第10話 悪魔的に旨いビール…
私は、急いでいた…
電車がホームに着くとエスカレーターを急いで駆け上がった…
駅の改札を出ると駅の構内を出て、梅川ちゃんに呟いた…
「梅川ちゃん、ただいま…急いでるからごめん…」
そして、私は駅前の商店街を目指して急ぎ足で進んだ…
北に向かって歩いていた私は、商店街の真ん中辺りに着くと右に曲がり更に進んだ。
花屋の角を左に曲がるとすぐに目的の鶏肉惣菜屋さんに着いた。
店頭の惣菜を見た私は、ホッとした…
何故なら、まだ目的の焼鳥が残っていたからである。
その店の名前は、「とりよし」鶏肉屋さんが営む鶏肉惣菜の店である…
私は、この店の焼鳥が、どうしても今夜食べたかったのである。
その店の閉店時間は19時であるが、夕方になると全て売り切れている事がよくあるのだ。
私が店に着くと店には、いつものように小さいおばあちゃんがいた。このおばあちゃんがこの店の店主である。
おばあちゃんは、言った。
「いらっしゃい!今日は何にする?」
私は、残っている少ない焼鳥の中から注文した。
「鳥皮3本とももネギ3本…以上」
この店の焼鳥は、さすがに鶏肉屋さんが営んでいるだけあって安くて旨い。
鳥皮は1本65円、それ以外の焼鳥は1本75円である。もちろん税込。
おばあちゃん店主は、言った。
「いつもありがとうね。420円です。」
私は、財布から千円札を一枚出して渡した。
すると、おばあちゃん店主は、言った。
「10円ない?」
私は、10円玉を一つ渡した…
「いつもありがとね…はい、お釣り600円。」
私は、「ありがとう!」と言って、釣り銭を受け取った。
この店では、いつも少しだけオマケしてくれるのだ…それがなんとも言えず、嬉しい…
私は、その足で商店街を西に抜けた…
抜けた所の道の向こうにコンビニがある。
そのコンビニで私は、いくつかの惣菜と最後に一番搾りの350ml缶をカゴに入れて、レジに向かった。
レジで、若い女性店員がニッコリ笑って迎えてくれた…そして、スキャンしながら私に言った。
「アプ…ポン、ない…?」
私は、よく聞き取れなくて、3回程聞き返した…
どうやら、「アプリのクーポンないですか?」と言っているらしかった…その女性店員は、留学生らしい…
私は、携帯のアプリのクーポンを確認したが、おにぎりと弁当のクーポンしか残っていなかった…
私は、「弁当のクーポンしか無いわ!」と言ったが…それが通じなかったみたいで…留学生店員は、私の携帯の弁当クーポンを押してバーコードを出して、スキャンした。
私は、「エッ、弁当買ってないから使えないでしょ?」と言ったが、留学生店員はお構い無しだった…
私が、プリペイドカードで支払いを終わらせると留学生店員は、ニッコリ笑って
「ありがとごます〜!」と言ってレシートを渡してくれた。
店を出て、レシートを確認したが、やっぱり割引きにはなっていなかった…
その後、コンビニから20m程の所にある山里食品でいつものようにホルモン待ちの列を横目で見て、ミミガーを買って帰路に着いた…
家に着いた私は、すぐに風呂のスイッチを入れて風呂を沸かした。
そして、一番搾りを冷凍庫に入れてから、スーツを脱ぎ、風呂に入った。
湯船に浸かると、お湯はまだぬるま湯であった…だが、それが返って気持ちよかった。
風呂を出る頃に風呂が沸いたが、すぐにスイッチを切り私は風呂を出た。
風呂から出た私は、コンビニで買った惣菜をレンジで温めてリビングのテーブルに並べた。
そして、冷凍庫から一番搾りを取り出して、リビングのテーブルの前に座った。
もちろん、私は誰もいない1人のリビングで心を込めて台詞を言った…
「キンキンに冷えてやがるぜ!」
そして、一気に一番搾りを喉に流し込んだ…
「旨い…旨過ぎる…悪魔的に旨い‼️」
私は、この台詞を言う為だけに3日間休肝日にしてアルコールを抜いたのである…
何故なら、4日前に映画「カイジ」が9年ぶりに復活することを知ったから…
だから、心の底からこの台詞を言いたくなったのである…そして、言えた事に私は幸せを感じていた…
焼鳥とビールが最高に旨いと思った夜である…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます