『138、王都の門を超えて』
1日後、俺たちは王都の門の前で途方に暮れていた。
ハエースに透明化してもらったからこそ分かる、透明化した大量の黒龍騎士たち。
ざっと1000人はいるぞ。
「あれを突破するのは無理じゃないか!?」
「どこか裏道はないのかしら・・・」
アスネお姉さまの言葉を聞き流していると、ふと思い出す。
モックルデン伯爵から奪った黒い石に魔力を通すと、透明な板が出たはずだ。
板は全部で7枚あったはずだが、5枚目以降は目を通していない。
もし、5枚目以降に王都の地図が書かれていたら・・・?
「んっ?・・・リレンは何をしているの?」
「どうして真っ黒な石なんか握りしめて・・・あっ!?」
空中に浮かびあがった透明な板を見て、俺の意図に気づいたようだ。
アリナお姉さまが5枚目に目を通す。
「国家転覆罪・・・最悪の場合、国が滅ぶような大罪を犯したものに適応される罰」
「全然違うじゃない」
内容を読み上げるアリナお姉さまをツバーナが一刀両断した。
希望があるとすれば6枚目か7枚目だな。
「6枚目は違うわ。妙な名前と数字が羅列されているだけで地図のようなものはないわね」
「これは王都の地名・・・?」
ツバーナが首を傾げるが、今は少しの時間も惜しい突入前なわけで。
俺は7枚目へ目を向ける。
「王都の門を越えるには・・・透明化だけだと確実に見つかるので光・闇を使いましょう」
「それじゃない!――昼なら光、夜なら闇を使って体を隠します」
「空から侵入するのが安全なので、風魔法の使い手がいると便利です・・・」
全員がしばらく固まった。
闇魔法は俺が使えるし、風魔法ならアスネお姉さまが上手に使えたはず。
つまり・・・今すぐにでも王都に侵入できる!
「これはラッキーとしか言いようがないわ。この黒い石って本当に何なのかしら・・・?」
「普通の記憶石だと思うんだけど・・・役に立つ情報ばっかりしまわれている」
記憶石はその名前の通り、文章などを記憶してくれる石だ。
前世でいうところのUSBだろうか。
「さあ、グズグズしていても時間が勿体ないし行くわよ!」
「分かった。まずは光魔法を使ってみんなの体を隠しておくね。終わったらお願い」
アスネお姉さまの方を向いて言うと、お姉さまは小さく頷いた。
本当は詠唱なんかしなくても魔法は使えるんだけど・・・詠唱した方が安全だよな。
そういう理由で光の矢を放った時も詠唱したのだが。
「我に眠る魔法の根源、魔力よ。我の求めに応じてみんなを隠せ。ライト・ハイド!」
「私に眠る魔法の根源、魔力よ。私の求めに応じてみんなを飛ばせ。フライ・ウィンド!」
俺の魔法がかかったのを感じたアスネお姉さまが魔法を発動させる。
その瞬間、俺たちの体が空中に浮かびあがった。
さあ、空中散歩を開始しようか。
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