第22話

 仙造はハンドルを握りながら、果たしてあの男は本当に材料を仕入れに行くのだろうか、という猜疑心に苛まれる。

 赤いライトを追いながら、前の車の向かう先を想う。三台とも同じ目的地を目指しているのだろうか、果たして本当にラーメン屋の店長は材料を仕入れに行くのだろうか――不安を伴った様々な想いが脳裡を幾度も過ぎる。

 もしそうじゃなかったとしても、それはそれでいいと自分に言い諾かせた。それほど筋書き通りにことが搬ぶとは思っていない。とにかく行くとこまでついて行ってやろうと思いつつハンドルを握った。


 すぐ前の車が横道に逸れて姿を消してしまった。目標のワゴン車は依然として闇の中をひた走る。見失うことのないように仙造はスピードを上げた。やがてワゴン車はスピードを落として左に折れる。あたりは田んぼばかりなので見失う心配はなくなった。仙造の車も左に曲がった。


 ワゴン車のテールランプが鮮やかに光った。ブレーキを踏んだのだ。それを確かめた仙造はアクセルを緩め、ブレーキに足を乗せる。ワゴン車はウインカを出してどこかの敷地に入って行った。

 仙造はヘッドライトを消し、ゆっくりと車を動かして近づいて行った。

道の両側は干上がった田んぼしかない。その田んぼばかりのところにぽつんと工場のような建物が闇を押し退けて建っていた。


 突然周りが昼間のように明るくなったと思った瞬間、スピードを出したライトバンが擦り抜けて行った。咄嗟のことで何が起きたのかまったく不明だった。目を凝らしてその車を追うと、やはりその車も敷地の中に消えて行った。

 仙造は気を落ち着かせようとタバコに火を点ける。白い、息とも烟とも判別できない気体を吐き出しながらこれからを思案する。

すると、またしても後方から、今度はそれほどスピードを出してない車が横を通り過ぎ、同じように敷地内に消えた。


 肚を決めた仙造は、タバコを指先で窓の外に弾き飛ばすと、そろそろと車を動かす。

 様子がわからないまま敷地内に車を滑り込ませると、そこには想像以上の車が駐車されてあった。ざっと数えたところでは二十五台というところだろうか。乗用車の姿はほとんどなく、仕事に使うライトバンがやたら目についた。

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