第20羽 マイナス?

 朝最初に目を覚ましたのは僕だった。2人を起こさないように、こそぉ〜と抜き出した。川辺に顔を洗いに行き、周りを見回すと子連れの魔物が沢山いた。


 僕は顔を青ざめさせていると、ほっぺをペロッとされた。


「ひゃい?」


 僕は壊れた機械のように、ゆっくりと首をその方向に向けると、子鹿が立っていた。子鹿と言っても、日本の子鹿の倍くらいがあるから、日本目線で例えると、大人の鹿さんだ。


 ほんと何なんだろうなぁ。この世界はあらゆる物が、大きすぎると思うんだ。イースターさんもだけど、ソニカ、僕の娘だってそうだ。生後1日で、僕の身長を超えちゃったもん。


 お父さんは、少し悲しいよ。1人だけ置いてかれた気分だよ。あ、言ってなかったけど、ここで1つ問題です。


 マッサルさんの歳は、いくつでしょうか?ヒントは、見た目は30代前半だよ。


 さぁーて、分かったかな?答えはね、91歳だよ。驚きだよねぇ。エルフって、よくファンタジーにいるでしょ。確かエルフは、亀さんくらい生きるよね。日本人は長くても、100歳前後。でもこの世界の平均寿命はなんと、350歳なのだ。この世界の人には魔力、別の名をマジックポイント。約してMPがあります。MPはレベルが上がると、続いて上がります。上限はありません。人種は、340歳を超えると、レベルが上がってもMPが上昇しなくなります。そして1日過ぎることに、少しずつ、ほんの少しずつMPの最大数値が減っていき、それが0になると人は死にます。


 面白いよねぇ〜この世界のルール、みんなもう分かってると思うけど、人は直ぐに死ぬことが出来ますよ、ほんと今すぐに……その方法は、至って単純なこと。そうスキルでMPを使い切ればいいんだよ。


 この世界に相手のMPを吸収出来るやつがもし現れたら、そいつこそこの世界において、神の次に強い奴ってことだ。まぁ、そんな化け物がいたら、誰も勝ち目なんて無いよぉーあはは、いないよね……


 僕はそんな事を考えながら、2人の元へと向かうと丁度目を覚ましたみたいだ。


「きゅ」


「おはよぉー」


「パァーあさのだぁっこ!」


「おう!ばっちこい!」


「いっくよぉー!!!」


 ふんぬ!!娘くらいは、支えて見せる!!なぜなら、僕はソニカのお父さんだから!ふわふわだぁ〜


 僕は娘の産まれたての柔らかい毛並みが、ふわふわで優しい匂いがして、力んでいた腰の力が一気に抜けてしまった。その結果は、言わなくても分かるよね。


「きゅう?」


「痛てて、大丈夫だよ。このくらい、う…」


「パァーごめんなさい」


「子供は気にしないの。甘えるのが仕事なんだから。」


「うん!」


 僕は優しくふさふさウサミミを撫でてあげた。


「それじゃあ、ソーダスライム出すから。マイナスを検証しよっか」


僕は腰をトントン叩きながら、立ち上がった。


「はぁーい!」


 まずはマイナスの説明文を思い出してみよう。MPがマイナスになる。ここはステータスの欄から見てわかる。プラスのMPの動きを、音として聞き分けることが出来るらしいけど、これはどうなんだろう?


「ソニカ〜目を瞑って僕が魔法で出した水が、何処に移動したか当ててみて」


「はぁ〜い!」


「きゅーー」


 イースターさんは僕たちを、優しい眼差しで見つめていた。そして僕はソニカが、目を瞑って事を確認してから、生活魔法で水をコップに出し、ゆっくり動かした。右へ左へはたまた後ろへ、動くたびにソニカの耳は、ピクピクとし水が動いた方向へと、耳が向く。


「さて、ソニカ。僕はどう動かしましたか?」


「んとねぇ。さいしょがみー、つぎがひー、うー、まー、みー、うーそしてさいごにななめみーうしろ。だとおもうよ!」


 全部的中していた。最後の少し意地悪したやつまで当てやがった。うちの娘、軽くチート持ち者だよ!!この中で、1番僕が弱いじゃないか!


「流石僕たちの娘だ」


 頭を撫でてあげると、にへらぁ〜と笑っていた。イースターさんも、頬ずりをしていた。


 さて最後は、触れた場所をマイナスにすることが出来る。という効果についてだ。僕はミニスライム1号を出した。


「ソニカ、次はこのスライムを、軽くするか、浮かしてみせて」


「はぁ〜い」


 ソニカは元気に返事をしてから、スライムにちょんと指先を触れた。すると、ソニカの手の甲に魔法陣が浮かび出し、一瞬だけほんの一瞬だけ、スライムの体が浮いた。そのかわりMPが残り-5になっていた。一度に-15もMPを消費してしまったのだ。ソニカは少しボーとしながら、イースターさんに寄りかかった。


「パァーどうだった?ソニカすごかったぁ?」


「おう!凄かったぞ!でも、今は休もうか」


「うんz Z」


「きゅう」


「うん、寝ちゃったね。起こさないように、街に帰ろっか」


「きゅい」


 イースターさんの背に乗って、とことこと街に帰りました。


 夜は、孤児院の人たちと一緒に食堂で、魚料理を食べました。そうそうイースターさんは、基本野菜か木ノ実を食べるけど、実は雑食で肉や野菜も食べたりします。ウサギなのにです。ほんとこの世界の生き物は、たくましいなと思う今日この頃です。

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