第7話 白い手

でも、そうして「あたし」は、2番目、3番目・・・の男達と


食事をして、綺麗に言えば、その後、男と女の愛の交わりをして


対価を貰い、


或いは、食事抜きで、いきなり汚い連れ込み小屋で、身ぐるみ剥がされて


押し倒されて、札束を目の前でチラつかされながら


男の上に馬乗りになったり、目隠しされて、鞭で打たれたりされて、


そのお客の男が、満足すると、その札束を貰い、拾い集めて


其の侭、連れ込み小屋を出て、朝の食べ物を買って、裏路地の汚い、狭い貸部屋へ戻ると


(じいさんとは、もう迷惑かけられないので、お礼を言ってさよならをしていた。)


今度は、いつもの発作ではなく、頭の中が石のように固まり


突然、能面のような顔の侭、そこらにある ありとあらゆる、切れそうなもの


飲んで転がしておいた、酒のガラスの瓶の割れた欠片、


いつもの発作で、壊したガラスの鏡の破片、カッターナイフ、パン切り包丁


ペンから、普通のキッチンナイフ、


とにかく、手当たり次第に、掴んで 体中を交互にそれらを、掴んでは


ぐさぐさと、刺した。


刺すだけでは、飽きたらずに、切り刻んだり、抉ったり、切り落としたり


とにかく血だらけになりながら、自分と言う物を


唯の、肉片にした。


固まった筈の頭で、死ね、死ね、と、いつどこで知ったのか


急所と言われるところにも、刃をたてて


何度も、死んだ。


その時の、その動作をしている時の私の手は、輝くように白く、美しい


まるで雪原に降り積もった、まだ誰も土足で足跡など残していない


何処までも続く、永遠の雪の様な、幻想的な光を放つ、白さだった。

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