはお父さんが好きな缶コーヒーとジュースが数本入っている。


「お父さんが買う物はこれで全部?」


「そうだよ。ライト君はまだかな?」


 私が知っている中だとライトがコンビニに来るのは二回目なんだよね。

 

 その時におにぎりを買っていたから今日もおにぎりのコーナーにいると思う。


「決めたよ」


 ライトが商品を持ってやってきた。


「ライトはノートとシャーペンか」


「洒落ている感じが気に入った」


「わぁオシャレ! お父さん、私もシャーペン買っていい?」


「いいよ。ライト君、飲み物とかいらない?」


「麦茶が欲しい」


「いいよ」


 ライトがシャーペンとノートをカゴの中に入れて飲み物を選び始めたので私も文具コーナーに向かった。


 コンビニの文具コーナーなんて初めて。

 

 コンビニは高いイメージがあるから今まではスーパーの文具コーナーとか百均でしか買ったことが無かったから新鮮な感じがする。


 文具コーナーはオシャレな文具が並んでいたのですぐに見つけることができた。


 シャーペンの値段は……五百円か。


 普通はいくらくらいするかわからないけど有名なキャラクターが描かれていない鉛筆一ダースの鉛筆より高い。


 シャーペンってこんなに高いんだ。


 鉛筆よりも高いから大切に使わないと。


 学校では使えないから家で宿題をする時に使おう。


 私は水色のシャーペンを持ってお父さんとライトがいる飲み物コーナーに向かった。

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