第48話「キマイラ」⑨
シャルロット様に危ない所を救われた私達。2人が目指すものは同じ怪物の首と言う事で、協力して進む事になりました。
「ところで肝心の怪物の正体なんだけど、あなたは何だと思う?」
「頭と上半身が獅子で下半身は山羊、そして蛇の尻尾。間違い無い、怪物はキマイラだ」
「炎の息で血を荒らし、出会う生き物全てを貪り食う……なるほど、相手に不足は無いわね」
「不足無いどころか十分すぎる。用心して掛からないと2人とも腹の中だぞ」
"天と地を繋ぐ門"が開かれてから、この世界には数多の怪物が現れましたが、その中でも大型で特に危険と言われるカテゴリー、それは空駆けるグリュプスに地走るキマイラのような合成獣と呼ばれる怪物共です。今回はそのキマイラが相手とは……今はただドラゴンが相手よりはマシだと思う他ありません。
そうして2人で馬を進めること暫くして、バグラス城の修道騎士1人と馬2匹が犠牲になったと言う襲撃現場へと到着しました。付近には腐敗した残骸、鎧の破片などが未だ転がり、凄惨な現場だったのが伺えます。
「当たり前だけど襲撃から時間が経ってるわね。これじゃあ足跡や血痕を辿ってキマイラを見つけるのも難しい感じね」
「なぁに、ここは荒野で獲物も少ない。となれば酒でも飲んで肉でも焼いてれば向こうが見つけてくれるさ」
「ご主人様、それはつまり私達自身がえっ餌となって誘き寄せるって事ですか?」
「随分自滅的な作戦ね。と言っても他に手段も無いし、待つしかないか」
「そう言う事だ。今日はここで野宿といこう」
「はっ、はーい……」
油断無く辺りの様子を伺うシャルロット様と、それとは対照的に、荷物袋を漁り出てきたワインボトルの栓を開けるご主人様。そろそろ日が落ちると言うのに、こんな事で大丈夫なのでしょうか……
そして日が落ち、夜も更けてきました。ご主人様はボトルを一本空け、2本目に取り掛かり、シャルロット様は相変わらず辺りを警戒してますが、未だキマイラは現れません。
「シャルロットも一杯やらないか。身体が温まるぞ」
「遠慮しとくわ。何よ、用心して掛からないといけないんじゃなかったの?」
「これも作戦の内さ。あまり気を張りすぎるとと疲れるぞ」
「あなたは気を抜き過ぎよ全く……剣は一流なのに、普段はダメダメなのね……」
ジュゥゥウ。丁度塩漬け肉が焼けたようですが、その時の音でシャルロット様のお言葉が遮られてしまいました。
「何か言ったか?シャルロットも食べるか?」
「何でも無いわよ!大体あんたわね!四年前に別れてから私はあんたに言われてひたすら……」
「シッ!静かにっ……!」
「何よ今更っモガガガ」
猛るシャルロット様の口を押さえ、目配せするご主人様。その先の闇の向こうには、1つ、2つ……いや4つの目が、爛々と光っているのが見えました。
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