第26話 予想外の材料
とみ子は食事の用意をして仙造の帰るのをただひたすら待っていた。
玄関のドアが開いた音に素早く反応したとみ子は、小走りに仙造を迎えに出る。
「お帰り。随分と遅かったわね」
「おう」
仙造はぶっきらぼうに返事をしながら、市場で買って来た材料をどさりと床に置いた。
「あら、あら、大変な荷物。これ台所に?」
「ああ、そうしてくれ」
「あんた、食事は?」
「ああ、食べる。ラーメンは喰ったけど、何か小腹が空いた。簡単なものでいいから拵えてくれるか」
「はーい」
とみ子は買出しの荷物をキッチンの横に置くと、ガス台に向かって料理に取りかかった。
一方の仙造は、買って来た品物を選り分け、黙々と冷蔵庫に分別しながら収納している。
その鋭い眼光は妻のとみ子さえ近寄り難いものが窺えた。
ひと風呂浴びて冷えた躰を暖めると、いつものように冷えたビールで咽喉を潤した。とみ子は野菜サラダとタコの刺し身をツマミに出し、頃合いを見計らって主菜であるポークソテーと味噌汁を搬んで来た。味噌汁からは烈しく湯気が立ち昇っている。
とみ子は黙って仙造の茶碗に炊き立ての飯をよそう。仙造は目の前に並べられた惣菜にさっそく箸を動かした。
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