『137、風の障壁を避けて』

あれから3日が経過し、俺たちは王都まであと少しというところまで迫っていた。

もうすぐイグルに会えるのかな。


「あと1日もあれば王都に到着できるわ。最も、障害がないこと前提だけど」

「分かっているわ。タイムリミットまであと3日あるんですから。安全第一で行きましょう」


アスネお姉さまが言う。

全員が頷いたところで、御者をしていたハエースが小さな悲鳴を上げた。

途端に左右に揺さぶられる馬車。


「ちょっと・・・何をしているのよ!酔うじゃない!」

「道に風の障壁が配置されている・・・突っ込んだら馬車が大破するだけじゃ済まないよ」


窓から外を覗いた俺が報告すると、ツバーナが顔を青ざめさせた。

早くも酔ってきたのだろうか。


「黒龍騎士がいるかもしれないわ。彼らには風の障壁を出せる魔導具が支給されるから」

「透明化しているから、このまま突っ込めば見つからない気がするけど・・・」


訝しげに呟くのはアリナお姉さまである。

確かに透明化していれば見つからないように思うが、それは相手次第だ。


つまり、相手も透明化していれば見つかってしまうということ。

今までの傾向から考えるに迂回した方が安全だが・・・。


「我に眠る魔法の根源、魔力よ。我の求めに応じて風の障壁を破壊せよ。ライト・アロー」

「光属性の矢?」


俺が詠唱してまで出した魔法が光魔法系統の矢であったことに違和感を感じたのだろう。

ツバーナが首を傾げている。


すると、風の障壁が強引に破壊されたことで、透明化していた人が見えるようになった。

すなわち、こちらの存在が視認できなくなったということだ。


「すごい・・・黒龍騎士たちが見えるようになった!」

「これで見つかる心配はなさそうね」

「いや・・・風の障壁を出していない黒龍騎士もいるかもしれない。警戒は解かないで」


戦場では一瞬の油断が命取りだ。

イグルたちを助けるという目的があるのに、こんなところでバレるわけにはいかない。


「この調子なら予定通り付けそうだね。王城まで行けばいいと思うけど・・・」

「それだけで終わるとは思えないわね」


エルフの王の性格から考えるに、俺もアスネお姉さまたちと同意見だな。

第2、第3のゲームがある可能性もある。

でも・・・絶対に負けないから。


「ブルミ・・・必ず助けに行くから待っていて。何が待ち構えていようとも超えてやるわ!」

「そうだね。イグルくんとブルミさんを助けよう!」

「国王の爺の鼻っ柱を早く折って、焦りと絶望に染まる顔を見たいわ・・・」


ちょっとツバーナさん?

まあ・・・1名だけ異なる目的の人がいるが・・・今はとにかく進むしか道はない。


こうして俺たちは風の障壁を破壊しつつ、ひたすら王都に向かっていく。



イグルたちを助けられるタイムリミットまであと――3日と10鐘。


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