『134、モックルデン伯爵邸 (Ⅲ)』

俺たちは4枚目の板に目を通す。

予想通りならば、ここには精神対話魔法とかいう魔法についての情報があるはずだ。

エーリル将軍がナッチさんの幻影と戦ったボーランにかけた魔法だね。


『精神対話魔法はエーリル=マーナスによって作られた』

『自分の精神と対話する魔法で、被験者50であるボーラン=リックが初成功の例である』

『副作用として様々な効果が確認されているが、エーリル氏によると4タイプだ』

『魔力吸収、記憶遡上、状態異常、魔力喪失の4つであり、ボーランは2つ目だった』


何だって・・・。

つまりエーリル将軍が魔法の開発者であり、ボーランを実験台にしたってこと?


「あの将軍・・・。とんでもない女だな」

「自分で開発した上に成功例がない魔法を仲間にかけるなんて!」


あの時はボーランも仲間だったはずだ。

俺とツバーナが憤慨していると、アスネお姉さまが青ざめた顔で首を横に振った。


「マーナス家に仲間意識を求めちゃダメ。あの家の人は1人を除いて残酷かつ非道よ」

「どういうこと?エーリル将軍は俺たちのことを仲間だと思ってなかった?」

「そういうことよ。実験台としての価値しか見出していないでしょうね」


アリナお姉さまも同意するように頷く。

エーリル将軍がマーナス家の人だと分かった時、カルスが驚いていたが・・・。

彼女の本性に気づいていたということだろうか。


「そういえば除かれた1人って誰?」

「レンド=マーナスという人よ。彼はマーナス家から裏切者という烙印を押されたらしいわ」

「だからイルマス教国の端っこにいたのか」


俺とツバーナは納得したように頷く。

レンド=マーナスは、馬車をカルスたちに奪われた俺たちを助けてくれた人だ。

それだけでなく、フローリーにかけられた龍魔法を解除してくれったけ。


「どうやら心当たりがあるみたいね」

「僕たちを助けてくれた人だから。って、通信の石が光ってる」


胸元から赤い光が出ている。

カルスたちの居場所を調べていたフローリーからの連絡ということは・・・。


「もしもし、何か分かった?」

「大丈夫なの!?誰かに拘束されたり傷つけられたりしていないわよね!?」


石から聞こえて来たのは焦ったようなツバーナの声。

只事じゃないなと判断した俺は、魔力を込めて全員に聞こえるようにした上で問いかける。


「みんな無事だけど・・・。どうしたの?」

「どうしたのじゃないわよ!グラッザド王国の国王がエルフの国と繋がっていたわ!」

「何だって!?」


俺たちは顔を見合わせて固まるしかなかった。

父上がエルフの国と繋がっていたってことは・・・まさか全て罠だってこと!?

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