『126、エルフの国へ(Ⅱ)』

神樹の件で暗くなった雰囲気を和ませようとしたのか、アリナお姉さまが明るく言う。


「それでも向こうが4人で来るのは想定していないんじゃないしら」

「しかも男子はリレン1人だし」


発言の意図を素早く汲み取ったアスネお姉さまも、揶揄うような視線を送ってきた。

・・・俺だって気にしなかったわけじゃないんだからね。


今まではボーランがいたから良かったが、今回の同行者は全員が女子である。

俺・・・女子トークについていけるかな。

むしろ黙って耳を傾けるくらいでちょうどいいのかもしれないが。


「それじゃ向かいますか?」

「イグルくんとブルミを出来るだけ早く解放してあげたいっていうのはあるわね」

「古代魔法と龍魔法の解除方法も探ってこなきゃいけないし・・・」

「1週間以内に騎士団を避けてエルフ国王に会いに行かなきゃいけないし・・・」

「「「「予想以上に多忙じゃん!」」」」


4人の声が綺麗に揃った。

文字にするとエルフの国に行くだけだが、その中に様々な目的が詰まっている。

これは多忙な旅になりそうだ。


「みんな息ピッタリじゃない。私はカルスさんたちの行動を探ってみるわ」

「よろしく。あの人たちがどこにいるのかの情報も欲しい」


もしもエルフの国にいたのなら、決して合わないようにするのが正しい判断だろう。

カルスたちが人質として捕縛されるのは嫌だからな。

出来るだけ接触を避けて、俺たちとは関係ないというスタンスを貫かないと。


「分かった。情報が得られたら伝えるわ」

「こっちは俺たちで何とかするから、そっちはミラさんとか国の機関の力を借りて」

「何としてでも見つけ出します!」


ミラさんが目を血走らせながら一番近くにいたアリナお姉さまに近付いた。

小さい悲鳴を上げて怖がるアリナお姉さまを見たツバーナが、ミラさんを突き飛ばす。


「仲間を怖がらせないで。さっさと仕事に向かいなさい」

「ごめんなさい。すぐに魔法局に協力を要請します。国王様、いいですよね?」

「あ・・・ああ。ただ、忙しそうだったら引き返してきなさい」


父上としては魔法局の事務仕事を放り出されてはたまったものではない。

ゆえに当然の反応といえた。


「分かっていますって。すぐに魔法局長を連れてきますね!」

「――私たちは準備をしちゃいましょうか」

「ええ。あちらの捜索班はフローリー指揮官に任せておきましょう」


アスネお姉さまとツバーナが離脱を図り、アリナお姉さまと俺が無言で追随する。

執務室を退出する直前、父上と真剣に会話するフローリーの姿が見えてどこか安堵した。


フローリーならしっかりやってくれそうだな。

女神からは中学生と聞かされていたから、しっかりし過ぎていて逆に怖い。

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