第23話 おはなし

リアムは炎獅子を拘束するホロウの上から魔力を外部に流すことで魔導の起動を封じるロープを巻きつけていく。

もちろんホロウの上からでは炎獅子に対してロープの効果は発揮できない。

その上、ホロウの変形を行う際に流れる魔力がロープで無力化されてしまうため変形不能になってしまっているだけの状況になっている。

だが、括り方を工夫してやることで隙を与えずホロウを解除した瞬間にロープを締めて炎獅子のみを拘束することができた。

加えて術式を無力化する【スペル・ブロック】を炎獅子の服に付呪エンチャントし抵抗できないようにした。


「慣れた手つきだな。あの作戦も見事だった。ワイヤーで拘束してブレードで仕留めるという単純で読みやすい作戦の裏にもう一つの策を走らせておいたとは」


炎獅子は感心した様子でそう言う。

一呼吸開けて炎獅子は


「単純で対処しやすい策を大々的に見せることでその奥にあるものへの注意を奪う。魔導師ウィッチャーの戦い方というよりは暗殺者アサシンのような動きと言えるな」


と何か分かったかのように続けて言った。

炎獅子は敗者とは思えないほど冷静な態度を見せていた。


「情報を吐くつもりがあるのかないのか言え」


リアムは炎獅子に刀を突きつけて冷酷に言い放った。

炎獅子は乾いた笑いとともに


「はは、そうだったな。話す、話すよ。まだ、死にたくないからな。…最後の一人、ヒューイは地下の門の前にいる」


と脅しに返した。

リアムは即座に情報を頭に取り入れ今までの状況と照らし合わせ審議を確かめようとする。

地下の門とは間違いなくエグゼの門のことを指している。

地下に到達するには言うまでもないが一階を経由する必要がある。

つまり、ホロウの索敵に引っかかっていないことが不自然になる。


「…嘘か?いや…」


リアムは脳をフル回転させて情報を元に頭の中で再現を行う。

最後の敵が出ていったのはエマのピンチがホロウから教えられるよりも前であると考えられる。

その時の索敵範囲を思い出す。

ホロウはリアムとエマの間を埋めるように索敵範囲を広げていた。

エマがあの男ジャンに連れていかれた空き教室はリアムに近づく方角である東向きに移動していた。

ほか二人の存在を感知できなかったのが西に向かったからだと考える辻褄が合う。

そこから直行で地下に向かったなら発見できなくてもおかしくはない。

続けて先日の学校案内を思い返す。

地下の門はおそらくエグゼの門のことを指している。

地下に降った階段までに通ったルートから方角を算出する。

結果、教室の西側で間違いない。

つまり、炎獅子が嘘をついているとは言い切れない。


「本当だな?」


ライオンすら萎縮するような覇気を纏った声で尋ねる。

しかし炎獅子は怯える様子は見せず


「負けるとは考えていなかったとはいえ話すと言ったんだ…嘘を吐くようなつまらない真似はしない」


とまっすぐ返す。

炎獅子はまるでこの後の展開を楽しみにしているかのような様子でリアムを見つめている。

出来ることなら地下に索敵用のホロウを送り込んでおきたいのだが残りの容量キャパシティを考えると厳しいものがある。

ちなみに炎獅子の位置を確認し硬化の魔導を与えたものは【ファイア・ヴォーテックス】で焼き払われすでに使用不能である。

つまり


「直接行って確認するしかないか」


という結論にたどり着いた。

リアムは鋭い峰打ちで炎獅子の意識を刈り取った。

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