第10話 異世界転生とナショナリズム

 異世界転生ものの作品には、現代日本の知識や道具などを使って異世界で活躍したり賞賛されるようなエピソードもあります。携帯電話とか 科学の知識の応用とか 農業技術とか。


 また飲食店の入り口が異世界につながって、その異世界の住人がそのお店の日本の料理を絶賛して美味しそうに食べる作品もあります。


 異世界と日本の特定の場所つながって 現代の最新装備の軍隊がその異世界に送り込まれ、そこの中世時代相当の装備の軍をフルボッコにする作品もあります。その異世界の住人が現代日本に来ると様々な高い技術力に感心するようなシーンもありました。まあ、中世相当の時代の人が現代の世界にくれば、そうなるのだとは思います。



 勝手な思い込みかもしれませんが こういうシーンを見て、転生した主人公が育ってきた日本の文化や技術や食べ物ってすごいだろう!!っていうようなメッセージがあるような印象を受けるのです。(転生ではない作品もあるかもしれませんがあえて転生という語を使います)

個々の転生した主人公の強さもさることながら、その背景にある日本というのもすごいんだ、的な。



 ある意味 ナショナリズム的な表現かもしれません。



 ナショナリズムとは色々定義があるようですが、だいたいは 自分の属する国家や民族を大事にしたり誇りを持つような考え方、というようなものだと思います。オリンピックやサッカーのワールドカップの時に日本人が日本を応援するようなものかと。この言葉は戦前や太平洋戦争中に軍国主義のもととなったような考え方なので良いイメージがないようにも思えますが本来はそんな悪い意味の言葉ではありません。 ただ、行き過ぎてしまうと軍国主義やファシズムに陥ったり、合衆国の大統領が行おうとしている移民排斥のような政策に繋がるなど負の面もあるのは確かだとは思います。




 昭和の時代、日本は敗戦後 必死に経済の再建を目指し、高度経済成長を遂げました。労働や消費は美徳であり、一生懸命働いて、自家用車やテレビ、エアコンなど便利な生活用品を買い求め、豊かな生活を目指して努力する現実的なスタイルでした。この時代、ファンタジーな世界には人々の目はあまり向かなかったかもしれません。


 そのころの日本人には 世界でも豊かな先進国としての自負や誇りがあったかもしれません。中国や他のアジア諸国に対しても経済的な優越感というものはあったでしょう。


 しかし、今の時代は状況はかなり変わってきています。中国でも経済的な成長は著しく確か日本ももう追い抜かれている状態だったと思います。中国では高層ビルが立ち並んでいき、新幹線に相当する高速鉄道の敷設がどんどん進んでいったり、航空母艦を建造したりして、軍事面でも将来日本を脅かしそうな方向に進んで行っています。他のアジア諸国も経済的に成長してきて昔とは変わってきています。

 そんな国際情勢の中で日本人の昔持っていたような優越性は現実世界の中では失われつつあります。

 いくら働いても昔のように年収も増えないし、ブラック企業に搾取されるような労働者も多くいる世の中です。このような閉塞感がただよう中で発生したブームのひとつとして異世界転生ものがあるのではと考えたのです。




 確かにもう アジア周辺諸国に対して経済的技術的な優位性は感じることはできないかもしれない。

 しかし、ファンタジーの世界で日本の技術力や文化の素晴らしさを示せれば、再び過去にあったような優越性を感じることができるのではないだろうか!?

 そう、これはこの閉塞感の漂う時代に咲いたナショナリズムの一形態なのかもしれない、、、、

  

 異世界転生のブームというのは確かに日本の経済的優位性がそれほど強くなくなってきてから起こったもので考えるとあながち突飛な考え方ではない、、、、はず、、、

  いや さすがに 今回はちょっとごとが過ぎました。

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