第25羽 悪夢?

 僕たちは、午後から何時もの狩場にやって来た。スライムを何体か倒した後、小さな丘に登り3時のおやつにホットケーキを食べ、みんなでお昼寝タイムだ。みんな直ぐに夢の世界へと誘われた。


 僕も夢を見ていた、それは日本に住んでいた頃の夢だ。黒崎兎折くろさきとおりという、僕の幼馴染の女の子だ。顔が思い出せない。というか、何故か顔の部分だけが光りで照らされていて、分からない。だけど、口元だけが見えた。


 彼女と僕は、家が近所で学校も同じ学校に通っている。付き合っているわけではないが、ほとんど毎日登下校を一緒に行っている。僕からしてみると、優しいお姉さん的な存在だ。身長も僕より少し高い、胸は無いけど…まぁ、それはさて置き。この夢は多分、僕が死んだであろうあの日なのだろう。


 その日は、4月4日僕の誕生日だ。15歳の誕生日だ。今日は、2人の家族と一緒に誕生日会をする予定だった。なので、今日はどこも寄らずに真っ直ぐ家に帰る途中だったと思う。多分……


「少し早いけど、これ私からだよ」


「うん。ありがとう」


 赤いリボンの着いた、可愛いピンク色の包みに入った何かを、彼女は僕にくれた。

 何かな、何かなと、内心ワクワクしながら包み紙を開けた。少し彼女の笑顔が気になったけど…


「!?」


「私のセンスいいでしょう」


 まさかまさかの、中に入っていたのは、すっけすっけの白ワンピースだった。これがまた凄く良い生地を使ってるのが、手触りだけでわかってしまう。奥の方に、まだ何かがあった。僕は少し嫌な気がしたけど、それを引っ張り出し、広げた。


「きゃあ、リオのえっちぃ」


 そんなことを少し棒読みで彼女は言った。僕が取り出したものは、さっきのワンピースとセットになっているが、透けていないパンツだった。(女物の)


 彼女、兎折は僕をどうしたいのだろうか?決めた、彼女への今年のプレゼントは、男物の服にしよう。


 だがこれがまた、2人とも似合ってしまうのだ。僕は童顔で、彼女は美形な男のような雰囲気を感じるから、僕は男装している女の子に、兎折は女装をしている男の子に見えていることだろう。


 警察にも、何度かお世話になっています。まぁ確かに、可愛い動物とか、もふもふとか服とか、好きだけどさ、これを着るのは、ハードルが高い。


 まぁ、せっかくのプレゼントだ。貰っておこう、着るかどうかは、あとで考えよう。


(ここだ、ここで僕は死んだはず)


 我が家まであと10分というところで、僕たちに居眠り運転のおじいちゃんの車が、猛スピードで突っ込んできたのだ。


「危ない!!」


「え?」


 あの時の僕はその車に気付かないで、交差点に出てしまったのだ。兎折は僕をつき飛ばして、僕の身代わりになってしまった。彼女の血が足元まで慕って来る。不慮の事故だった。


「はっ!はぁはぁはぁ」


 ここで僕は夢の世界から現実に戻ってきた。


(そうだあのショックで、僕は精神病にかかってしまい。衰弱死したんだ)


 全部を思い出した。今頃兎折も別の世界で、転生しているのだろうか。もし、転生しているのなら、元気に生きて欲しい。


 今思うと僕は、兎折のことが好きだったのかもしれない。兄弟ではなく、恋愛的に……


 そういえばあの時、兎折から貰ったあの服は、どうしたんだっけ?多分父さんたちが、一緒に墓に入れてくれたと思うんだけど。あの時以来ずっと、寝るときも抱えていたから。アナウンスさんに尋ねてみることにした。


『やっと思い出したみたいですね。でしたら、これをお返ししますね』


 雲を裂いて光が僕にだけさしていた。そしてその間から、ゆらゆらと見覚えのある包みが降ってきた。僕はそれを受け取る。その包みを見ていると涙が溢れて、僕は包みから服を取り出して、顔を埋めた。


「主人どうしたのですか?大丈夫ですか?……うっ!頭が割れそう」


 心配そうに僕にすり寄ってきた黒兎が、突如として苦しみだした。異変に気付いたイースターさんと、ソニカが目を覚ますのであった。

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