第4話 カウントダウン店員のいる店

 風は全く吹いていなかった…


 私は、午前の打合せを終えて駐車場の車に向かっていた…

 夏の日差しの中、駐車場には全く風が吹いていなくて、ただ暑い日差しだけが降り注いでいた。


 私は、車に乗り込みエンジンをかけ、エアコンのスイッチを入れた。すぐに送風口から涼しい風が吹き付けて来た…


 そして、私は車を走らせ始めた…


 私は、車を走らせながら、何故か急に讃岐うどんが頭に過ぎり食べたくなったのである…


 私は、近くのショッピングモールに入り、三階の駐車場に車を停めた。

 そして、私は1階のフードコートに向かった。


 フードコートは、13時を過ぎていたからなのか…割と空いていた。

 私は、フードコートの空いているテーブル席の椅子に鞄を置いてから、讃岐うどんの店の前に向かった。


 その店は、「はなまるうどん」というチェーン店であった。

 私は、店頭のメニュー表を見た…そして、気が付いた。

 しばらく来ないうちに価格が変わっていた…大幅な値上げをしている訳ではないが、価格が税込から税別表示に変わっていた…

 それに伴って、微妙に値上げになっていたのだ。


 私は、いつものようにセットメニューにするつもりであった。小うどんと丼のセットであるが、うどんは初めから温玉ぶっかけうどんにするつもりであった。だが、丼を何をしようか迷っていた…

 結局、今まであまり頼んでいない「カレーライス」に決めた。

 価格は、540円+税と書いてあった…以前は、580円税込だったので本当に微増の値上げであった。


 私は、店のトレーを取りうどんコーナーで40代の女性店員に言った。

「温玉ぶっかけうどんとカレーライスのセット」

 すると、うどん係の女性店員は、私に聞いて来た。

「ぶっかけうどんは、冷たいのと温かいのどちらにしますか?」

 私は、すかさず「冷たいの…」と言った。


 女性店員は、店の中に向かって言った。

「カレーライスセット入ります!」

 そして、自分は温玉ぶっかけうどんを作り始めた。

 すると、奥からかなりポッチャリ系の女性店員が出て来て、カレーライスを作り始めた。


 ほぼ同時に2人の女性店員から

「お待たせしました!」と言われて、

 温玉ぶっかけうどんとカレーライスが私のトレーに載せられた。

「ナイスコンビネーション!」と私は心の中で呟いてから、トレーを持ってレジの前に進んだ…


 レジには、40才前後の割と細っそりした女性店員がいて、私のトレーを見ながらレジを打ちながら言った。

「温玉ぶっかけうどんとカレーライスのセットですね。583円になります!」


 私は、「以前より3円の値上がりか…」と思いながら、自分の財布を見た。


 財布には、小銭が結構入っていた…

 私は、「小銭で全部払えるな…」と心で呟いてから、百円玉を何枚か取ってレジのキャッシュトレイに置いた。

 すると、女性店員が小銭を数えて言い始めた…

「300円なんで、あと283円です。」

 私は、また百円玉を財布から取って、トレイに置いた。

「あと183円です。」と店員が言う。

 私は、思わず後ろを振り返った…


 私の後ろには、誰も並んでいなかった…


 店員は、私を急がしている訳では無かった…

 ただ、分かり易いようにカウントダウンをしているだけのようである…


 私は、財布から更に小銭を出してトレイに置いた。

「あと163円です。」

「あと160円です。」

「あと150円です。」

「あと50円です。」

 店員のカウントダウンは更に続き、私が最後に50円玉を置くと…

「はい!ちょうど583円頂きます!ありがとうございます。」

 と言って、満面の笑みになった。


 私は、ホッとして、隣のコーナーでうどんに天かすを入れてから、置いてあるコップを取ってトレーに置いた。

 天かすは、入れ放題であった…


 トレーを持って席に戻ると私は、コップを持って給水機に行き、水を入れた。


 そして、席に戻り…

 まず、温玉ぶっかけうどんのうどんだけを一口食べた。

 冷水でよく締められて、凄くコシのある旨いうどんであった。

 それから、私は温玉を潰してよく混ぜてから、また一口食べた…温玉と天かすとネギとうどんが絶妙な旨さのハーモニーを奏でていた…最高に美味かった。

 うどんを一気に食べ切ると私は、カレーライスを食べ始めた。

 カレーには、大きなじゃがいもと人参が入っており、家庭的な感じでほっこりする味であった…結構旨い。


 私は、一気に食べ終わるとコップの水をゆっくりと飲み干した…


 そして、レジ横の返却口に食器の載ったトレーを置いた…


 すると、レジ係のカウントダウン店員が

「ありがとうございました!」と言ってニッコリ微笑んだ。


 私も「ご馳走さまでした!」と言って微笑んだ…


 そして、「さぁ〜、午後も頑張ろう!」と私は心の中で叫んでいた…

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