第21話 虚を突く作戦
『行ったぞ、動いてもいいぞ』
ホロウの助言を聞いてリアムは体を起こす。
体を叩きつけられたのは事実だがワイヤーの減速と植木がクッションの役割をしたことで打撲と切り傷で済んだ。
リアムは壁にもたれかかり苦しそうに呻く。
体を足からゆっくり確認していく。
全身ズタズタになっておりかなり激しく出血している。
呼吸するだけで全身が悲鳴をあげるのがわかる。
「癒しの精霊よ・白き光の祝福を我に」
【ライフ・ヒール】の詠唱をし体を癒そうとする。
術式が起動し白い光がリアムを覆う。
傷口がわずかに狭まるのが見えた。
【ライフ・ヒール】は命属性の魔導であるため適性の低いリアムでは出血と痛みを抑えることが限界で完全回復には程遠い。
少し動くだけで全身から血が滲み出る。
真っ赤に染まったシャツを綺麗にしようかとも思ったがまた汚れるだけなので無駄に魔力を消費する必要もないと判断した。
「ふー、さてどうやって奴を倒すかだな」
と体を動かすことで生じる痛みを確認しながら呟く。
『
「無しだな、そもそももう一人の位置がわからない。どれだけ時間があるかもわからない邪魔されないためにも奴を倒すのが先だ」
『もう一人が絡んでくる可能性は無視か?』
ホロウが試すように尋ねる。
「ないな、さっきの先頭で絡んでこなかったことに加えてエマを襲った奴と炎獅子は警備、もう一人が何かしらの最終調整を行なっていると考えるのが一番しっくりくる」
『なるほどな、炎獅子ともう一人を相手にするのは厳しいな…時間が幾ら残っているかわからない。早く行動しないと時間切れになるぞ』
ホロウの忠告を受けてリアムは痛む体を持ち上げる。
「索敵を炎獅子を追うように再調整してくれ、後は戻して少しでも容量を回復させろ」
リアムはそう命令し、怪我で力が入りづらくなっている足を無理やり動かしフラフラと歩き始めた。
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3階から落下してから十数分後
作戦会議と並行して周囲の確認を終えたリアムは三階に上る階段のすぐ前に立っていた。
ゆっくりと深呼吸しながらリアムは覚悟を固める。
「考えうる限りで最善となる作戦は立てた。やり損ねればそこからはアドリブだ」
やり損ねた時のことを考え少し不安げな声を出すリアム。
いくつかのプランを
それでも策が当たれば確実に倒せる。
『相手の虚を突くのは俺らの十八番だ、仕留めれるさ』
ホロウは自信のある声でそう返した。
「そうだな、ホロウの言う通りだ」
ホロウに励まされ元気を取り戻したリアムは階段に足を運び三階へと向かった。
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