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 礼拝堂の天窓から注ぐ黄昏の光は、どこまでも穏やかだった。中を満たす空気には薬草ハーブの香りが混じり、外から鳥のさえずりが聞こえる。あちこちに散らばった長椅子と、教壇付近の床に溢れた鮮血を除けば、今にも祈りの一つでも始まりそうなものだった。


 けれどそこに、祈りを詠う神父はない。キセキの魔女を騙る聖女もいない。あるいは、自死を望んで鮮血を零した少女も、それに口づけた魔術師の姿もなく。


 ただ一人、黒灰色の髪の少年が立ち尽くす。


「どういう、ことだ……今年は西暦2153年のはず……」


 エドは呆然と呟いた。

 その手の中で、彼の携帯端末は2143/09/24 18:01を静かに示す。

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