Break2−3

 客の男は、生き方を決めた理由を、羨ましく聞いていた。

 自分の運命とか、生まれてきた意味とか、生きがいとか、進路を問われたときに頭の中を巡った。

 自分は、ここで学んだことと働くということとをどう繋げていけるのだろうか。

 Rufellviaでカフェオレをいただくと、少し落ち着いた。答えは出ないけれど、目の前のことに集中できた。

 不意に、店主がこちらを見た。そして、柔らかに微笑む。

「まぁ、要するに、こいつらはここにいるのが好きなんだよ」

 あぁ、そういうことか、と腑に落ちた。

「……好きか」

 客の男の小さなつぶやきを、店主は聞き逃さなかった。

「そう。ここにいる時間を長くするためには、ここで働くのが一番だろ?」

「店長も、ここにいるのが好きなの?」

 リタが尋ねると、店主は、昔へと思いを馳せるような顔をした。

「あぁ、ここは思い出がたくさんあるからな」

 客の男がシディアを見ると、明るく笑っていた。彼も、進路について、一つの道筋を見つけたようだ。

「好きな場所か……」

「見つかりそうか?シディア」

「やれるだけやってみます!俺もここが好きだから、護りたいし」

 そう言うシディアの言葉の意味はわからなかったが、店主もリタも嬉しそうに笑っていて、テンは照れくさそうにそっぽを向いていて、なんとなく空気が優しく、心地よさを、客の男は感じていた。

 

 Rufellviaルフェルビア―――アルアの町の小さな噴水広場にある、チョコレート色をした外観の店。漏れ聴こえるは、ギターの音色。ここに来ると心がほぐれる。


Break2・END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る