第4話 なぜ中世が多いか

 産業革命後の世界の物語は基本的に少ないと思います。近代に入ると武器では銃砲火器類が発達し、そういうものでモンスターと戦えば圧倒的に人間側に有利になるし物語として正直面白くなくなるでしょう。機関砲でなぎ倒されるモンスターというのもどうなんでしょうかっていう感じですし。ただの戦争みたいです。弓矢や剣で戦うシーンは勝負としての話を作りやすいでしょう。強力な魔法で敵を一気に粉砕するような場面もあると思いますが、しかし強力な魔法というのは、誰にでも使えるようなものではなく一部の選ばれた優れた者しか使えないような制約は設定としてありますし、そこが強力な攻撃力を持つ近代兵器とは違う点です。近代の銃火器類は一定の操作訓練をすれば基本、誰にでも使える物ではあります。

 また近代社会は国家や政府、軍隊などの力が大きくなっている状態ですので、冒険者やギルドなどがモンスターの討伐をするような設定も不自然になってしまう感じもします。


 中世が多いのは、銃火器類のないため ある意味、敵と対等に戦える環境であり、国家の力、中央集権的な権力がそれほど強力ではない世界のため、ギルドや冒険者が活躍しやすい環境を設定しやすいからなんだろうと思います。

 時代的にもっと遡った狩猟採集の石器時代とか、そういう時代に転生することはなさそうです。でもあったら個人的には面白いような気も。


 一方で異世界転生の物語の中では、中世の世界観を基本としながらも服装や食事、建物や社会制度などは近代や現代的な部分も結構あったりします。例えば中世の食事でいえば、料理は手づかみで食べたりだとか、朝食を食べる習慣はなかったりだとか、お皿がなかったりだとか(硬いパンを食器がわりに使用していたらしい)などが実際のところらしいです。しかし作品の中での食習慣はほぼ現代日本的なものの感じだったりします。スプーンやナイフを使って食事したり、お茶飲んでるとか(これらは近世になって一般的に広まったらしい)など。しかしあまり中世のスタイルを忠実に再現しても、現代人の感覚からすれば不自然になるだけだし。

 実際の中世の風俗や習慣にこだわって忠実に再現した描写をすれば 物語に深みがますかもしれません。しかし読み手の側も実際の中世の風俗や習慣にどれだけ知識を持っているかと考えれば、この辺りはイメージがしやすい描写でまとめるほうが無難なんだとは思います。

 もともと あくまで「中世っぽい」世界なんであって、実際の歴史上の中世の時代ではないですし。

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