『114、閑話 女騎士の決意 (フェブアー視点)』

ベッドに寝かされるリレン様を眺めながら私は後悔に襲われていた。

どうして道を間違えてしまったのだろう。

私の暴走を止めるためにリレン様は危険な賭けに出たのだと想像できる。


「カルス、私はどうすれば・・・」

「リレン様が早く目覚めるように祈るしかないでしょう。そうしたら謝ることですね」

「謝るね・・・。こんな私を許してくれるだろうか」

「大丈夫ですよ。自分の気持ちをぶつければ必ず相手に伝わりますから」


カルスはそう言って優しく微笑む。

手では、身動き一つせずに眠るリレン様を安心させるように撫でていた。


私をいつも真剣に見つめてくれた碧い瞳は閉じられていて、見ることは出来ない。

早く目が覚めないだろうか。


暴走しておいて自分勝手な言動だとは分かっているが、考えずにはいられなかった。

心配でたまらなかった。


「私はどこまで勝手なんでしょうね。自分でも嫌になってしまいます」

「別にいいじゃないですか」

「えっと・・・勝手でもいいってどういうことよ?」

「心から心配しているからですよ。別に損得でリレン様を見ているわけではないでしょう?」


笑っているはずなのに剣呑な雰囲気が漂ってくる。

お前の答え次第では容赦しないぞ、という思いが伝わってくるため非常に答えづらい。

それでも否定すればいいだけなのだが。


「ええ。私はリレン様に忠誠を誓った身ですから。そんな臣下の分際で主に無茶を・・・」

「いい加減にしてください。この言葉をリレン様が聞いたら怒りますよ」


事実を話しているだけなのにどうして怒るのだろうか。

こちらが疑問に思っているのを察したのか、カルスがため息交じりに口を開く。

彼の瞳は真剣そのものだった。


「リレン様は臣下などということは気にしていません。僕たちも1人の仲間と捉えています」

「だから自分が助けるのが当たり前だと・・・?」


そんな考えは前代未聞だと思いながらも、リレンなら言いそうなセリフだと思った。

リレン様は仲間を大切にする人物だから。

私は自分を落ち着かせるように息を吐くと、カルスと同じようにリレン様を撫でる。


「そういえば敵将はどうしましょうか。ずっと水の檻に閉じ込めたまま・・・」

「ロープを持って行きましょう。このままイワレスを滅ぼせるかも」


先ほど、偵察に出ていた兵士の1人からもたらされた情報を確認しながら提案した。

黒龍騎士も最後の村を落とせそうだという。


「そうですね。リレン様に無茶をさせたイワレス王国にはグラッザドが引導を渡しましょう」

「ええ。我が国に手を出したことを後悔させてあげます」


決意を固めて立ち上がると、カルスがロープを取りに納屋に向かった。

今回は役に立たなくても・・・いつか必ずリレン様を守れる最強の護衛になってみせる。


二度と主に無茶なんてさせないし、苦渋の決断の原因を引き起こさせない。

私は春の風にそう誓った。

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