『125、エルフの国へ(Ⅰ)』
扉の向こうに立っていたのはミラさんだった。
そういえばリアンの過去を見たとき、ライフ・バーンに異常な反応をしてたっけ。
「どうしたのだ?」
「教育係の分際ですみません。しかし私は自害しなければならないかもしれません」
ミラさんの言葉に全員が硬直する。
命で償わなければいけないほどの重大な失策を犯してしまったということなのか。
「先ほど、エルフの国がイグル様を捕まえたと言っておりましたよね」
「ああ、それがどうしたのだ?」
「イグル様は正真正銘、神樹から石碑を盗んだ犯人で黒幕が私なんです」
えっと・・・言っている意味の理解が追い付かない。
ミラさんがイグルにエルフの国の石碑を盗ませに行かせたってこと?
「――どうしてだよ!?」
「弟が龍魔法にかかったのよ。そしたらイグル様が来て・・・龍魔法のことを話したんです」
「まさか・・・自分からエルフの国に!?」
友人を苦しめている魔法の解除方法がエルフの国に眠っていると知ったんだ!
だから、解除方法が書かれているはずの石碑を見に行った。
「最初は石碑を見てくるだけのつもりだったけど、エルフ文字か古代文字で書かれてた」
「だからミラさんに読んでもらおうと思って盗んだのね」
リアンとフローリーが補足する。
ミラさんは言葉にならない嗚咽を漏らしながら、必死に土下座をしていた。
「各国の騎士団の皆さんは会議ご苦労様でした。各自のお部屋でお寛ぎください」
他国に聞かれてはいけない話だと判断した俺は、戸惑う騎士団の男たちに退出を命じる。
グラッザド王国のメンバーしかいなくなった執務室でミラさんが呟いた。
「どうして話してしまったのかしら・・・」
「ミラさん。今は自分を責めるよりどう助けるかを考えて欲しいんですけど」
「そうよね。ごめんなさい」
ツバーナの苦言にミラさんはあっさりと引き下がった。
苦い顔をした父上が口を開く。
「エルフの国王はレアガ=オースという男で39代目の国王だ。ツバーナの父でもある」
「そうね。あんなに頭がおかしいとは思ってなかったけど」
酷い発言を喰らったからか、ツバーナの言葉にはどこか棘が含まれている。
「騎士団は黒龍騎士だから夜の行動は控えた方がいいわ。問題は神樹の魔法よ」
「その謎の木は何なんだ?」
名前からは神々しい木という印象を受けるが、石碑を隠せるほど大きいのだろうか。
今の言葉で魔法を発動している木らしいということは分かったが。
「エルフ以外の種族の位置を特定する魔法がかけられているの。これも古代魔法ね」
「探索できる魔導具みたいな感じか」
領地巡りの旅で、証拠の資料を探すときに使った魔導具の効果に近い。
個人を特定できるのならなおさら厄介だな。
これから対策を考えなければ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます