『127、エルフの国へ(Ⅲ)』

馬車でやって来たのはスリブ滝。

領地巡りの旅でお爺様と邂逅した際に、エルフたちと初めて会ったところだ。


「エルフの里はここにあるの?」

「うん。領地巡りの旅をしている途中に、便利な魔導具をスリブ滝で買ったしね」


船に細工がしてあったのを思い出した。

あまり揺れなかったり、滝の水しぶきがかからなかったり・・・随分と懐かしい。

そう思ってから1年は経ったのかな?


「エルフの里があるなら話は早いわ。さっさとエルフの国に行って作戦を開始しましょう」

「そうだね。ただ・・・エルフの里に入る方法が分からないんだ」


魔導具の販売をしていたことから、この近辺にエルフの里がある可能性は高い。

しかし、俺たちはあくまで移動販売で買っただけに過ぎない。

エルフの里への行き方などを教えてもらったわけではないから、まったくの未知数だ。


「じゃあどうするのよ!」

「まずは滝の近くまで行ってみない?また移動販売?をしているかもしれないじゃん」


アリナお姉さまの提案で滝まで進む。

その道中、隣にエルフの王女が同行していたことを思い出した。


「ツバーナ、行き方は分かるよね?」

「これでも王女なんだから分かるに決まっているじゃない。ただ・・・今も使えるか怪しいわ」

「エルフ国王に遮断されている可能性があるわね」


アスネお姉さまが厳しい表情で呟く。

俺と同じように親友を捕らえられたアスネお姉さまの怒りは炎となって心を燃やす。

きっとエルフの国への行き方を見つけるまで、もがき続けるだろう。


それは俺も同じだけど。

滝つぼに到着した俺たちが手掛かりを探す中、ツバーナがネックレスをつけたと思うと勢いよく滝つぼにダイブした。


「ちょっと!?何をしているの?」

「落ち着きなさい。ツバーナちゃんがネックレスをつけていたのが見えなかった?」

「あれは魔導具だよ。リレンも学校で授業を選択すれば習うかもね」


アスネお姉さまとアリナお姉さまは全くといっていいほど動じていない。

本当にあれが魔導具なのか・・・?

疑念を抱く中、ツバーナが舌打ちせんばかりの表情を浮かべて上がってきた。


「潰されているわね。厄介だわ」

「もし船が関わっているとしたら、森の中に隠されていた船があったわよ」


アスネお姉さまが俺の後方を指さす。

それを見たツバーナは一目散に駆けだしたかと思うと、船を持って戻って来た。

随分と重そうな船だが・・・また魔導具の力か。


本当にエルフは魔導具が好きだけど・・・長寿種族だから生活を便利にしたいのかな?

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