『136、王城にGO!』
メイド長のジャネさんがどうしてリアンと喋っているんだ?
そんなことを考える間もなく、俺たちを現実に戻す声が石から響きわたる。
「カルスがやられました。彼の担当地域はN1!」
「モックルデン伯爵領の辺りか。恐らくは古代魔法の秘密に迫ろうとしたのだろう」
抑揚のない声が聞こえる。
イルマス教国の内乱で俺が最も頼りにしていた人物――エーリル将軍っ!
本当にあなたが首謀者だというのか・・・。
「すぐに黒龍騎士10000をN1とやらに送りなさい。大将はフェブアーね」
「承知いたしました」
第1王子直属の護衛騎士であるはずのフェブアーが、主人たる俺を害しようとしている。
龍魔法というのは、ここまで人格を変えてしまうものなのか。
「すぐに逃げるわよ。ここにいたらフェブアーさんが指揮する黒龍騎士に見つかるわ」
「分かった。馬車の準備をして」
後ろの方で呆けていた少年に言うと、彼はハッとしたように手を振った。
途端に細工が解けた馬車が現れる。
「本当に悪いんだけど、王城まで連れて行ってくれないかしら?」
「分かっています。ツバーナ王女のためならばこのハエースが一肌脱ぎますよ!」
あ、少年はハエースっていう名前なのね。
ここまで一緒に行動してきたのにも関わらず、初めて知ったわ。
「早く乗って!」
ツバーナの怒鳴り声に、俺たちは慌てて馬車に乗り込む。
見つからないように隠蔽魔法がかけられた馬車は、森の中をどんどん進んでいく。
やがて開けた場所に出た。
「ここは宿場町です。今回は見つかる可能性が高いので宿には泊まりませんが」
「寝込みを襲われるのは勘弁してほしいわ。だから私も野宿に賛成ね」
ハエースの説明にアスネお姉さまが同意する。
アリナお姉さま、俺、ツバーナも順番に頷き、馬車はノンストップで宿場町を爆走。
わずか30分あまりで宿場町を抜けた。
「この先に川がありますので、今回はそこで泊まりましょう」
「分かったわ。猶予はあと5日。絶対にブルミとイグルくんを助けてあげるんだから!」
アスネお姉さまがブローチを握りしめる。
それ、領地巡りの旅から帰って来たときには付けてなかった気がするんだが。
ブローチが気になった俺だが、真剣な顔をしたお姉さまには聞きにくい。
結局、ブルミさんからの贈り物ということで自分を納得させた。
「ちなみに王都までどのくらいで着きそう?」
「障害がなかった場合は3日ですね。馬の疲労とかがあるので、実際には4日くらいです」
随分とギリギリだな。
これからの道中に障害となるものがなければいいのだが・・・。
俺は何ともいえない不安に襲われるのだった。
イグルたちを助けられるタイムリミットまであと――6日と2鐘。
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