第3話 なぜヨーロッパが多いか

 舞台が中世ヨーロッパを基調としたものが多いのも、作者や読み手である大多数の日本人がなんとなく漠然としたイメージを共有しやすいといったことがあると思います。RPGゲームなども中世ヨーロッパの世界観を基調としたものが多いし、ゲームが好きな人にとっても騎士や魔法使いやモンスター、悪魔が登場する世界などは感情移入しやすい環境なのでしょう。

 そもそもRPGゲームが中世ヨーロッパ世界のものが多いのも、日本人が子供の頃に読んだことのある童話や昔話はヨーロッパのものが多いことが大きいかと思われます。グリム童話やシンデレラ、白雪姫、七人の小人、ジャックと豆の木など何かしら絵本なんかで親しんだ作品は多いかと思います。ヨーロッパ以外の作品ではシンドバッドとかアラビアンナイトとか?ないわけではないですが、しかし心の深層に残るものはやはりヨーロッパ産のものが多いと思います。

 明治時代以降、近代化を目指す日本は必死に西洋の文物を輸入し、様々なものを取り入れる過程でこういった文学作品も多くの日本人の目に触れることになったのだとは思います。


 日本の中世などが舞台の作品もあってもいい感じもしますが、そこに魔法などの要素が持ち込まれると、なんか違う感もあるし、あまり現実の日本的要素が濃いものも「異世界」としては成立しにくいことはあるでしょう。同様に中国やアジアを舞台にしても西洋よりは身近な感もあります。


 転生というのが非日常の世界を強調するならば、やはり距離的にも日本から遠く離れた異文化圏の地域であり、かつ書き手と読み手のイメージが共有しやすいものを選ぶと必然的にヨーロッパあたりになるのだろうか、と漠然と考えたりします。例えば距離的・時間的に遠い異文化圏というと南米インカ帝国やらアステカ帝国やら古代メソポタミア文明やら、アラビアなどのイスラム世界やら、かつてアフリカ大陸内部に栄えた黒人国家マリ王国やらソンガイ王国やらそういうのもありますが、その舞台の街並みや文化といった内容は、パッとイメージしにくいです。

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