第49話「キマイラ」⑩
暗闇で光る4つの目、低い唸り声、強烈な獣臭、間違いありません。キマイラが現れたようです。
「おいでなすったか。いくぞシャルロット」
「望むところよっ」
ご主人様は槍と盾を、シャルロット様は剣をそれぞれ手に取り、キマイラを正面に左右に別れました。一歩、また一歩と近づくキマイラの、その全身像が焚き火に照らされ浮かび上がります。身丈は普通のライオンより一回り大きいくらいですが、一般の獣と違い、上半身が高く、下半身が低いその身体つきは、聞いていたよりもずっと異様に見えます。
「正面から行く!シャルロットは後ろから攻めろ!」
「言われなくても分かってるわよ!」
ご主人様はそう叫ぶと、キマイラに向けて駆け出しましたが、槍が届く距離に到達する前に、猛烈な火の息の洗礼を受けてしまいました。
「くっ……!なんて火力だっ」
ご主人様は盾に身を隠し、なんとか炎をやり過ごそうとしますが、受け止めきれずに漏れる強烈な熱気は周囲の大気を焦がさんばかり、少し離れた私の所まで届いてきて、服に燃え移った火を消すのに精一杯です。
「急げシャルロット!このままじゃ俺まで炙り肉だ!」
「今やってるわよ!」
その隙にキマイラの背後に回り込んだシャルロット様。剣を振り上げ、強烈な一撃を喰らわそうとしますが……
「キシャァァア!」
「何よこの蛇!まるで別の生き物のよう!」
尻尾の位置に生えた蛇が襲い掛かり、こちらもなかなか近づくことが出来ません。
「シャルロット!」
ご主人様の気が逸れたその瞬間、キマイラが火を吐くのをやめたかと思ったら今度は一気に飛び掛かってきました!ご主人様はボロボロの盾の代わりに咄嗟に抜いた剣で受けますが、その巨体全身を使った体当たりを流石に受け止められずに押し倒され、上にのしかかれ、執拗に首元を狙ってくるキマイラを何とか押し留めるのに精一杯です。
「ぐっ!くそっお!」
「ご主人様ぁぁあ!大丈夫ですか!」
キマイラの牙がご主人様の首に届きそうになり、もうダメだと思われましたが……
「"彼らを焼き払ってしまうように、天から火をよび求めようか"!!」
「グオッ!グオオオオ!」
強烈な火球が1つ、2つとキマイラの背後に命中。驚いたのかキマイラは跳びのき、距離を置いて唸り声を上げています。
「大丈夫!?」
「なんとかな……マントが半分焼けちまったし、盾も失ってしまったが」
「そんな事で泣き言言わないの!食われるよりはマシでしょ!」
「それにしてもなんて強さだ。前からは強烈な火の息で近寄れない、後ろにも隙が無い、自ら吐くからか、火も効果が薄い」
「私にいい考えがあるわ!」
想像以上に強力なキマイラ。果たして無事に退治できるのかは、今やシャルロット様の知恵とお力に掛かっています。
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