第52話 エピローグ…或いは蛇足


 漁をする小さな船。


 漁師の親子が、仕掛けた網を引いている。少年が引き上げた網の中にきらりと光るものを見つけた。好奇心に駆られ手に取ってみるとそれは小さな小瓶。


 どうやら中に紙が入っている。


 少年は、きっと誰かが出した手紙かなと、ロマンチックな気持ちになり瓶のふたを開け取り出してみた。


 所々、彼には難しく、よくわからなかったが中に書かれていたのは……。



 『


  毒殺 少年

  撲殺 外科医

  絞殺 女

  磔殺 カメラマン

  電殺 青年

  刺殺 執事

  斬殺 老婆

  擲殺 マジシャン

  銃殺 メイド

  消滅 ホスト

  自殺 探偵


   あの島で起きた本当のことを、まだ君は知らない。

   勝利者は誰か。


   …………

    …………


     怪盗キマイラ。


  』



 手紙を手に持ちながら、水平線の彼方にわずかに見える孤島に目が行く。


 しばらく少年が、いろいろ思いを馳せながらボーっとしていると、父親にどやされた。


 「おい、何してる。手が止まってるぞ」


 「怪盗って何? 父さん」


 「はぁ? 何の話だ?」


 少年の手元を見て。


 「そんなくだらんもんに、気ぃ取られていると大事なものを盗まれるぞ! 銭を稼ぐ貴重な時間をな!」


 彼はその言葉に軽く頷くと、手紙を丸めて瓶に戻した。


 もう一度しっかりとふたを閉めて。


 力いっぱい思いっきり遠くへ投げる。


 小瓶は大海原の波にのまれ、すぐに見えなくなる。



 やがてそれ自体では浮かぶこともできず、深い深い海に沈んでいく。


 深く深く暗く。もう誰も目にすることはない。



 ー終わりー


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Andダレモイナクナル 亜牙憲志 @KAPIHERO

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