ギルド創設編
01話 初めての異世界
目を開けると、僕は森の中にいた。
あの女神は見えない。どうやら本当に転生されたらしい。
しかし、惜しいことになった。せっかく仕事が決まったのに…。
まぁ、でも?正直言ったら、すこしワクワクしている。
異世界転生をまさか本当に体験出来るとは。
ニート時代にゲームやアニメを見まくった僕にとって夢みたいなものだった。
これで働かなくてもいいし…。
働かなくて済んだのは、一番でかいな!
それにしても、この世界はどんな世界なのだろうか。森の中を歩きまわり、調べてみることにした。
こういう時は動くことで、イベントが発生するものだしな。
空を見上げると、青空が広がっている。
雲ひとつない青空だ。
森の木々の間から差し込む光が眩しく、暖かい。
あぁ、気持ちいいな。そして何も起こらないな。
実はここ日本なんじゃないの?
転生してなかったりして…。
あまりに平和すぎて、そんなことまで考えてしまう。
ザッ‼︎
突然、後ろから足音が聞こえた。
僕は後ろを振り返る。
そこには化け物と呼ぶにふさわしい姿をした獣がいた。
姿は狼のそれに近いシルエットだ。だが、頭から大きなツノが生えている。
30センチをゆうに超えるであろうツノは、銀色に輝いていて、見るからに危なそうだ。
あれに刺されたらひとたまりもないな。
逃げた方がいいのかもしれない。
すこし距離をとる。
しかし、不思議だ。
あれほどの化け物の前なのに恐怖をかんじない。なんだろう、殺される気がしないな。
グルルルゥ‼︎
その化け物は戦闘態勢に入った。
今にも襲いかかってきそうである。
化け物は体勢を低くした。すると、身体から電流を放ちはじめた。
バチバチッ!バチバチッ!
その化け物は前足を一歩前に踏み出した。
その瞬間―
僕の
はやっ―
考える間も無く、ツノが僕の身体に直撃し、吹き飛ばされた。
速すぎる。一瞬で距離を詰めてきた。
まるで雷光のようだ。
吹き飛ばされた僕は地面に叩き落とされる。
が、ダメージはない。痛くも痒くもないのだ。
身体を起こし、ツノが直撃した部分をみてもアザひとつない。
それよりも驚くべきは僕の身体だ。
身体の周りには光が纏っている。
「な、なんだこれは」
光?この光は一体なんだ?
あの速度でツノが直撃したんだ。怪我をしないわけがない。
しかし、怪我はない。ダメージすらないのだ。
おそらく、この光が僕を守っているのだろう。
『私の力をすこし与えますのでー』
確か、女神はそんなことを言っていたな。
だとしたら、この光は女神から与えられた力だろう。
ダメージをくらわないなんて…
え、強くない?僕。
無敵じゃん!
しかも、この化け物みて思ったけど、この世界ってRPG的な世界だよね?だとしたら―
ガウッ!
呑気なことを考えているうちに、さっきの化け物がまた襲いかかってきそうだ。
やばいな、ダメージを受けないにしても、反撃ができない。
あの速さについていけないとなると、只々攻撃を受け続けることになる。
なにかこいつを倒す手立てを―
僕は化け物の方を向き直し、両者睨み合う。
さてと、どうするか。
化け物は先程と同じく、電流を放ち、ゆっくりと前足を一歩前に踏み出した。
くるっ!
僕は身構える。
「……。」
「………。」
襲いかかってこない。
え?こないの?
化け物を見ると、のろりのろりと動いている。
先程とは正反対だ。
それしにてもおかしい。あまりに動きが遅すぎる。
まるでスローモーションみたいである。
まさか、すべての動きがスローモーションに見える力的なやつ?
ダメージも受けなくてこれって、強すぎませんか?
いや、でもさっきはスローモーションに見えなかった。
吹き飛ばされたわけだしな。
だったら、これは一体…。
うーん……………。分からん!
とにかくだ、今はこの化け物をどうにかすることが先だ。
僕は歩いて、化け物に近づく。
化け物の真横に立っても、依然として、こいつはゆっくりと動いている。
山田がゆっくりと歩いて近づいてきたようだが、化け物から見ればそれは違った。
化け物の名前は狼牙。速さを武器とし、ツノを使って敵を倒す、雷属性の魔物である。
先程山田が吹き飛ばされたのは、【紫電一閃】という技を狼牙が使った為である。
【紫電一閃】とは、身体に電流を纏い、まるで雷光の
ような速さで敵に突進し、ツノで刺す。
狼牙という魔物がよく使う技である。
万が一、【紫電一閃】が直撃して死ななかったとしても、ツノから流れている電流により、痺れて動けなくなるだろう。動けなくなったら最後、あとは噛み殺されるだけである。
そんな技を狼牙は山田に使った。
だが、山田にダメージはなかったのだ。その上、痺れてすらいなかった。
そして、2回目の【紫電一閃】。狼牙は先程のよりも強く、速く、全力を出した。
―が、狼牙が技を使おうとした瞬間、山田は狼牙の真横にいたのだ。
十数メートル離れていたはずの山田が一瞬で真横に。
狼牙にとって、瞬間移動でもされたかのような感覚だった。
そんなことを知る由もない山田は、呑気に狼牙の観察をしていた。
近くで見るとすごいツノだな、これは。
よくこれが直撃して、無傷でいたものだ。
牙もするどいし、怖っ!こいつ怖っ!
僕は狼牙の身体の方に目をやる。
しかし、綺麗な毛並みをしている。触ったら気持ち良さそうだ。
僕は手を伸ばし、狼牙の身体を触ろうとする。
サワッ
あ、思った通りサラサラす―
と、その瞬間。
バンッ!
手を触れた瞬間、狼牙の身体は吹き飛んでしまった。
「…………え?」
ナニコレ。
なんか吹き飛んだのだけど。
触っただけなのに…。
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