第11話 二日酔いで始まった長い一日…

 私は、病院にいた…


 尼崎中央病院に8時少し前に着いて受付時間を待っていた…だが、私は気分が悪かった…

 昨夜、私は予定外に飲み過ぎてしまったのである…寝たのは、3時頃…起きたのは、5時頃…

 完全に寝不足でフラフラであった…


 結局、9時過ぎに診察は終わり、9時半前には病院を出ていた…

 だが、相変わらずの二日酔いで気分は悪かった…


 私は、駅に着くと9時38分の各駅停車に乗った…そして、9時40分過ぎに次の駅で降りた…


 昨日は、お酒をあまり飲まない予定であったが…急な約束が入り、夜中まで飲んでしまったのである…完全にやってしまった状態であった。


 私は、ある人とその駅の近くの店で待ち合わせしていたのであるが、少し早かったので近くのコンビニに行こうと思って歩き始めた…

 ふと横を見ると、私と同じような二日酔いと思われる男が歩いていた…

 その男というのは、大原君という人物で私と10時に待ち合わせしている男である…


 大原君は言った。

「これはこれは…申し訳ありません。ちょっとコンビニに行ってもいいですか?」

 私は言った。

「俺もコンビニに行くところだ…」

 更に大原君は言った。

「じつは、昨日仕事帰りに飲みに行ってしまい、二日酔いなんです…」

「同じく…」


 私達は、コンビニで同じようにウコンドリンクを買い、店の前で飲んだ…

 さすが俺の弟子…

 大原君は、以前私と同じ会社に居て、私が一人前の社会人に育てた男である…


 コンビニを出た私達は、目的の「釜谷」という居酒屋に行った。

 しかしながら、その釜谷はシャッターが降りたままであった。シャッターには、臨時休業の理由と連絡先が書いてあった…

「お客様へ

 マスター骨折療養の為、しばらくの間

 お店をお休みさせて頂きます。

 大変ご迷惑をお掛けしますが

 よろしくお願いします。

 ご用のある方は、下記までTEL下さい。」


 私達は、仕方ないので駅に戻り、駅前の牛丼屋「吉野家」に入った。

 私達は、奥のテーブル席に座りメニューを見た。すると40才過ぎの割とスリムな感じの女性店員がやって来て、水をテーブルに置きながら言った。

「注文がお決まりになりましたら、お呼び下さい。」


 私達は、かなり迷ってから呼び鈴を鳴らした。

 すぐに先程のスリムな女性店員がやって来た。

「牛皿、キムチ、明太子、それから、しじみ汁は2つ。瓶ビール1本。」

 と私は注文した。


 すぐに注文したものが運ばれて来て、私達は乾杯した。


 それから、私は「釜谷」の嫁に電話してみた。

「釜谷です。」と女性の声がした。

「今、店行ったら閉まっていたので、電話しました。いつ頃まで休みになるんですか?」と私は質問した。何故なら、来週も釜谷で飲み会の予定があったので…


 釜谷の嫁は、答えた。

「マスターが足を複雑骨折して今入院中なんです。まだ1ヶ月は退院出来そうにないので、最低でも1ヶ月以上は、店開けれないと思います。ご迷惑をお掛けします。」

「そうなんですね。それは、大変ですね。来週も店に行こうと思ってたんだけど、無理ですね。わかりました。お大事にして下さい。また、店が開いたら行きますね。」と言って私は電話を切った。


 私達は、吉野家で瓶ビールを3本飲んでから店を出た。


 店を出ると私は、種市教授とスキンヘッドの男ユリちゃんにメールを送った。

「12時半、集合!」

 すぐに2人から返信があった。

「了解しました。」

「了解です。」


 大原君と私は、電車に乗り次の駅で降りた…


 私は、商店街の方に向かった。

 大原君は言った。

「どこに行くんですか?」

「焼鳥いるやろ!」


 そして、すぐにある店に着いた。

「鶏肉惣菜 とりよし」

 私は、焼鳥をいつもこの店で買うことに決めている。

 もちろん、店主は小さいおばあちゃんである。

 私達は、焼鳥と惣菜を何点か買って、おばあちゃん店主は、いつものように少しオマケしてくれた…


 その後、近くのスーパーでビール等を買い込んでから、私の自宅に行った。


 家に着くと惣菜をリビングのテーブルに並べ、飲み物は冷蔵庫に入れた。

 そして、私は家にあったビールを2本取り出しリビングに戻った。


 私と大原君は、改めて乾杯した。


 するとすぐにインターホンが鳴った…私は玄関の戸を開け、門の外に立っている人物を見た。

 目つきの悪いその男の名は、種市教授。


 私は言った。

「金払え!」

「か…か…会費ですか?」

「早く払え!」

「い…いくらですか?」

「財布に入ってるお金全部!」

 種市教授は、財布の中を確認した。

「1400円あります。」

「昨日、お兄ちゃんからのお金の支給日だっただろう?もうそんなに使ったのか!とりあえず、千円よこせ!」


 種市教授が千円払ったので、私は言った。

「金もらったから、お前にはもう用はない!帰れ!」

「そ…そ…そんな…入れて下さいよ〜」


 私は、仕方なく門を開けた。

 そして、玄関に入ろうとする種市教授に私は更に言った。

「入場料払え!」

「今、払いましたよ…」

「今、払ったのは会費。会場に入るには、入場料が要ります。」

「そんな〜!」


 その後、スキンヘッドの男ユリちゃんも来たので、4人で乾杯した。

 種市教授以外はビールで、種市教授は野菜ジュースだった…


 種市教授は、言った。

「なんで僕だけ野菜ジュース何ですか?ビールが飲みたいです。」

「お前は、野菜ジュース推進委員長なんだろう!だから、まず野菜ジュース飲むだろう!」

「そんな〜!」


 やがて、種市教授はコップに入った野菜ジュースを飲み干した。

「種市教授、飲むペース早いなぁ〜!」と言って、私は種市教授のコップを取るとキッチンに行き、冷蔵庫から野菜ジュースのパックを取り出すとコップに注いで、リビングの種市教授に渡した。

 種市教授は、言った。

「そんな〜!」

「それ飲んだら、次はビールだ!」


 種市教授は、すぐに野菜ジュースを飲み干した。私は、種市教授のコップを取ってキッチンに向かった。

 そして、冷蔵庫から野菜ジュースのパックを出してコップに半分注いだ…そこにビールを入れて出来上がり。

 私は、リビングの種市教授に渡した。

「また野菜ジュースじゃないですか?」

「違う!ちゃんとビールが入っている!」


 ユリちゃんも言った。

「レッドアイみたいなやつだから、多分旨いぞ!」


 種市は、恐る恐る飲んだ。

「結構いけますね…」

 私は、面白くなかった…


 種市教授がそれを飲み干すと私はコップを取り、キッチンで野菜ジュースを入れてから種市に渡した。

 種市は、それを飲んで言った。

「こ…こ…これは、ビール入ってませんよ。」

「種市教授は、かなりのハイペースで飲んでいるので、ベロベロに酔っ払わないように気を利かせました。」

「そ…そんな〜!」


 その後、私達は種市教授の人間失格問題で大いに盛り上がり語りあった…


 夕方にインターホンが鳴った。


 私は、玄関を開けるとそこには、甲子園帰りのトラキチ達が立っていた…

 メンバーは、ホルモンかずのオーナーかずさん、ホルモンかずの店主スキンヘッドの女ちゃーちゃん、心臓が止まったことのある男 井上ちゃん、人生のピンチに立っている男 池ちゃん、そしてペラペラな女まどかであった。


 それから、私達はみんなで記念撮影後に乾杯して、大いに盛り上がった…と思う。


 その後の私の記憶はない…


 私が意識を取り戻した時、私は寝室のベッドの上であった…時間は23時55分頃である。


 すると隣のリビングからイビキが聞こえて来た…リビングに行ってみるとそこには、一人の男が倒れていた。

 その男の名は、大原君。


 私は慌てた…何故なら、大原君が家に帰るには電車に乗らなければならないからである…急がないと終電に間に合わない。


 急いで大原君を起こして、私は自転車を出した。本当は、もちろんダメなのだが…私は大原君を自転車の後ろに乗せて、駅に急いだ。


 なんとか終電前に駅前に着いて、私は歩道橋の下で大原君に別れを告げた…


 長い一日の終わりであった…

 家に向かって自転車を漕ぐ私には、夜中の冷んやりとした空気が実に心地よく感じられた…

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