「人を継ぎ接ぎにしてはならない」

 馥郁の街、トリックストリートの国民三十五ヶ条の第十七条に「人を継ぎ接ぎにしてはならない」と記されている。

 ご存知の通りこの街で人を菓子にするのは禁忌である為、誰もこの条約を破った市民はいない。しかし厄除けの日に、異形に仮装した者の前に、件の人間が現れるという。

 大抵は不吉だと追い払う。が、そうでない者には話しかけ、水玉の胸布の中から赤い物を取り出して渡す。そしてそのまま逃げ出すらしい。香りは、チョコレートに似ていると言われている。

 余談だが、それは数十年窓際に置いても尚、全く溶けないのだそう。だがそれを食べた人がどうなったかは、まだ誰も分からない。

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