第13話 呼び出し
リアムは新入生歓迎会が終わるとまっすぐ家に帰った。
ちなみにエマも新入生歓迎会の片付けを新入生にやらせるわけにはいかないという理由で生徒会の仕事はなく、一緒に帰ってきた。
カバンを片付け、部屋着に着替えた二人はソファーに向かい合う形で座っていた。
夕食の準備には少し早く、出掛けるには遅い、そんな時間だ。
リアムは読書をし、エマがその様子を眺める。
そのように落ち着いた時間が過ぎていった。
どれくらい経ったかは分からないがリアムが手に取った本を5分の2ほど読み終えた頃、エマの持つ学生証の役割も果たしている多目的魔石、通称ルーンボードが光った。
エマは手帳型ケースに入れられたそれを開く。
そして、その魔石に魔力を流し、送られてきた情報を展開する。
ホログラム的に浮かび上がった一枚の紙を魔導的情報に変換したもの。
学園から支給されるルーンボードはコスト削減のために通信方式は基本的に簡易方式を採用しているので色の情報は欠落し、青白い色で全てが構成されていた。
「エマ、何が書いてあった?」
とリアムはなるべく本から視界を離さないようして尋ねる。
学園から支給されているとはいえルーンボードは基本的にプライベートな情報を多分に含んでいる。
プロテクトが張られているとはいえよく見ると内容が読めてしまう。
許可なく見るのはよろしくない。
「なんか今週の休みに今日の分の補講が入るっぽい」
エマは“ほら”とルーンボードをリアムの方へ動かし、見せようとする。
リアムも本からルーンボードへ目線を動かす。
プロテクトの範囲を出たことで情報が鮮明に見えるようになる。
リアムはさっと情報に目を通した。
だが、エマの発言以上の情報はなかった。
が、リアムとしては自分のクラスの担任が連絡係だったことに驚いた。
“気怠げ”という言葉を体現したかのような担任に連絡係が任せられていることが意外だったのだ。
ちなみにこの世界では1日が7つで一週、一週が4つで1月、1月が12つで1年という感じで年月日が定義されている。
学生の休みは週2日、一週は5日間連続の学習日と2日間の休養日に分けられている。
今度はリアムのプライベート用のルーンボードが光る。
通信用魔石を使わないということは家絡みかと考えながらルーンボードを触る。
ルーンボードは通信用魔石に対して情報の秘匿性で優っている。
リアルタイムでの会話ができないというデメリットはあるが秘匿性に変えられない話は多い。
リアムは外部から見られてもいいように高度に暗号化された文字を読み解く。
解読には少々手間がかかるが慣れているためそこまで時間はかからなかった。
そして、その内容はリアムの予想通りのものだった。
「エマ、すまないが俺は本邸の方へ行ってくる。なるべく早く帰るようにするが俺を待つ必要はない」
リアムは上着に手を通し、まっすぐ玄関へ歩く。
エマはその後ろをついてきている。
リアムがドアノブに手をかけると
「兄さん、気をつけて」
とエマが声をかけた。
「わかった、行ってくるよ」
とリアムは言葉を返し外へ出た。
エマは一緒に外に出て、兄が見えなくなるまで見送った後、急ぐようにキッチンへと向かった。
本日は軽いお手軽料理の予定だったが兄を待つ時間ができたので下準備から時間のかかる料理へと予定変更となった。
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