第31話 出場者選定

リアムは自宅に戻りサナから受け取ったデータを確認していた。

その合間に各種目の詳細を読み流しルールもしっかりと確認している。

無属性魔導による単一系魔導と全属性の基礎の基礎の属性魔導のテストがあった。

詠唱の正確さ、速さ、起動した魔導の性能などをよく見て各種目に適切な人を選ぶ。

これが重要だ。

いかに各種目に適した人物を選べるかで試合結果が変わってくる。

担任教師に守秘義務を犯させているのだから真剣にやって決勝ラウンドに進めないと申し訳が立たない。

データを元にある程度は候補を絞り込むことはできたがそれでも悩むところはまだまだある。


「…キールをどう扱うかが問題だな」


リアムは情報を整理しつつ悩ましげにつぶやく。

キールは魔導実技のテスト全てにおいて好成績だが尖った部分がない。

いわゆる器用貧乏なタイプだ。

魔導実技のテストはすべての平均を取って成績をはじき出すのでキールの成績は一番になっている。

ただ、サナからもらったデータだけでは判断材料が少なすぎる。

基礎の属性魔導の扱いだけでは種目を選ぶ材料としては足りない。

性格や癖なども含めて判断したいところだ。

だが、リアムは普段からよく観察もしないし会話もアリス、レオンを除いてほとんどない。

そのため、リアム自身ではこれ以上情報を増やせなかった。

そういう経緯でエマを護衛する際に使い魔を通じて警備していたカグヤの所感を尋ねることにした。

彼女はエマの護衛へ最善を尽くすため、使い魔を用いて調べうる限りの学園の情報を集めている。

その中から五組の話を聞こうということだ。

あらかじめ、話が聞きたい旨は伝えてある。

リアムは魔力を流して通信用魔石を起動する。


「こんばんは、カグヤさん」


『あら、こんばんは、リアムくん。この通話はあれね?リアムくんのクラスの生徒の特徴を教えて欲しいっていう…』


「さすがはカグヤさん、話が早い」


リアムが感心したような声を上げる。


『じゃあ、まずはよく話しているアリスちゃんから話そうかしら』


とカグヤは話を続けた。


::::::::::::::


『最後にキールくんは良くも悪くもバランス型、イメージ的には得手もなければ不得手もないと言った感じかしら…これで全員ね。…役に立ったかしら?』


とそもそもこの情報が何に使われるかよく知らされていないカグヤは不安そうに尋ねた。

戦闘もこなせるがどちらかというと知力を使う側の人間であるカグヤの視点はかなり新鮮であり選定の手助け、後押しとなった。


「ええ、バッチリです。ありがとうございました」


『うん、役に立ったならいいわ。またね』


と言って通信が終了した。

通信が終わるのを見計らったかのようにエマが部屋に入ってきた。


「兄さん、ご飯できたけど…もう少し待ったほうがいい?」


とエマが可愛らしくて首を傾げ尋ねる。

フリル付きのエプロンがエマの可愛さをさらに強化している。


「そうだな、カグヤさんの話を含めて仮決めしておきたいかな。そこまで時間はかからないからそこに座ってくれ」


とベットを指差して言う。

エマは小さく頷き、ベットに座り込んだ。

ちょこんと座ったエマは可愛らしくまるでお人形さんのようだった。


「兄さん、何をしているの?」


と棒切れに魔力を流し文字をかけるようにしたリアムにエマが問いかけた。

リアムはその棒を使って、筆記を始める。


「成り行きで特別アドバイザーなんていう大層な役割をもらったんだ。…それで出場種目を決めることになってな」


リアムの言葉を理解したエマの顔がパァっと明るくなる。

リアムは文字を書く目を少し逸らしてエマを見た。


「ついに、兄さんの凄さが分かってもらえたのですね!」


エマの嬉しそうな笑顔がリアムに向けられる。


「そんな感じじゃないさ。そう言えばエマは何かに出るのか?」


「…本当は秘密なんだけど私はスティールエリアに出るの」


とサクッと答えた。

兄への信頼、親愛の感情があるからこそエマはすぐに答えたのだ。

普通なら出場者の情報が流出するのはかなりのディスアドバンテージになってしまう。

だが、エマにとって親愛なるリアムの質問に答えないなんてことはあり得なかった。

まあ、エマの能力などを鑑みて出るならスティールエリアかポゼッションスターだと予想していたのでそこまでディスアドバンテージは生じていない。

といいつつもポゼッションスターでなかったことに少し安心しているのもまた事実である。


「そうか、エマが出るなら優勝間違いなしだな」


「ええ、期待に添えるように頑張るので兄さん、観に来てください」


エマはとびきりの笑顔を見せながらそう言葉を返した。


「ああ、活躍する姿見せてくれよ。さて、ご飯を食べようか」


とリアムはある程度書き終えた紙を片付け、立ち上がりながら言う。

エマも続けて立ち上がり、2人で食卓に向かった。

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