06話 緊急クエスト

はぁ。

 どうしたものか。ギルドを作るのも加入するのも16歳からとか…。

 一年待てってか⁉︎そりゃないよ。

 僕は受付の女性との話を終え、建物の外に出ていた。


「本当にどうしよ。寝る場所もないしな。あ、お金もだ。」

 やばい。何もできないじゃん。

 あるのはこのステータスカードだけか。

 てかこの『光の加護』ってなんだよ。あの光の事か?

 僕はステータスカードに書かれている『光の加護』という部分を指でタップしてみた。

 すると、ボウッとカードが光り始め、光の加護についての説明文が出てきた。

 うおっ!なんだこれ。スマホみたいだ。


【光の加護】

 物理攻撃:無効

 魔法攻撃:無効


 発動中:『光速』スキル使用可能

  身体能力大幅強化


 発動中に使用したスキルは全て光属性のものとなる。



 ほう。やっぱり思った通りの内容だ。

 僕の予想はあらかた間違っていなかったな。

『光速』はあれか、敵がスローモーションに見えるほど僕が速くなるやつか。

 賢者についても見てみるか。

 次は賢者と書かれた部分をタップしてみた。

 またもや光を放ち、文字が現れる。


【賢者】

 魔術師の上位職

 無詠唱でのスキル使用可能

 消費魔力の減少及び魔法攻撃の威力強化



 なるほどな。これは便利な職だ。

 まさか童貞を守り続けた息子を褒める日が来るとは。



 しかしこれでわかったことがある。

 僕はスキルを習得していない!

 やっぱり魔法使いたいよなー。賢者だし。

 兎にも角にもスキルを身につけないといけない。

 そもそもどうやって習得するんですか?

 あー、あのお姉さんに聞いておけばよかった…。

 ふと目をカードから建物へと移すと、そこには掲示板があった。


「…これだっ!」


 そうだよ。スキルを教えて貰えばいいじゃないか!

 僕は天才だなぁ!

 僕は早速、依頼書に書き込んだ。


 依頼内容:スキルを教えて下さい!


 なんでもいいのでどなたか魔法攻撃を教えてください。

 報酬はご用意出来ませんがよろしくお願いします!


  ケント=ヤマダ(15)



 よし、こんなものだろう。

 大人な文章を書きたいが、見た目は子供だからな。

 堅苦しい文は返って、依頼を受けてくれる人はいなさそうだ。報酬もないしな…。


 僕はもう一度あのお姉さんがいる建物の中に入り、依頼を受けてくれる人を待つことにした。



 ――――――――――――――――――――――――


「もう、ダメなのか…。」


 アルズ国の長であるマルコ=サニールは絶望していた。


「依頼を受けてくれるギルドはどこにもいないようだな。」

「…相手がサレイヤ国なだけに。」

「このままでは何も出来ず、この国がサレイヤ国に飲み込まれてしまう!」

「しかし、戦いで抗っても勝てるかどうか…。」

「…くそっ‼︎」


 マルコは拳を机の上に叩きつけた。

 ドンッ!という音に驚いたのか、秘書の男はびくっとした。


「こうなったら、この国で新たにギルドを作るしか…。」

「正気ですかマルコさん‼︎この国にも多数ギルドはありますが、どのギルドもレベル1~2の魔物を倒すくらいの力しかありませんよ!

 それに、そのギルドをつくっても加入者を確保できるかどうかも…。」

「じゃあ、どうすればいいのだっ!黙ってこの国が潰されるのも見ろと⁉︎」

「………。」

「……すまない。少し苛立っていた。」

「…いえ、この状況では仕方ないですよ。」


 なにか、なにかないのか!

 サレイヤ国からこの国を救い出す方法は!





 事の発端はほんの1日前である。

 それは『狼牙の森』で起きた。

 狼牙のボスである雷鳴狼牙が何者かと戦闘をしたのだ。それも大規模な。

 その戦闘で雷鳴狼牙は傷こそ負わなかったが、膨大な魔力を消費した。

 天候を変え、地形を変えるほどの威力の雷を何発も撃ったそうだ。

 それほどの相手だったらしい。

 雷鳴狼牙はその戦闘で消費した魔力を回復させる為、姿を隠した。その膨大な魔力を回復するには最低でも1ヶ月はかかる見込みだ。

 サレイヤ国とアルズ国の間には『狼牙の森』がある。サレイヤ国は元よりアルズ国を飲み込もうとしていた。だが、『狼牙の森』があるため、五大国の一つであれど簡単には攻め込むことはできなかった。

 アズル国は『狼牙の森』に守られていたのだ、

 しかし、雷鳴狼牙が身を隠した今、サレイヤ国にとってアルズ国を攻め込むチャンスとなった。

 そして、サレイヤ国は兵力を集め、攻め込む準備をしているとの情報がマルコに入り、今に至る。




「サレイヤ国はうちに強力なギルドがないことを知っている。だから攻め込んでくる数もそう多くはないはずだ。どうにかしてこの国のギルドたちに戦ってもらうか…。」

「しかし、戦力になるのはそう多くはないかと。」

「でも今はとにかく数を集めることだろう!」

「…ではどのように?」

「…………。」

「マルコさん。数を集めることでしたら一つ提案が…。」






 多くのギルドが依頼を受けにくる建物:ギルド館。そこの依頼掲示板にたくさん貼られている依頼がすべて取り外され、今、一つの依頼が貼られている。



 《緊急クエスト》

 依頼内容:アズル国の防衛


 達成条件:サレイヤ国からの襲撃を防ぎ、この国を守ること。


 参加条件:人数・年齢は問わない。職業ジョブを持っているものなら誰でも参加可能。


 成功報酬:成功したもの一人につき、5000万ベルを与える。



  以上。

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