第3話 2悪魔1堕天使の井戸端会議

「へー明日はミントちゃんのお父さんが帰ってくるんだね」


「うん。一年振りだから楽しみなんだ」


「そう言ってお前は明日のオードブルとやらが楽しみなんじゃないのか?」


「なにそれ。まるで私が食い意地が張っているみたいじゃん」


 私はお父さんの帰りを本当に楽しみにしているのに。


「でも確かにその歳でお父さんを嫌いになったりしないのはスゴイよ。女子って小学校高学年からお父さんのこと嫌いになり始めるから」


「そういえばそうだね」


「ミントちゃんの場合は一緒に暮らしていないからそういう気持ちになる時間が無いのかな」


「そうかもしれない」


 一緒に暮らしているからこそ嫌いになるんだよね。


 私はそうじゃないから仲がいいも悪いも無いのかも。


「お前のお父さんってどんな人だ? 銀行員だとは聞いたが」


「そうだね。説明する必要があるね」


 私のお父さん、翡翠灰白ひすいかいはくは結婚した頃は函館市内の銀行で働いていたけど私が小学校入学と同時に札幌市内に転勤になった。


 札幌にはお父さんの実家があるのでそこで暮らしている。


「どうしてミントちゃんとミントちゃんのお母さんも一緒に引っ越さなかったの?」


「お母さんの実家が函館市内にあるからだよ」


 といってもここから車で一時間くらいかかる。


「つまりここから離れる訳にはいかなかったと」


「うん。お父さんもお母さんも一人っ子で他に面倒を見て人がいないから。結婚した頃は大丈夫だったけど、だんだん心配になってあまり遠くに住むことができなくなっったみたい」


「両親の世話は大変だな」


 まさか堕天使が人間の生活を理解してくれるなんて思いもしなかった。


 ……もしかしてライトもルルアさんと同じ元人間なのかな?


 もしそうだとしたら疑問に思うことがある。

 

 一ヶ月生活していてわかったけどライトは機械についてかなり疎い。


 機械の操作が苦手以前に機械の名前自体知らない、ということが何度もあった。


 スマホやパソコンの他にもテレビや洗濯機すら知らなかった。


 今までは『堕天使だから人間のことなんてさっぱりわからないんだろうな』と思っていた。


 ……もしかしてテレビや洗濯機がまだ無かった時代の人だったとか?


「人間は大人になるとある年齢から歳を取るたびに生活がしにくくなってくるんだよなぁ。堕天使や悪魔おれたちみたいに年齢くってもずっと若ければいいのに」


「そうですよね~。でもライト様の場合その姿だとお年寄りとは別の理由で不便じゃありませんか?」


「そうでもないな。この年齢だとわからない事がたくさんあっても融通利くことが多いし」


 テレビと洗濯機を知らない事は融通利かないと思うよ。


「わからないことがあったら何でもお聞きください。私の場合見えませんから」


「お前はそれほど前に亡くなった訳じゃないみたいだからな」


「2009年の七月なのでスマホやAIスピーカーなど亡くなった後に普及し始めたり出始めたりした物はわかりませんが亡くなる前からある物なら任せてください!」


 ルルアさんが笑顔でライトに伝えた。


「頼りにしてる」


 ライトがルルアさんの頬にキスした。


 こんな事が一ヶ月近くも続いていると日常化しているので私はもう見慣れてしまった。


 ライトの機械皆無については考えても仕方が無いのでそっとしておこう。

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