短編集part1 『愛とは何か』
氏姫漆莵
愛とは何か
愛とは何か。
僕にはわからない。
『愛とは何か。』
それを答えられる人はこの世に何人いるのだろう。
僕にはわからない。
愛には色んな形がある。感じ方も人それぞれで、与えてくれる相手によって愛だと感じるときもそうでないときもある。
愛の伝え方だって色々ある。
わからないけれど、僕はそう思う。
叩かれて愛を感じる者。
束縛されて愛を感じる者。
言葉にされて愛を感じる者。
抱き締められて愛を感じる者。
言葉で伝える者。
暴力で伝える者。
音楽で伝える者。
文字で伝える者。
ほら、それぞれだ。
少し哲学的な、いや、賢そうな話をしようか。
古代ギリシアによれば、愛とは四種類あるらしい。
ストルゲー、アガペー、フィリア、エロス。
つまり家族愛、献身愛、友愛、性愛 。
最初の三つは人を大切にする事なのだろうか。
最後のものは欲望のままに生きることなのか。
四つ全て人を大切にするものなのだろうか。
四つ全て欲望のままに生きることなのだろうか。
僕には分からない。
話を戻そう。つまり僕が言いたいことは、
「何故それが愛と言えるのか。」
「錯覚しているだけではないか。」
これだけだ。
こう思う僕はおかしいのだろうか。
何かを好きであることに理由が無いように、何かを愛することにも理由は無いのだろうか。
よく考えれば、好きであることには根拠がない。ならば、好きであるかどうかなんて自己申告の、保証のない言葉でしかない。
愛もそれと同じなのだろうか。
でも、人は愛される事が大切だと説く人がいる。あと、道徳とか倫理とか。
自分を愛してくれ、大切にしてくれと。
自分を愛せない人に人を愛することができるのか。愛が分からないものに人を愛せるのか。
愛が分かる者にはそれが可能なのだろうか。
わからない。だから。誰か、僕に教えてくれ。
溺れるような愛を。
僕が愛されていると確信するような愛を。
愛たるは何かを教えてくれ。
でも、きっと僕は教えられても、与えられも返すことは出来ないだろう。
でも、教えて欲しい。与えて欲しい。
どうして?って。だって。
恋人が出来ると世界が変わるのでしょう?
キラキラ輝いて見えるのでしょう?
色が鮮明になるのでしょう?
僕は見たい。その美しい世界を。
僕は理解したい。愛する人の事を語る人の事を。
僕は知りたい。愛は美しいものか、醜いものかを。
ああ。でも、僕には理解できないと思う。
今まで愛を囁かれても僕には理解できなかったから。
伝えられた瞬間は嬉しくもあり、恥ずかしくもあった。
けれど、後から考えると空虚なんだ。
何の確信も持てない、空っぽの言葉にしか思えなかった。
かと言って、束縛されるのは真っ平だ。
僕の態度は相手を不安にさせる。
僕から愛を伝えること何て無いからだ。
でも、仕方ないでしょう?
僕には愛がわからないのだから。
束縛されればされる程、僕は苦しくなる。
堪らなく苦しくなる。
逃げ出したくなる。
離れたくなる。
どうしようもなく。
きっと僕は相手を好きでは無かったんだ。
相手がいくら僕を好きでいてくれても。
愛していてくれても。
いや、僕は向き合っていなかったんだ。
相手にも、自分にも。
僕は自信がないんだ。自分自身に。
自信がないから、
「好きでいられる資格も、愛される資格もない。」
そうやって生きてきたから、こんな嫌な人間になってしまったんだ。
結局僕は相手から逃げ出して、相手を傷つける。
傷つけるくらいなら、最初から繋がりなんて持たなければ良かったんだ。
でも、僕は見たいんだ。
誰に何と言われようとも理解したいんだ。
例え相手を傷つけようとも知りたいんだ。
だから、僕に。
僕に愛を教えてくれ!!
溺れるような愛を!
愛されていると確信する愛を!
愛たるは何かを!
僕に、教えてくれ。
嫌いな食べ物があると人生損するという。
なら、愛を知らなかったら損するんじゃないだろうか。
だから教えて欲しい。
こんな身勝手で他力本願な僕は、こんな理由で愛されたい僕は、愛される資格がないのだろう。
わかっている。
わかっているんだ。
ああ。そうだ。僕は飢えている。餓えているんだ。愛が欲しい。愛されたい。愛し合いたい。愛を捧げたい。愛を語りたい。愛を語り合いたい。
愛を知りたい。
愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛。
愛とは何か。いくら書いてもわからない。
欲しい。飢えている。餓えている……。
ああ。
誰か僕を救ってくれ。
誰か僕を愛してくれ。
誰か僕に教えてくれ。
誰か僕に囁いてくれ。
誰か、誰か、誰か……。
"愛"とはなんだ……?
短編集part1 『愛とは何か』 氏姫漆莵 @Shiki-Nanato
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます