第18話 追跡

 子供たちもそれぞれもとの生活に戻って行き、長いようで短い正月休みが終わった。


 仙造は、いままでの生活パターンを思い出すようにしながら店に向かう。 

 一週間ほど休んだだけなのだが、なぜかえらく久しぶりのような気がした。実際のところは、きょうからの営業に備えてすでに昨日店に出て先準備をしている。しかし、客を相手にするということは毎日ではあるが、それなりに気が引き締まるものだ。


 年が明けたからといって急に客の気持が変わるわけでもなく、気持の中では暗澹とした思いが冬空のように重苦しく垂れ込めている。とみ子は家の片づけがあるので少し遅れて店に来る。

 きょうは昼の営業が済んだあと、再確認するつもりで偉龍如の味をとみ子と確かめに行くことにしている。

 これまで一度しか食べたことがないまま、記憶力を頼りにスープ造りにいそしんできた。ここでもう一度味を確認する必要がある。ひとりではなかなか行きづらいものがあるので、とみ子に同行してもらうことにしたのだ。


 きょうの昼はお節料理に飽きたのか、そこそこの客の入りがあり、新年早々順調な出だしであったことに安堵した。

 ひと盛りが過ぎて、長い休みでなまった躰をいたわるように椅子で憩んでいたとき、勝手口から業者の営業マンが新年の挨拶を兼ねて顔を覗かせた。

「大将、明けましておめでとうございます。旧年中はいろいろとお世話になりました。本年もよろしくお願いいたします」

 営業マンは頭を低くして慇懃に挨拶をした。

「ああ、こっちこそよろしく。ことしは君んとこに世話になるよう努力するつもりでいるからな」

「こちらこそよろしく。奥さん、今年もよろしくお願いします」

 少し離れていたとみ子に大きく声をかける。

「……ところで、あの偉龍如なんですが、去年の暮れで突然店を閉めてしまいましたね」

 今度は仙造に顔を向けた営業マンが真摯な顔付きになって言った。

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