「エル・デュー」という言葉がある

 「エル・デュー」という言葉がある。これは欧州では「連理草ラティルス」を指すが、ブランズ公国ではかつて国の名残から「竜の誘い」と指すそう。

 数十年前ほど、ある男性が日課で森奥でジョギングをしていると、一人黒髪の子供が乾いた湖の側のコテージに佇んでいた。声を掛けると、迷子になったと言う。男性は彼を森の外へ出したが、子供の姿は忽ち消えたと男は日記で記した。

 数日後、男は姿を消したらしい。ただ乾いていたらしい湖は澄んだ水に満ちて、真っ赤な連理草達が咲き誇っている。

 その場所で「エル・デュー」と呼ぶと、側の花は赤く変貌するらしい。男は行方知らずだが、今日もある森の湖は赤い花で満たされている。

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